乃木坂46、切り札投入で紅白出場&AKB48越えなるか? 生田絵梨花センター抜擢の10th選抜を分析

乃木坂46の切り札 生田絵梨花

 今回のセンターは今年リリースの2作でセンターを勤めた西野七瀬でもなく、AKB48との兼任や選抜総選挙で再び注目を集めた生駒里奈でもなく、今回が初のセンターとなる生田絵梨花だった。生田は“清楚で洗練されたお嬢様”というまさしく乃木坂46のイメージを体現するメンバーで、ファンからもセンターに推す声は以前から多かった。現在高校3年生と若く、フロント経験も多い彼女は乃木坂にとって「最後の切り札」的な存在だった。

 生田がセンターに選ばれたこと自体は誰もが納得のところであるのだが、このタイミングでセンターに起用されることは多少の驚きもあった。乃木坂は今年リリースされた2枚のシングルで20歳の西野をセンターに据え、22歳の3人からなる「乃木坂御三家」白石麻衣、橋本奈々未、松村沙友理でその横を固め、「綺麗なお姉さんグループ」というイメージを作り上げていた。8thシングル「気付いたら片想い」は同時期にリリースされたAKB48の姉妹グループを超え50万枚以上のセールスを記録するなど、その戦略は一定の成果を残していた。ではそれをいったんリセットしかねない若い生田の起用はどのような意図があるのだろうか。

 考えうる要因としては、9thシングル『夏のFree&Easy』のセールスが運営側の目指すところに届かなかったことだろう。同作は発売されて1ヶ月ほど経つが、未だ前作のセールスを上回れていない。発売の少し前にAKB48の握手会の事件があったという外的な要因がセールスが伸び悩んでいる理由の一つではあるのだろうが、今一番勢いのあるグループという声もあるだけに、前作割れという事実は運営側にとっては頭を抱える問題だ。つまり、それを挽回するための手段として「最後の切り札」生田絵梨花のセンター起用というわけだ。ミュージカル「虹のプレリュード」の主演も決まり、大学進学に向けて大事な時期でもあるだけに、この時期のセンター抜擢は生田本人にとってかなりハードなのは間違いない。それでも運営側が生田のセンター起用を決めたのは、グループにとって今回のシングルがそれほど大きな意味をもつということの表れだろう。

1つ目の坂の頂、そして次なる坂へ

 一般的に、アイドルグループの成長を測る材料としては、CDセールスやライブの動員数、メディア露出の頻度などが主な指標となる。CDセールスやライブの動員はグループとファンの関係になるが、メディア露出に関しては起用する側の意図も働くため、前者とは違ったハードルが存在するといえる。念願の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)への出演も果たし、多くのメンバーが一つの集大成となると語る今年、グループが次に目指すのは、年末の『NHK紅白歌合戦』。これが上り続けていた大きな坂の一つ目の頂となるだろう。紅白はそもそもの出演のハードルが高いのに加えて、出演できるアイドルは限らられているため、自らの手で紅白出場を勝ち取るためには、やはりこの10thシングルの成功は絶対条件だ。選抜メンバー固定化に加え、切り札である生田を投入するということは、紅白という大きな坂を登りきるために必須の布陣なのである。

そして、紅白の向こう側には、次なる坂が待ち構えている。それはもちろん、ライバルグループであるAKB48だ。これまでは他の姉妹グループのような位置づけで語られることも多く、グループのコンセプトや楽曲のテイストが異なるものの、公の場でこの二つのグループが並び立ち、ライバルとして比較されることはあまりなかった。

 実際、乃木坂のファンのなかにはAKB48グループを通ってこなかったファンや、そもそもアイドルに興味のなかった客層もおり、そういった人々にも訴えかけられるだけの魅力を事実持ち合わせているのだ。乃木坂46が4年目を迎える際に、AKB48のライバルグループとして対等に比較されるために、そして乃木坂46が「乃木坂46」という一つのグループとして認識されるために、今回の10thシングルの成功と紅白出場は、彼女たちにとって上りきらなければならない大きな坂となる。

 10月8日の発売が発表された10thシングルを、乃木坂46の体現者生田絵梨花と不動のメンバーはどのように彩るのだろうか。そして、その先にある乃木坂46の未来はどのように変化していくのだろうか。今年最も勢いのあるアイドルグループからますます目を離すことができなさそうだ。

■ポップス(Twitter
平成生まれ、沖縄育ち。音楽業界勤務。Nogizaka Journalにて『乃木坂をよむ!』を寄稿。

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