LITTLE、細川貴英 特別対談

LITTLE+細川貴英が語り合う、韻の面白さと使い方「韻はフェティシズムの世界 それをいかにポップスにしていくか」

 

「さりげなくて、聴くほどに発見がある」(細川)

細川:韻はさりげなく踏むのがかっこいいというのは、この本でも書いていました。でも、せっかくなので、実際にこの『アカリタイトル2』での韻のすごさを読み解いてみたいと思います。

LITTLE:まあまあ恥ずかしい(笑)。

細川:そうですよね(笑)。なので、僕が解説したいと思います。僕の場合、LITTLEさんのアルバムは大体、一曲目が一番好きになるんですよ。今回の「バルバロイ」もそんな感じで、すごくキャッチーでした。KICK THE CAN CREWでもLITTLEさんから始まる曲が多かったと思いますが、このキャッチーさが一番バッターに向いているのかなって。

LITTLE:KICKの時は、たしかにそうでしたね。KICKは曲によってはあみだくじで順番を決めることもあったのですが、勝負曲のときは事務所の方に「ここはLITTLEで!」って言われたりしました。キャッチーな入りについては、意識するひととしないひとが本当に分かれるのですが、俺は少なくとも1番をもらったら、1番っぽい歌詞を書くって決めています。

細川:「バルバロイ」だと冒頭、「ランドセル」「キラキラしてる」と聴いたときに、「あれ、韻踏んでない?もしかしてLITTLEさんもう韻やめちゃった?」と不安になるのですが、それが次の「ちゃんと寝る」「抱きだしている」と、「あんおえう」「いあいあいえう」でそれぞれ踏んでいて、「あ、よかった」安心させられます(笑)。その「抱き出している」から、次の文頭の「身だしなみメイク」に繋いで、そこから「髪型チェック」に変わり、「何かが変、飽きただけ」と続いていく。とてもLITTLEさんらしい展開で、たまらないです。

LITTLE:はは、ありがとう。

細川:Unaさんとコラボしている「Beach Sun Girl」も、隠された韻が満載ですね。

LITTLE:「Beach Sun Girl」は夏らしいポップスを作ろうとした曲で、それこそ、いかに韻を踏んでいないように聴かせるかに注力した曲ですね。

細川:歌詞カードだけを読むと、韻を踏んでいるとは気付かない人の方が多いと思います。でも実は、めちゃくちゃ韻を踏んでいて。たとえば「キミ紫外線 気にしないで」は「いいいあえ」で全部踏んでいるし、「冷まさないで Summer Sunshine Day」も「ああああいえ」で、これも全部踏んでいます。そこから「Everynight&Day」と「many 大歓迎」、「海岸線、一夏の恋」と「大胆で人懐こい」、「ビーチサンダルTシャツのガール」と「気になっちゃういいヤツのはず」と続いて、さらに「目ぇ眩む 太陽が眩しい」と「手ぇ繋ぐ 最高なラブシーン」、「なみだの桟橋」と「渚のファンタジー」という感じで、最初から最後まで踏みまくりです。韻に関与していない文字がほとんどありません。さらに、韻の踏み始めは子音まで一致させて、「ここから韻が始まりますよ」というのをわかりやすく示してくれています。「冷まさないで」と「Summer Sunshine Day」だと、「さま」が一緒だったり。サビの「素直でいられる」「砂を蹴り上げる」も、字面を見るとそうは見えないですが、「うあおえいあえう」で全部母音が一緒で、出だしの「すなお」は子音まで合っています。

LITTLE:誰にも気付かれずにこのまま死んでいくと思っていたから、良かった(笑)。韻を踏むのはやっぱり印象が強いから、ストーリーのニュアンスが届かなくなる面もあると思っていて。だから気付かれないように韻を踏むんだけど、それがポップスの中でラップをやっていくことの面白さであり、難しさでもあると感じていたんですよ。でも、気付いてくれるひとがいるのは嬉しいですね、やっぱり。

細川:LITTLEさんの韻は、そこがすごくかっこいいですよね。さりげなくて、聴くほどに発見があるというか。でも僕は、もっとみんなにLITTLEさんが踏む韻のレベルの高さに気付いてほしいんです。

LITTLE:(笑)まあ、1回目はスムーズに聴いてもらって、「夏っぽいね」とか「いい曲だね」って感じてもらって、何度か聴いたところで「ガッチガチに踏んでいる!」って気付いてもらうのが一番うれしいかも。韻はフェティシズムの世界のもので、ポップスとは一番縁遠いものなんだと思うんだけど、それをいかにポップスにしていくかっていうのをひとつのテーマにしているので。いまはCDより音楽配信がメインになりつつあるけれど、歌詞カード読みながら「あぁ、ここはこういう風に踏んでいるのか」って読み解くのは、なかなか楽しい文化だと思うんですよね。欲を言えば、音の韻だけじゃなくて、ダブルミーニングやトリプルミーニングの言葉も入れているので、その謎解きの面白さも味わってほしいと思っています。

細川:そう考えると、韻っていうのはパッケージされた音楽作品の価値を、改めて気付かせてくれるものでもありますよね。アルバム全体を通すと、今作はLITTLEさんのパーソナルな一面が覗けるような作品で、固く韻を踏みながらも、リラックスして楽しめる感じも印象的でした。

LITTLE:前回の『アカリタイトル』は久しぶりに出した作品だったから、「いまの俺の実力を見せよう」という気になって、ラップ色が濃いものになったけれど、今作はわりと短いスパンで出したから、ちょっと緩やかなものにしようと思ったんですよ。「ついに俺もベテランっぽい、リラックスしたアルバムを作れるタイミングが来た」と思って、独り言みたいな、普段着の作品を意識しました。なので、聴くひとにものんびり楽しんでもらって、気になるひとには歌詞カードを読んでもらうという。そこでいろいろ発見して面白いと思ってもらえたら、もう最高ですね。

(取材・文=松田広宣/撮影=下屋敷和文)

■リリース情報
『アカリタイトル2』
発売:2015年8月12日
価格:¥2,759(税抜)
《収録曲》
01. バルバロイ
02. Bad Boy 武士
03. Beach Sun Girl feat. Una
04. 七月の海月
05. tenohira
06. Check It 拉麺
07. アイデアル
08. おはよう~おやすみ feat. SONOMI
09. Generation R feat. SIMON JAP, MISTA O.K.I
10. ドラマツルギー

https://twitter.com/akalittle_

http://www.tkma.co.jp/jpop_top/little.html

■『声に出して踏みたい韻 ヒット曲に隠された知られざる魅力』
価格:¥1,620(税込)
著者: 細川貴英
出版社: オーム社
発売: 2015年6月2日

https://twitter.com/takahide_h

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