高橋美穂の「ライブシーン狙い撃ち」 第3回
WANIMAの登場でパンクシーンは新たな次元へ タブーなき創作スタンスを読み解く
その一つが“エロ”だ。……え、固く論じ出したように見えて、そこですか?と思わないで欲しい。最初、『Can Not Behaved!!』を聴いた時、ちょっと戸惑った。オブラートに包まないエロい歌詞が並んでいたからだ。これ、女の私が、どう解釈してレビューを書こうかな、と。そして『Think That…』にも、「いいから」という、直接的にベッドの上での駆け引きを描いた曲がある。ここで、やっとハッとした。戸惑っていたのは、私が女だからっていうだけではなく、他にこういう歌詞を書いているバンドが少ないからだ、と。常々私は、ロックバンドには色気が必要だと思っている。でも、キッズに向けたメロディックパンクには必要ないのかな、と勝手に決め付けていたようだ。メロディックパンクだって、エロさがあった方が、俄然ドキドキするじゃないか!と彼らに気付かされた。 また、実際の彼らは少年のようなピュアな笑顔を見せてくれる人たちだけに、そのギャップも面白い。ニコニコとタブーに向かって突き進んでいくWANIMA、やっぱり恐るべし。
また、その一方で、故郷や家族に向けた愛を感情たっぷりに奏でるところも、彼ららしさなのだ。『Think That…』の中で言えば、「TRACE」がそうだろう。彼らが抱えてきた、“明るいメロディックパンク”には収まらない哀切の想いが、ジャンルや世代を越えて愛されそうな名曲に昇華されている。一見、エロとは対極にありそうな想いだ。実際、曲調は対極にある。しかし、共通しているのは、どちらにも照れがない、ということ。エロイことなんて大っぴらに出来ない、故郷なんて関係ない、というカッコ付けた感じが、彼らには一切ないのだ。ライブでも、斜に構えずに、とにかく笑顔でキッズに寄り添う。だからこそ、ニューカマーにも関わらず、盛大なシンガロングが巻き起こるのだと思う。
最も人間臭いところを、ドバーッと出してやろう!というくらいの気概で突っ走るWANIMA。しょっぱなから裸で手を差し出されたら、こちらも脱がざるを得ないだろう。これから、もっともっと多くの人の心を真っ裸にしていくに違いない。
■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。