『アイドル楽曲大賞』アフタートーク(前編)

4人のアイドル論客が語る『アイドル楽曲大賞』の始まりと現在地「真の楽曲派は現場に多い」

左から、宗像明将氏、ピロスエ氏、岡島紳士氏、ガリバー氏。

 2014年12月29日、阿佐ヶ谷ロフトAで『第3回アイドル楽曲大賞 結果発表イベント』が行われた。同イベントは、リアルサウンドでも筆者として活躍するピロスエ氏が主宰し、有志によるインターネット投票でアイドル楽曲の順位付けをする企画サイト『アイドル楽曲大賞』の2014年度集計結果についてのものであり、この日のコメンテーターにアイドル専門ライターの岡島紳士氏と、音楽評論家の宗像明将氏に加え、日本各地を飛び回るDD(誰でも大好き)ヲタの中でも突出した活動が目立つガリバー氏が参加。アイドル楽曲についての熱いトークを繰り広げた。今回リアルサウンドでは、年が明けたタイミングで改めて4氏に集結してもらい、同サイト・イベントについての座談会を実施。前編では同企画の始まりや、それぞれが2014年のアイドル楽曲・シーンについて思うことを存分に語ってもらった。

「地方の若いヲタはだいたいAKB48が入り口」(ガリバー)

――まずはこの企画が生まれたきっかけを教えてください。

ピロスエ:『アイドル楽曲大賞』を始める前に、まず母体として『ハロプロ楽曲大賞』というものが2002年からスタートしています。たしか第1回は200人くらいが投票して、僕が手動で集計して結果発表ページをHTMLで書いて、曲ごとに投票コメントを公開していました。これが毎年恒例の企画になったんです。2010年と2011年はハロプロ楽曲大賞内の1部門としてアイドル楽曲大賞をやってみて、そのときはももいろクローバー「行くぜっ!怪盗少女」や東京女子流「鼓動の秘密」が1位になっていましたね。外野からは「その頃は『ハロヲタが選ぶアイドル楽曲』というランキングで独自性があったけれど、独立してからランキングの並びが駄目になった」という声もありますが、僕はそれは違うと思っていて。みなさんはどう思いますか?(笑)

ガリバー:ピロスエさんに同意です。2010、2011年のランキングの面白さは、そのときのDD(誰でも大好き)的なヲタの関心をそのまま表していることだと思います。なおかつ、当時のDDのヲタはだいたいが元ハロヲタだった。だから投票の内容とハロプロ楽曲大賞がある、ということ自体は何となくリンクしている状況で、ランキングにはリアリティがあったと思います。ただ、2012年以降は、AKB48から入ってきた人がすごく増えて、ハロプロを知らない、ハードルが高いと思って通っていない層が形成されてきた。地方に行くとそれが如実で、地方の若いヲタはだいたいAKB48が入り口なんです。

宗像:たしかにそれはわかります。BiSのヲタでも古参でハロプロを通ってない人はいなかった。若い層が「AKB48から流れてきた」と知ってすごくびっくりしました。

ガリバー:ハロプロは当時、地方にコンサート以外であまり行かないのに対して、AKB48は初期の頃から参加ハードルの低い握手会等で全国7大都市を回っていたので、若い子はAKB48の方が馴染みがあったりするんです。

ピロスエ:逆に言えば、2000年あたりでハロプロを通っていないのにアイドルファンというのはかなりのマイノリティなんじゃないでしょうか(笑)。80年代で言うと「アイドルが好き」と言いながらおニャン子クラブを気にかけないのに近いですからね。

宗像:その時代は一般社会の共通言語でしたね。僕も会社の人とモーニング娘。を観に行ってました。

ガリバー:2010、2011年もアイドル界はシンプルだったと思います。ももいろクローバーを通ってPASSPO☆に行ってという風に、大半のヲタが似た動きをしていました。だからこそ、ヲタの動きが複雑化してきた段階の良いタイミングで、アイドル楽曲大賞を別企画として切り離せた、と僕は思っています。

岡島:ピロスエさんは昔からやっていることだから普通になっているかもしれないですけど、この企画のために2700曲くらいを全て1人でデータ入力するんですよ。「やってればいつか終わる」とか言って(笑)。

ピロスエ:なぜネット上でそんな手間の掛かることをやるかというと、いくつか原体験があるんです。僕がインターネットをやり始めたのは99年くらいですけど、その頃に閲覧していたサイトのなかに『小心者の杖日記』というものがあって……。

宗像:ん? どこかで聞いたことありますね。

ピロスエ:宗像さんの個人ホームページです(笑)。その中にあった「地下水道」というリンク集が、量と質に優れていたんです。他にも、個人ニュースサイトの「俺ニュース」や、ばるぼらさんが作った『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史ヽ(´ー`)人(´ー`)ノ』など色々ありますが、質・量の凄さで圧倒するというネットコンテンツにカッコ良さや美しさを見出していて、影響を受けてますね。その最初期の原体験が「地下水道」なんです。ムーンライダーズの曲名から取ったであろうページ名も琴線に触れました(笑)。

岡島:異常なヲタがクローズアップされることも多いですが、その中でもピロスエさんは異常性が高いということに、早くみんなに気付いてほしい(笑)。しかも好きなのはハロプロや膨大なデータだけであって、アイドル楽曲大賞にはそんなに執着していないというところにも恐ろしさを覚えます(笑)。

ガリバー:毎年「僕はハロプロ以外一切興味ありません」って言っていますけど、それでもそつなくやれているという時点で異常ですよね(笑)。

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