ターボ向後のマニアック音楽シーン探訪

「4K映像」が音楽にもたらす可能性とは? 大自然からセクシー系まで、映像美を誇るMVたち

4Kアクションカムによるサイケデリックな360度パノラマ撮影!

SOLO - ZO HIGH

 TVのバラエティー番組等で芸人サンがヘルメットに小さなカメラをつけて、自らを撮影しているような映像をご覧になった方も多いだろう。ああした小型カメラは「アクションカム」といい、以前は制作会社やスノーボーダー&サーファーといったエクストリームスポーツ愛好者にしか知られていなかった。しかし、この2~3年で家電量販店のビデオコーナーでの販売スペースが急激に拡大しており、「あぁ、あのカメラのことか」と思い当たる方も増えてきたはずだ。

 そんなアクションカムの市場の約8割近くをほぼ独占しているといわれているのが、老舗メーカーの「GOPRO」。長年の歴史に培われたその企画力は他社を圧倒しており、昨年は世界初の4K MOVIEが撮影できるアクションカムを発表して業界を驚かせた。それを6台使用して360度のパノラマ4K映像を収録したのが、オランダのラッパーSOLOのZO HIGHである。

SOLO - ZO HIGH GoPro 360 Music Video 4K

 このGOPRO使いの球体パノラマ映像自体は、Flatbush Zombies x Trash Talk-- "97.92"や、Wild Child - Rillo Talk、ドイツのジャーナリスト ヨナス・ギンター氏によるものなど、今年のプチトレンドになっている。それをいち早く4K撮りすることで、より深いサイケデリック感を演出している点に脱帽だ。

 このように海外では着実に広がりを見せている4K映像コンテンツだが、何故か国内においてはネガティブな反応も少なくなく「ハイビジョンサイズで十分」「また規格変更に合わせて商品を売ろうとしてる」といった声もある。しかし、そういった一見、消費者側に立ったような意見が本当の意味での「ニーズ」を反映したものかというと、そうではないのではないかと思う。

 「ダークナイト」や「インセプション」といった傑作を世に放ったクリストファーノーラン監督は、日本でも12月に公開される新作「インターステラー」を多くの反対意見をなぎ倒すカタチで、デジタルではなくフィルムによって撮影した。「どうしてもこの作品を、この映像規格(フィルム)で視聴者に届けたい」そうした熱意は制作側には常にあるもので、映像作品と映像規格は切っても切り離せない関係である。言ってみれば「どのように見せたい=届けたいか」を含めてが、制作側の責任なのだ。

 そして、その本気度、作る側の熱量こそを消費者は見ているのであり、今現在4Kムーブメントがまだ静かな"胎動"程度に収まっているのは、もしかしたら制作者側の「この映像を4Kの規格でどうしても届けたい!!」という熱量が足りていない表れなのかもしれない。

 上記したつぼみの4K予告映像が一週間で5万回といった驚異的なアクセスを示したように、4Kコンテンツへのニーズは確実に存在している。1980年代「映画でもTVでもない」と揶揄されたMTVは、現在まで続く音楽映像コンテンツを牽引した。同じように、現在の4Kを巡る混沌とした状況は、ミュージックビデオがその先陣を切るメディアとなり、その普及を推し進めるべきではないだろうか。

 今回ご紹介した4Kミュージックビデオは、先端的なメディアとしてMVが担うべき役割を、制作者側にも消費者にも喚起する作品といえるのかもしれない。

■ターボ向後
AVメーカーとして史上初「映像作家100人 2014」に選出された『性格良し子ちゃん』を率いる。PUNPEEや禁断の多数決といったミュージシャンのMVも手がけ、音楽業界からも注目を集めている。公式Twitter

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