amazarashiのサウンド変遷ーー北欧バンドのスケールと邦ロックのエッジをどう兼ね備えたか

 一方、“スピードと摩擦”はミニマルなベースの反復フレーズと簡素な打ち込みのリズムがこれまでにない新鮮味を感じさせる一曲。そのクラウトロック的とも言える展開の中、少しずつ音が加わって行くことによって、文字通り徐々にスピードが加速していくような印象を受ける。とはいえ、やはりサビになるとリリカルなピアノとストリングスが入ってきて、一気に風景が開けるのが実にamazarashiらしく、Aメロの緊張感との対比によって、そのドラマ性はより高まって聴こえる。また、サビにはさらりとアコギがレイヤーされているあたり、「スターライト」からの反響とも言えるかもしれない。

 かつて僕が何度か秋田にメールインタビューをさせてもらった中で、彼が好きなバンドとして挙げていた、エフタークラングというデンマークのバンドがいる。エレクトロニカ的な音楽性からスタートし、後に管弦楽器を導入して、アーケイド・ファイアにも通じるスペクタクルなサウンドスケープを描いたバンドだが、その感触には確かにamazarashiとも通じる部分がある。北欧のデンマークと、秋田の住む青森の空気感に、共通する部分もあるのだろう。エフタークラングは惜しくも2014年に解散してしまっているのだが、デンマークで行われたラストライブがYouTubeにアップされているので、ぜひその神秘的なムードを体感してもらいたい。

 とはいえ、秋田自身が「自分は邦ロックのフォロワーでもある」とかつて語っているように、“スピードと摩擦”にしても、“季節は次々死んでいく”にしても、間違いなく邦楽的なギターロックの範疇に入る楽曲である。決して洋楽的なサウンドに寄り過ぎないことが、amazarashiが日本のロックシーンで確かに支持されていることの大きな理由になっているのだ。そして、こうした楽曲自体の力があるからこそ、メディアアートとしてのamazarashiが成立するということは、もはや言うまでもないだろう。

(文=金子厚武)

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