『フジロック2015』後半2日間をレポート 邦アクト増加でどう変化したか?

 

 日本最大級の野外ロックフェス『FUJI ROCK FESTIVAL’15』が、7月24日、25日、26日に新潟・苗場スキー場で開催された。今年はオレンジコートの撤廃や邦楽アクトの増加といった変化があり、比較的実験要素が強かった3日間だったように思う。

 今回は25日・26日に行われた公演の中で、GREEN STAGE・RED MARQUEE、WHITE STAGE で個人的に印象的だったアーティストのステージをレポートしたい。

7月25日

上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス

 上原ひろみとベーシストのアンソニー・ジャクソン、ドラマーのサイモン・フィリップスによるトリオが25日昼のGREEN STAGEに登場。冒頭から上原はスピーディーに鍵盤を弾き、2人が細やかなリズムアプローチでこれを追随する。次々と繰り広げられるインプロビゼーション的な演奏で、ジャズという枠組みにとらわれることのない刺激的なサウンドを生み出し、通り過ぎようとする観客たちの足を止めていた。

ゲスの極み乙女。

 登場前からRED MARQUEEを満員にしていたのは、ここ一年で大ブレイクを果たした若手バンド・ゲスの極み乙女。。「パラレルスペック」や「ロマンスがありあまる」「キラーボール」など、次々にポップな人気曲を披露しつつ、「市民野郎」や「ルミリー」といったエッジの効いた楽曲も披露。しかし、何より観客の目を引いたのは、4人の熟達した演奏スキル。プログレッシブな楽曲を巧みに鳴らすその姿を一目見ようと、登場後もRED MARQUEEには次々と観客が押し寄せていた。

星野源

 

 GREEN STAGEに登場した星野源は、冒頭に「化物」を演奏し、「フジロックには、SAKEROCKを含めると10年以上お世話になっていて。最初は苗場食堂のルーキー・ア・ゴーゴーでした」と同フェスとの深い関係性を語ると、観客を煽り「夢の外へ」と「SUN」の2曲を披露。会場の空気を一気に明るくすると、星野は「しっとりした曲をするので、カップルのみなさんはぜひここでSEXを始めてください。それで子どもができたら、源って名前を付けてね」とおどけてみせ、「くだらないの中に」や「くせのうた」といったスローテンポな楽曲など数曲を披露し、ステージを一度後にした。その後、布施 明に扮した“ニセ明”として登場した星野は「君は薔薇より美しい」を歌い踊ると、伊藤大地(ドラム)とコントのようなやり取りをみせ、最後は「Crazy Crazy」でなぜか観客にヘッドバンキングを要求するなど、奇想天外なステージングでGREEN STAGEを彩った。

岡村靖幸

 星野源がステージを去った直後、RED MARQUEEに登場したのは岡村靖幸。普段のライブと同じ様に黒いスーツ姿で現れた岡村は、「フジロックベイベー!」と観客を煽り「新時代思想」からライブがスタート。ハードなリミックスが施された「どぉなっちゃってんだよ」ではバックダンサーが激しく踊り、「カルアミルク」や「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」「だいすき」では観客が合唱するなど、“いつもの岡村靖幸”をスマートに披露し、ステージを後にした。

クラムボン

 夜も深まる20時ごろ、WHITE STAGEに現れたクラムボンは、演奏前に突然、休日課長(ゲスの極み乙女。)をサポートベースとして呼び込み「Re-ある鼓動」からスタート。3曲目の直前には、ミトが「ここではもうやらないであろう曲をやりたい。みなさん『キラッ☆』ってしてくれますか?」と問いかけ、大半の観客が茫然とするなか、『マクロスF』のオープニングナンバーであり、彼らが松本隆トリビュートアルバム『風街であひませう』でカバーしている「星間飛行」を披露。その後は「バイタルサイン」「KANADE dance」「波よせて」と、定番曲を鬼気迫る演奏で繰り広げた。原田郁子が「思いがけないことっていっぱい起きるし、どうしていいか分からないこともあるけれど、『でも続けなきゃいけない』というための歌を作りました」と話したあとに披露された「yet」は、思わず固唾を飲んで見守るほどの気迫が感じられた。

ハッピー・マンデーズ

 この日のRED MARQUEEを締めくくったのは、“マッドチェスター”の代表格的バンド・ハッピー・マンデーズ。当時のムーブメントを直に体験したような世代の観客が目立つなか、「Kinky Afro」や「24 Hour Party People」「Hallelujah」といった定番曲を次々と演奏。ベズが楽曲に合わせてステージ前方で踊るのに釣られ、続々と踊り出す人々の姿を見たバンドは、嬉々としながらそのグルーヴを増し、同ステージの特性を最大限に活かしたドープなサウンドで会場を盛り上げた。

ベル・アンド・セバスチャン

 

 WHITE STAGEのトリは、2010年に同じ時間帯にフジロックで演奏を繰り広げたベル・アンド・セバスチャン。最新作『Girls In Peacetime Want To Dance』は従来のベルセバとは一味違うダンスアルバムだったため、この日のセットリストも「Nobody’s Empire」や「The Party Line」といった観客を踊らせるための楽曲が多かった。また、ボーカルのスチュアート・マードックはたびたび観客席に降り立ち、オーディエンスから帽子を借りて被ってみたりしたほか、「The Boy with the Arab Strap」ではなんと、約40人ほどをステージへと上げてしまった。観客たちは思い思いにメンバーと踊ったり、写真を撮るなどしてライブを楽しんでいた。と、ここまでパーティー的なライブを行っていたベルセバだったが、最後は観客をステージから降ろして「Judy And The Dream Of Horses」を披露。アンコールでも「Get Me Away From Here, I’m Dying」と「The Blues Are Still Blue」をクールに演奏し、WHITE STAGEでのライブを締めくくった。

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