市川哲史の「すべての音楽はリスナーのもの」第28回

SMAPが見せた<前人未到アイドル>の本領 市川哲史が『のど自慢』のパフォーマンスを分析

 地上最強のアイドルだったSMAPの行く末が気になっているのは、どうも私だけではないらしい。

 昨年に続き今年の『FNS27時間テレビ』でもめちゃイケ芸人たちと水泳大会でガチ勝負したSMAPの姿は、心ある者の涙を誘った。しかも局がフジ<焼け野原>テレビだったもんだからより相乗効果が増し、「SMAPはTVメディアと心中するのではないか?」と本気で噂されたわけだ。私も1年前、本コラムでこう書いた。

<TVにせよSMAPにせよ、なんだろうこの圧倒的な「どうも長い間本当にお疲れさまでした」感は。>

 1990年代、SMAP自体が当時最盛期を迎えていたTVと超ド級の共存共栄をした、<メディア・ブランド>そのものだったからだ。

 ブレイク前から積極的にTVのバラエティー番組に出演してコントにトークに高い順応力で対応したことで、彼らが示した<万能性>が平成アイドルの絶対条件となる。そしてその万能性とは、言い換えれば<キャパシティー>という名のフォルダーで、しかもその装丁そのものがコマーシャル・アートとして恰好よかったもんだから、SMAPは<お洒落なもの>として認知された。しかもそのモダンな感じとはあくまでもTV的なアプローチの賜物だけに、一般の人々にとてもわかりやすかったのである。

 それだけにTV文化の衰退と嵐への<最強アイドルの座>禅譲が重なったことで、両者はより運命共同体に映るし、事実再接近している感がある。

 そしてF2(35~49歳♀)とF3(50歳~♀)という現在のTVの主力視聴者層が、SMAPのファン層に完全一致してる点から、一連のTVベタ仕事がSMAPの延命策と見なされても仕方あるまい。今回の『のど自慢』も含めて。

 で延命策だとして、それの何が悪い?

 というか我々はこれから、未だかつて誰も見たことのない<現役スーパーアイドルの一生>を目撃てきる幸運を、感謝せねばならない。

 となると次は主戦場をTVのどこに定めるか――せっかく今回『のど自慢』を橋頭堡にしたのだから、まずはNHKだろう。厳然たる事実として人は等しく齢をとる。SMAPも我々も、だ。その先には未曾有の後期高齢者社会が待っている。

 やっぱM3(50歳~♂)も必要だ。今回の『のど自慢』本番中、出場者のスーパーリズムレス爺さんが香取慎吾ではなく香取慎吾が持つマイク本体にだけ反応していたことからも、M3層の開拓が急がれる。

 こうなったら『のど自慢』のみならず、司会が山川豊(!)の『新・BS日本のうた』の常連を狙うとか、地味に『ためしてガッテン』のレギュラー回答者に進出してはどうだろう。円熟演歌歌手勢に混じり若い身空で早くも出演してるMay J.を見習い、『NHK歌謡コンサート』で最低月イチペースで汗を流すのもいい。ちなみにこの番組、日本全国で視聴できる唯一の演歌・歌謡番組だから、絶対に外せまい。

 アイドル界の定石をすべて覆してきたイノベイター・SMAPだから、今後は超オーソドックスな活動に徹するのが最も革新的なのだ。もうがんがんどんどん、嫌になるぐらい普通のことに邁進してほしい。目指せオーディナリー。

 それでこそ<前人未到アイドル>SMAPの本領発揮、である。

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