3rd EP『未来』インタビュー

Drop's・中野ミホ、敬愛する4人のボーカリストを語る「キャロル・キングの持つ包容力が出せたら」

 

 札幌発・女子5人組ロックンロールバンドのDrop'sが、4月22日に3nd EP『未来』をリリースした。今作は、ふとした瞬間に未来を思う切なさを歌ったミディアム調のロックンロール曲「未来」の他、全4曲を収録。4曲目にはキャロル・キングの「You’ve Got A Friend」のカバーが収録されている。今回のインタビューでは、中野ミホ(Vo&Gt)のボーカル観を探るべく、キャロル・キングを含めた4人のボーカリストを挙げてもらった。そこから見えた中野ミホが考える歌詞と歌の関係とは?

「未来に『ここから』という区切りはなくて、ちょっとずつ毎日変わっていくもの」

——4月22日にリリースとなる3rd EP『未来』の表題曲「未来」は、「春」の情景を通して未来というテーマを歌った楽曲ですね。このテーマは以前から温めていたものなのでしょうか。

中野ミホ(以下、中野):以前から未来というテーマで曲を作りたいと思っていました。でも、10年後とかの未来ではなく、いつかはわからないけど漠然とした未来という。そういう未来をふとした瞬間に思うということを書きたいなと思っていました。

——たしかに今回の曲は「瞬間」を歌った印象がありました。未来というと、キラキラしたイメージを伴うことが一般的ですが、中野さんが描く未来は、切なさも強く感じられますよね。

中野:未来といっても未来に「ここから」という区切りはなくて、ちょっとずつ毎日変わっていくものだと思っています。自分も相手も、人の気持ちはちょっとずつ変わっていくし、必然でもあるけど、それが切ないなと思ったりもして。

——たとえば、高校生くらいに感じていた未来の感覚と今とでは、感じ方に変化はありますか?

中野:学生のときは、毎日学校に行くのが当たり前で、先のこともあまり考えてなかった。でも学校を卒業してからは、自分で何でもやっていかないと前に進まなくなったので、そういう意味では「これからどうなるのかな」って自分を俯瞰で見るときはありますね。

——歌詞では「ふたりしか知らない歌」というフレーズが印象的でした。

中野:最初は雲にのっている場面がありました。ふわふわと何もいらない、楽しい時間があって、それが理想とか夢だとしたら、現実は踏切が開かない。その向こう側の理想と現実の間でずっと待っているとか、そういう淡い色のなかでのイメージはありましたね。理想と現実の間にあることがリアルだと思うので、この場面も書きました。相手が恋人とじゃなくても、誰にも思い出の歌とかあるでしょう? そのふわふわした感じがリアルだと思うんですよね。

——楽曲としては、三拍子のリズムを採用したり、いろいろな音楽的なチャレンジの多い楽曲でもあります。

中野:コードは私が結構前から作っていました。バンドで合わせた時、はじめは四拍子でやってたんですけど、「なんか違うな」ってことで、三拍子になっていきました。その時ももっと突っ込むような速い三拍子だったんですけど、それも違うなって、最終的にはゆれるような三拍子になっていきました。歌詞をもうちょっとキリキリした切迫感があるものにしようと思っていたんですけど、三拍子にして淡い切ないものが見えてきたので、そっちがいいかなと思ったんですよね。

——「切なさ」というのは、中野さんの声が生み出している面も大きいですよね。どんな気持ちで歌いましたか。

中野:「未来」には言葉を詰めているし、三拍子のリズム、そして歌自体がけっこう難しく感じたので、なるべくスッと歌いましたね。あんまりガチガチに感情を込めて歌うよりは、そっちのほうがいいかなと思って。歌っている側が気持ち良くても、CDになってリスナーが聞いたときに、さらっと歌ったほうが心に入ってくることが私はあるので、今回は抑制したほうがいいかなと思ったんですよね。

Drop's 「未来」MV

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