メジャーデビューアルバム『DAOKO』インタビュー

女子高生ラッパー・DAOKOが語る、音楽表現に向かう理由「心の穴っていうのは多分一生埋まらない」

「根が暗いからこそ表現する」

「水星」/DAOKO

――アルバムではリード曲としてtofubeatsの「水星」をカバーしています。これはどういうきっかけから?

DAOKO:これはアルバムの中で一番古い曲ですね。インディーのときに「水星」を聴いて、すごく良い曲だと思ったんです。アルバムの中にオケも入っていたから、とりあえず作ってみようと思ってたんですね。それを周りに聴かせたら「すごく良い」って言われて、ライブでもすごく評判がよくて。

――これは元の曲がすごくいい曲だし、人気もあるからこそ、自分なりのリリックをどう乗せるかを考えたところもあると思います。そのあたりは?

DAOKO:自分なりの自分が感じた「水星」を自分の曲にした感じですね。「小田急線」という言葉が出てくるのは、本当に小田急線内でリリックを書いていたからなんですよね。そういうところには椎名林檎さんの影響があるかもしれません。

――アルバムの中で、気に入っているリリック、自分としてもパンチラインだと思っている一節はどういうものでしょう?

DAOKO:「一番星」の冒頭部分みたいに、オブラートに包まずに言い切っちゃうのは好きですね。

――「嫌いなあの子が 死体になっちゃっても だれも気にしないんだろうなあ」。これは?

DAOKO:こういうことってあんまりメジャーでは言っちゃいけないのかなって思ったけど、でも、本当のことだし。そっちのほうがわかりやすいし届くと思うから。それを冒頭に持ってくるところにパンチがあるんじゃないかなって思います。暗い曲なわけでもないし、ポップなトラックにのせてるところに毒もある。あと、「ゆめうつつ」はめずらしくノンフィクションですね。スクランブル交差点でパニックになっちゃうっていう話なんですけど。

――「めまいが襲う 渋谷の交差点」という一節ですね。

DAOKO:これは調子が悪くて人混みがダメなときの心境をそのまま書いた感じです。あと「ぼく」は、自信がない僕を書いたネガな歌詞ではあるんですけど。

――「ダサいぼくが歌を歌っても 可愛いきみは振り向かないだろう」。「嫌」もそういう曲ですね。

DAOKO:そうですね。自分の自信のなさが表れてると思います。

――自分に自信がない?

DAOKO:そう思います。DAOKOとしての作品は好きだし、自信があるんですけれど……。そうじゃない自分の人格、本名の自分にはすごくコンプレックスがある。

――どういうところが嫌なんでしょう?

DAOKO:もともと、根が暗いんです。でも、根が暗いからこそ表現するし、そこに生きる価値を見出している感じで。だから、常に自分が嫌いだと思っているところがあって。でも、アルバムはそういう曲だけじゃなくて。「きみ」は自分的に応援ソングみたいな感じなんです。「こう思えたらいいな」という曲。

――だから、「ぼく」と「きみ」が対になってる。

DAOKO:対になってますよね。アルバムも、全体的にはネガなんですけれど、負だけで終わってないのがポイントだと思います。絶望してるわけではなくて、前向きに生きていきたいっていうのが出てる。そう作り終わってみて思います。いつもは“嫌だ”とばかり思っているんで。

――何が嫌だと思うことが多いんでしょう?

DAOKO:一番はやっぱり、自分が嫌なんです。でも、そんなことを考えてる自分が嫌だってなって、本当にすべてが嫌になって脳みそバグったりしちゃう(笑)。

――でも、さっき言ったように、そこが表現が生まれる最初のきっかけになるわけですもんね。

DAOKO:そうですね。やっぱり満たされてないから音楽をやってると思うんです。絵を描いたりするのも自分が傷ついた時とか悲しいときとか、負のものから生まれてくるものが大きい。ハッピーなときはあんまり曲も書けなかったりするから。社会的にはちょっと生きづらいんですけど……表現者としては、そのままでもいいかもしれないと思います。

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