小野島大の新譜キュレーション 第2回
フェス・シーズンの最中にリリースされた必聴盤は? 小野島大が6作品をピックアップ
DVDもご紹介しておきましょう。テクノの哲学者、ターンテーブルのジミ・ヘンドリックスと異名をとるジェフ・ミルズの『EXHIBITIONIST 2』(AXIS / U/M/M/A 9/9発売)です。2004年に出た同名DVDの続編ですが、前回同様、シンプルな白背景の部屋で、CDJ3台、ベスタックスのミキサー、ローランドTR909のみを使って淡々と、しかし目まぐるしい速度でDJミックスしていく様子をマルチ・アングルで捉えた映像が収められています。今回は同じセットでドラマーのスキート・ヴァルデスと即興セッションした映像や、ダンサーのピエール・ロケットとコラボレイトした映像、さらにはジェフがTR909だけを使って生演奏する映像も。
そして目玉と言えるのは、ジェフがシーケンサー、シンセサイザー、ミキサー、リズム・マシーンを使って楽曲を作り上げていく過程を淡々と追ったドキュメンタリーで、ジェフ自身のオーディオ・コメンタリー入り。これがめちゃくちゃ興味深い。神技のような速さであっという間に曲を仕上げていく様子には驚かされます。一切コンピューターを使わず、旧型のシーケンサーにケーブルを抜き差ししながらトラックを仕上げていく彼のテクノが、実はすごく人間的な手作り感覚溢れるものであることを実感できる貴重なドキュメンタリーだと思いました。なお映像で演奏されたトラックや作られた楽曲を収録したCDも同梱されており、彼の最新トラック集としても聴くことができます。
最後はガツンとくるロックを。今年のフジロックで非常に荒削りながら生々しく若々しいガレージ・ロックを披露して将来の大物ぶりを見せつけたザ・ボヒカズです。イースト・ロンドン出身の白黒混成4人組。これを見たおかげで私は裏でやっていた(一部ではフジの裏ベストだったと評判の)トッド・ラングレンを見逃したわけですが、もちろんこちらを選んで大正解だったと思っています。ファースト・アルバム『ザ・メイキング・オブ・ザ・ボヒカズ』は、ライヴよりもポップな楽曲の良さが際立つ仕上がりで、クリアで曖昧さのない録音ともども、2015年の最新型ロックンロールとして過不足ない出来です。
■小野島大
音楽評論家。 時々DJ。『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』などに執筆。著編書に『ロックがわかる超名盤100』(音楽之友社)、『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)、『フィッシュマンズ全書』(小学館)『音楽配信はどこに向かう?』(インプレス)など。facebook/Twitter