矢野利裕のジャニーズ批評

A.B.C-Zは少年隊の正統後継者となるか? ディスコティックな2ndアルバムの狙いを読む

 興味深いのは、このようなディスコ・ミュージックのアップデートが、昨今のジャスティン・ティンバーレイク、ロビン・シック、ファレル・ウィリアムス、ブルーノ・マーズ、メイヤー・ホーソーンなどといった、イキのいい男性R&Bのシーンと足並みを揃えているように見える、ということである。本作はそのような、世界的なディスコ再評価という大きな動きのなかでも捉える必要があるかもしれない。もちろん、ファレルっぽい曲は例えば嵐などにもあったが、本作には、単に流行の意匠を取り入れる以上に、本気でブラック・ミュージックを自分たち流に再解釈しようという姿勢がある印象を受ける。だとすれば、「どこまでHappy!」がモータウン風であることは、ブラック・ミュージックを本格的にコンセプトの一部に取り入れるということなのか。もしそうなら、シュプリームスの曲名を拝借した「In The Name Of Love~誓い」という曲がかなり意味深いものにも思えるが、これは考え過ぎだろう(この曲は、全然モータウンではないが)。

 いずれにせよ、少年隊のフォロワー的存在が、ディスコ・アップデートという世界的な流れのなかで、本作のようなディスコティックなアルバムを出したことは、特筆すべきことである。作品というのは、さまざまな文脈の重なりのなかで生まれるものなのだ。

■矢野利裕(やの・としひろ)
批評、ライター、DJ、イラスト。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。

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