Galileo Galileiの音楽はなぜアニメと相性が良い? 『台風のノルダ』主題歌で見せた新境地を分析

 まず、彼らが初めてアニメ主題歌を務めたのは、『おおきく振りかぶって 〜夏の大会編〜』(MBS)のオープニングテーマであり、初期Galileo Galileiの代表曲といっても過言ではない「夏空」だ。2008年にオーディションイベント『閃光ライオット』の第一回に出場し、見事グランプリを獲得した彼らが、新進気鋭のギターロックバンドとして名刺代わりにリリースした同曲は、バンドの瑞々しい演奏と、尾崎雄貴の声が持つ少年性、アニメが描き出すひと夏の野球ドラマが見事にマッチした名曲だ。

 そして彼らとアニメの歴史を紐解くうえで欠かせないのが、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の主題歌に起用された「青い栞」(アニメオープニングテーマ)と「サークルゲーム」(劇場版主題歌)だ。同アニメは深夜帯での放送にも関わらず高視聴率を記録し、作品の舞台となった埼玉県秩父市を聖地巡礼するファンも続出。また、テレビ番組にもこぞって取り上げられるなど、社会現象に近い盛り上がりが巻き起こっていたことも記憶に新しい。同作のファンが「アニメのイメージを増幅させている」と口々に述べる「青い栞」は、バンドが拠点を北海道に戻し、ベッドルームレコーディングによって制作され、現在の若手バンドに大きく影響を与えている名盤『PORTAL』の顔とも言える曲。この作品で、彼らが前作までギターロックとしてアウトプットしていた瑞々しさは、当時のNMEチャートと並列に聴いても遜色ない、打ち込みの無機質さとバンドサウンドの温もりが同居したグローバルなグッドメロディに昇華されていた。

 再び3人体制に戻り、ニューヨークを拠点に活動するバンドPOP ETCのクリストファー・チュウがプロデュースを務めた「サークルゲーム」では、尾崎雄貴の持つ憂いと温かさが混じったボーカルを前面に出した、ポップとロックを行き来するサウンドを展開。この2曲で、アニメの描きだす非日常の温かさと、ふと現実に引き戻されたときの残酷さを表現してみせた。なお、『あの花』の映像作品は3万1000枚という驚異的な初動売り上げを叩き出し、平成23年度『文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品アニメーション部門/長編』に選出されるなど、社会現象的なヒットを記録し、バンドとアニメ、双方のファンが互いを高く評価していることからも、その相性の良さが伺える。

 バンドが3人組としてダイナミックな表現を手にした2014年が過ぎ、2015年最初のシングルとなったのは、『まじっく快斗1412』のエンディングテーマとなった「恋の寿命」だ。同曲はバンドが温め続けていた恋愛ソングで、<ああもういいや なんだったっけ 話してたら朝になって そんな風に 僕らはじゃれていたいだろ>と、靄が掛かった音像の向こうで歌われる半速球の恋愛観が、ミステリアスなアニメの主人公・快斗の魅力をさらに引き出している。

 そして今回『台風のノルダ』にバンドが書き下ろした曲「嵐のあとで」は、彼らの表題曲としては異例のバラードナンバー。アークティック・モンキーズ、The 1975等のプロデュースで世界的に知られるマイク・クロッシーは、尾崎雄貴の歌声とその音楽性の水準の高さを感じたと絶賛し、今回のオファーを快諾。ミックスを手掛けた同曲は、野外フェスの一番大きなステージが似合いそうな、広がりのある音像と繊細なドラムサウンドが特徴だ。また、この曲では、先の変化を経たことでボーカリストとして大人っぽさと少年性の両方を手に入れた尾崎雄貴が、表立った爽やかさとそこに隠された憂いを同時に表現しており、成長した姿を見せてくれている。

 若手ながら、すでに大物の風格さえ漂い始めている同バンドの新曲。映画のヒットとともにより多くの人へと届けられ、観客は改めてGalileo Galileiとアニメ映画の相性の良さを体感することになるはずだ。

(文=中村拓海)

■リリース情報
『嵐のあとで』
発売:2015年6月10日
【期間生産限定盤(CD+DVD)】
[CD]
1.嵐のあとで
2.信じて
3.壊れそうになる
[DVD]
1.嵐のあとで [Music Video -台風のノルダVer.-]
¥1,481(税抜)

【通常盤(CD)】
[CD]
1.嵐のあとで
2.信じて
3.壊れそうになる
¥1,204(税抜)

http://galileogalilei.jp/

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