Drop’s・中野ミホ、GLIM SPANKY・松尾レミ 特別対談

Drop’s・中野ミホ、GLIM SPANKY・松尾レミが語る理想の音楽「言葉とメロディがいっしょになったときに、すごい力を持つ」

 

「『これがカッコいい』と納得できることを表現している」(中野)

ーー中野さんはアルバムのインタビューで「ギターの音色は古くなりすぎないほうがいい」と言ってましたよね。

中野:そうですね。古い音楽が好きなんですけど、いまは2015年だから、その空気はやっぱり入れたいというか。意識して古い音にしようと思わなくてもいいんじゃないかなって。

松尾:まったく同じですね、私たちも。いまGLIM SPANKYが使ってる機材は、全部2015年版なんです。ギブソンからギターをお借りしているんですけど、「59年のビンテージモデルとオートチューナーが付いた最新モデル、どっちがいいですか」みたいな話があって。実際に弾いてみたら、私もギターの亀本(寛貴)も「最新モデルがいい」って思ったんですよね。

中野:へー!

松尾:ビンテージのギターはすごく渋い音がして、たとえばジミヘン・コードを弾くとシックリくるんですよね。だからこそつまらないというか、どっかで聴いたことあるっていう感じがしたんですよ。だったら、古い音楽を聴いてたほうがいいなって。2015年モデルは良い意味でクリアだし、音の立ち上がりも早いんですよ。そっちのギターを弾いたほうが、いまやっている音楽に合うんじゃないかって気がして。もちろん曲によってはビンテージを使ったほうがいいと思いますけど、とにかく懐古趣味だと思われるのがすごくイヤで。

中野:うん、すごくわかります。

松尾:ね!「60年代、70年代の音楽に憧れていて、そういう音を出したい」ということではないし、現代の音楽も大好きなので。好きなものを並べてみたら、たまたまその時代の音楽が多かったというだけで。

中野:私もホントにそんな感じです。「渋いね」って言われることも多いけど、私もメンバーも含めて、古い音楽を勉強するように聴いている人は誰もいなくて。全員で音楽をやっていくなかで「これがカッコいい」と納得できることを表現しているだけですね。「昔っぽい音楽を作ろう」と思ったことはないです。

松尾:うん、そこは完全に共通してますね。

 

「心を揺さぶられる言葉って、保育園児でもおじいちゃんでも、年代に関係なく伝わっていくはず」(松尾)

ーーおふたりはバンドのソングライターでもあるわけですが、メジャーデビュー以降、楽曲を作るうえで変化してきた部分はありますか?

松尾:いままでよりも届く歌詞を意識するようになりましたね。自分たちの曲が街の中で聴こえてきたり、テレビから流れてくる機会が増えてきて。たとえばケータイをいじりながらテレビを見ている人にもスッと入っていくくらい、届きやすい歌詞を書くべきだ!と思って。そういう部分の意識はかなり変わりましたね。ドラマの主題歌もそうですけど、音楽ファン以外の人にも聴いてもらえるわけじゃないですか。自分たちの芯を崩さず、どれだけ柔軟に対応できるかっていうのも大事だなって。

中野:私もわかりやすさは大事だと思います。特にサビの頭は、伝わりやすい言葉を選ぶようにしているし。ただ、個人的なこと、自分のことを歌うことも大事だと思うんですよね。

ーー出発点はあくまでも自分自身の感情であるべきだ、と。

中野:そうですね。自分が思っていないことは歌えないので。あとは自分の感覚というか、「景色や匂いみたいなものをどれだけ言葉にできるか」ということを意識してますね。

松尾:やっぱり言葉は大事ですよね。もちろん曲のなかにあるものはすべて大事なんだけど、たとえばギターの音色にどれだけこだわったとしても、お茶の間レベルで気づいてくれる人って、あまりいないと思うんですよ。でも、心を揺さぶられる言葉って、保育園児でもおじいちゃんでも、年代に関係なく伝わっていくはずなので。サウンドにこだわることも思う存分やって、そのうえで幅広いフィールドに届く歌詞を書かないとなって。

中野:メロディもそうですよね。言葉とメロディがいっしょになったときに、すごい力を持つと思うので。

松尾:曲と歌詞は一心同体ですからね。そこは私もすごくこだわってます。もちろん、歌も大事ですよね。

 

「シンプルな言葉が伝わる歌って、時間が経っても聴ける」(中野)

ーー確かに。ちなみにおふたりにとってのシンガーの理想像って?

松尾:そうですね…。私としては歌い上げるよりも、しっかり歌詞が届く、言葉が届くことが大事だと思っていて。タイプでいうと、ジャニス・ジョプリンよりもパティ・スミスというか。精神の置場としてはそっち寄りなんですよ。

——パティ・スミスは詩人としても評価されているし、ポエトリーリーディングも素晴らしいですからね。

松尾:はい。息遣いひとつで変わってくるポイントもあると思うし。伝わる音楽をやりたいなって。

中野:私はキャロル・キングが好きなんです。

松尾:あーいいですね!

中野:ロックスターというよりも、ナチュラルな雰囲気に惹かれるというか。気取ったり、カッコつけたいというところもあるんだけど、やっぱり私も言葉がしっかり届くような歌い方をしたいので。シンプルな言葉が伝わる歌って、時間が経っても聴けると思うんですよ。そういう普遍性を持った歌い手になりたいって思いますね。

 

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