嵐『THE DIGITALIAN』を柴那典が全曲レビュー 作曲者の顔ぶれと音楽性から読み解く

11.Bittersweet

作詞・作曲:100+、編曲:石塚知生

 軽快なダンスポップのシングル曲。こちらも「ASTERISK」と同じく100+が作詞作曲を手掛けている。リズムの聴き所が多いアルバムだが、この曲に関してはハーモニーの多用がポイントだろう(参照:嵐の楽曲で増えるハーモニー 「Bittersweet」に見るシンガーとしての“進化”とは)。と言いつつ、スラップベースのバウンシーなリズムや中間部のボーカルチョップなど『DIGITALIAN』全体のテイストに通じるサウンド面での面白みも多い。

12.メリークリスマス

作詞:二宮和也、小川貴史、作曲:二宮和也、編曲:ha-j、二宮和也

 二宮和也のソロ曲。ボーカルだけでなく、作詞・作曲・編曲にも彼自身がクレジットされている。そのこともあってか、アダルトなダンスポップに世界観を統一しているアルバムの中では完全に浮いている縦ノリのクリスマスソング。ピアノ演奏にはまらしぃが参加。ニコ動的なハイテンションさも感じる。

13.キミの夢を見ていた

作詞・作曲:HYDRANT、編曲:佐々木博史

 爽やかなメロディーと8ビートのストレートな曲調で、いわゆる王道のJ-POP的なアイドルポップ。少年性を打ち出すイメージも、かつての路線に近い。前曲「メリークリスマス」からの流れを考えるとアルバムの中での置きどころはここだろう。作曲のHYDRANTはこれまでも「truth」などの楽曲を手掛けている。

14. One Step

作詞:s-Tnk、作曲:Mats Tarnfors、編曲:佐々木博史

 アップテンポなグルーヴ感を打ち出した楽曲を前半に多めに配したぶん、アルバムの後半にはハートウォーミングな楽曲が集まっている印象。なかでもこの曲のテイストは「クラシック+レゲエ」。裏打ちのビートとピースフルなメロディを主体に、ストリングスの響きを効果的に配した曲調だ。作曲のMats Tärnforsはスウェーデンの作曲家。プロダクション「Songs of Sweden」の代表でもある。

15. Hey Yeah!

作詞:AKIRA、Rap詞:櫻井翔、作曲:田中直、編曲:Hisashi Nawata

 櫻井翔のソロ曲。ジャクソン5を想起させるカッティング・ギターが印象的。開放的なメロディ、ゴスペルっぽい厚みのあるコーラス、中間部のグルーヴィーなベースなど、全体にモータウン・ポップへのオマージュが満載。その上でワン・ダイレクションにも通じるシンセフレーズなどで現代性を出している感じだ。楽曲はSUPALOVE所属の作曲家・田中直。平井堅やMay.Jなど数々のJ-POPを手掛けている。

16. Hope in the darkness

作詞:小川貴史、HYDRANT、作曲:David Keiffer Johnston、Wesley Steed、Sigurdur Kristinn Sigtryggsson aka Siggi、編曲:metropolitan digital clique、A-bee

 アルバムのラストを飾るナンバーは、やはり『DIGITALIAN』のサウンドの主軸がヨーロピアン・ダンスポップにあることを示すような一曲。「♪WOW〜」というコーラスも、メロディのスケール感の大きさも、細かい所に小技の効いたアレンジも、壮大な聴き応えに結実している。作曲はDavid Keiffer Johnston, ロンドン拠点の作曲家Wesley Steed、アイスランドの作曲家Sigurdur Kristinn Sigtryggsson aka Siggiの共作。多国籍な作家陣が集結したアルバムを象徴するような一曲でもある。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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