GOMESS、初ワンマンで見せた息苦しいほどの感情表現 3時間半の公演を振り返る

 

 面白かったのは、ラップと同じように、MCやミュージシャンの紹介といったトークが展開され、常にGOMESSが何かを話し続けていたこと。そのため、曲とトークの境界が曖昧となり、最初から最後まで全部がつながった演劇を見ているかのように感じた。

 もちろんそこで表現されているのはGOMESSという存在そのものだ。

サクライケンタ(左)とParanel(右)。

 あのライブで感じた居心地がめちゃくちゃ悪くて息苦しいのに、絶対に目をそらすことができない感覚は、昔、好きだった女の子に電話で一晩中、自分の生い立ちから親との不仲や昔の恋愛話といったことを延々と喋って聞かされた時とよく似ている。

 お前はどこまで俺と付き合える? それとも見世物として消費する? と突きつけられているように感じた。

 やがて、ライブはクライマックスに向かい、代表曲「人間失格」でヒートアップ。そして、Paranelとサクライケンタが参加した「笑えてた」を歌い上げ、ライブは終了。

 その後、数分おいてのアンコールでは、GOMESSの旧知の友であるHENTAI☆BEATSが登場。静岡でのバカバカしくも楽しい思い出が語られ、今度は、HENTAI☆BEATSのトラックで「人間失格」が歌われる。このアンコールが一番安心した。

 GOMESSのおっかけだったDJ矢車がGOMESSに頼まれてDJになったという話もそうだが、結局、こういう友人関係しか自分は信じていないのだと思った。

GOMESS(左)とDJ矢車(右)。

 そしてE TIKET PRODUCTIONがトラックを提供した「LIFE」をフリースタイルで歌い上げ、ライブは終った。

 3時間30分強のライブは、GOMESSの感情自体を追体験するものだった。

 すべてをさらけ出しボロボロになりながらラップを続けるGOMESSの存在を全身で受け止めることで、こっちもボロボロになるライブだった。でも、GOMESSになら、心をかき乱されてグチャグチャにされるのも、悪くはないな。と思った。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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