ドリカム、ベスト盤大ヒットの理由とは? “最後の大物”のストイックな創作姿勢に迫る

 ドリカムはその2年後の2011年にも『THE SOUL FOR THE PEOPLE 〜東日本大震災支援ベストアルバム〜』というベストアルバムをリリースしているが、これは選曲もかなり変則的なもので、タイトルの通り、東日本大震災被災地復興支援のために印税を全額寄付するためという目的も含めた、ある種のコンセプトアルバムと位置付けるべきだろう。

 つまり、今回の『私のドリカム』は、単体としては『DREAMS COME TRUE GREATEST HITS "THE SOUL"』以来の、実に15年ぶりの全キャリアを網羅した正真正銘のベストアルバムということになるのだ。15年といえば、当時の女子大生のドリカムファンも今やアルバム購買層の中心となるアラフォー。引っ越しやら結婚やらで過去のCDが散逸してしまっていることも十分考えられるし、言うまでもなくそこには15年分の新たなヒット曲も収録されている。よく考えると、その商品力の高さにもうなづける作品なのだ。しかも、以前はベストアルバムのリリースに積極的ではなく、したがってプロモーションにもそこまで力を入れてこなかったドリカムも、今回のリリースに合わせては、オリジナルアルバムのリリース時以上のメディア大量露出を仕掛けてきた。思えば、今回のベストアルバムへの流れは、デビュー25周年であった昨年の精力的な活動(オリジナルアルバム『ATTACK25』のリリース、新しい世代のミュージシャンを巻き込んでの2枚のトリビュートアルバムのリリース、各方面における中村正人のメディア活動)から連続していて、周到に準備されていたものと言える。そして、その先には今年11月から12月にかけて5大ドーム全9公演というすさまじい規模で開催される4年に1度の「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2015」というゴールも設定されている。ベストアルバムに対して長年ストイックな姿勢を貫いてきたドリカムは、結果的に今回の「満を持しまくった」ベストアルバムのメガヒットによって、音楽シーンにおけるその存在の大きさを改めて証明してみせたのだ。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「ワールドサッカーダイジェスト」ほかで批評/コラム/対談を連載中。今冬、新潮新書より初の単著を上梓予定。Twitter

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