suzumoku×平野愛智が語る、震災4年目の表現「自分の曲が、聴いた人の変化のきっかけになれば」

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「身を持って知ったからこそ、言えることもある」(平野)

――そういった思いを表現するためにも、バンドサウンドや強いギターの音が必要だったと?

suzumoku:そうですね。じつは、バンド編成の時に、エレキギターを持つようになって、自分の出せる声の限界値が高くなったんです。今まで、自分の鳴らすギターの音にすごく感化されてきたんだなと思って。アコースティックギターって、どうしても思いっきり鳴らすのがマックスですよね。でも、エレキギターはそこから音をひずませたり、音量をがっと上げたりできる。こっちのほうが、純粋に自分の声を伝ようという意志が強くなる気がしたんです。そういうことも含めて、今回の「明日が来るぜ」にはバンドサウンドが必要でした。

――PVを撮るにあたって、音楽の在り方や音の持っている力、リズム感といったものはすごく大事だったと思うんです。

suzumoku:うーん…。作り手としては、ここのフレーズはこういうコードで、イントロはこういうかんじで、といろいろ意図してやっているので、じつは自分では、だんだんとよくわからなくなっていくんですよね(笑)

平野:今までは、震災を絡めることで、ストレートに強い言葉があって対象がしっかりしていたというか、むしろキツいくらいだった。そのうえで「明日が来るぜ」の歌詞を歌ったらすごく良くなるんだろうなと思っていました。もともと良い曲なんですけど、本人が体験していないから、すごくもったいないと思ったんです。体験せずに歌うと「ろくに知らないのに」ってなってしまうので。今回の企画に対しても、身を持って知ったからこそ、言えることもあるし、伝えるためのパワーがより強くなるだろうと思っていました。

――いろんな解釈ができる歌詞ですよね。たとえば、東京で暮らしている人の歌ともとれるし。

suzumoku:曲自体は、宮城に行くまでに出来上がっていたものなので、そう捉えるのも間違いではないですね。ただ、現地に赴いたことで、歌っているときにいろいろな映像を浮かべることができるので、曲を聴いてくれる人に対して、メッセージとしてかなり強くなったのかなと。

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――今回のアルバムでsuzumokuさんに起こった音楽面の変化は、ポップミュージックの歴史でいうと、フォークシンガーだったボブ・ディランがある時期からエレキに持ち替えたとか、フォークグループだったRCサクセションが70年代後半からバンド編成になってローリング・ストーンズのようになってゆくとか、そういった変化を彷彿とさせます。

suzumoku:決定的な変化のきっかけは、それこそ震災だったと思うんですけど、ステージ上での具体的な変化は、震災後に沖縄に行って弾き語りでレコーディングしようと思ったときですね。スタジオに、良いエレキギターが何本もあったんです。なんとなくそれで弾き語りしてたら、スタッフと「これ、合うね」という話になったので、アルバム自体もエレキの弾き語りアルバムになっちゃったんです(笑)。そこから自分専用のエレキを買って、バンドとしてステージに立ったら、今までにないくらい吹っ切れた声が自然と出たんです。アコギで歌っていて「ちょっと恥ずかしいな」と思ったワ―ドでも、この勢いならズドンと自信を持って出せるという心境の変化もありました。

――以前は、シャープで研ぎすまされた世界という印象がありましたが、バンドで歌うことによっていい意味で無防備というか、開かれた印象を感じました。

suzumoku:いままでは、刀の鞘を「抜くぞ、抜くぞ」と言ってるだけだったのが、今回はちゃんと抜いて持っているというか。「いざ!」という気持ちにやっとなってきたんでしょうね(笑)。

平野:そうですね。一歩前に出てきたという印象があるかも。これまでは曲を聞くと、立ち位置というか、自分が居る場所を連想させられていたんですけど、今回はもっと広いところに出てきたように感じますね。

suzumoku:周りには「自分だけ分かっていればいいや」というふうに見えるんじゃないかと、ふと思って、これじゃダメだなと考えました。自分のなかで相手に「こうなって欲しい」ってどれだけ思っていても、それじゃ変わらないと思ったんです。やっと自分の部屋から出てきたというか…出るまでに時間が掛かりましたけど(笑)。

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