復活シングル『RAINBOW』インタビュー

LEGO BIG MORLが明かすバンドの転機「これまでやったことのない領域に挑戦した」

 

 昨年2月にギターのタナカヒロキが交通事故で負傷し、予定されていたツアーが中止となるなど、バンドとしての活動停止を余儀なくされたLEGO BIG MORL。彼らは約1年間にわたる期間を乗り越え、1月22日に配信限定シングル『Wait?』をリリースすると、1月24日には盟友flumpoolを迎えた復活ライブを開催。さらに4月30日にリリースするシングル『RAINBOW』から、これまで所属していたMr.Childrenやレミオロメンなどが所属するOORONG-SHAと、ONE OK ROCKやflumpoolなどが所属するA-Sketchがタッグを組む形で、彼らの活動をバックアップすることも決定した。そうした環境変化を伴ってリリースされる『RAINBOW』は、ダンスミュージックの要素を大胆に取り入れつつ、新たなサウンドを築き上げた意欲作。今回のインタビューでは、復活までの1年間で取り組んだことや、現在のバンドシーンへの思いなどを大いに語ってもらった。

「神様がこうやって、僕らのために時間を作ってくれた」(カナタ)

――昨年2月のタナカさんの事故に関しては、バンドにとって大きな困難となった一方で、バンドの音楽を振り返る一つのきっかけになったように推測しています。この1年間はどうでしたか?

タナカヒロキ(G):僕は「その時間が有意義だった」とか、「あってよかった」とかは正直言えない立場なんで……結果的にそうなったら嬉しいですけど。この出来事を有効的に受け止めて、LEGO BIG MORLを止めないようにしようと動かし続けてくれたメンバーには感謝してます。そのためにリハビリも頑張れたし。楽器に触れなくても、歌詞を書いたり、色んな音楽を聴いたりと自分に出来ることをやってました。

――手を怪我してから、楽器に触ることが出来るようになったのはいつぐらいから?

タナカ:だんだんピックを持ってる感覚を取り戻して、やっとちゃんと弾けたと思えたのは去年の秋ぐらいですね。骨折とは別の症状で右手の感覚を失っていたので、その手術もして、リハビリをしてという感じでした。

カナタタケヒロ(Vo/G):僕は今まで毎日曲を作ってたようなものだったので、しんどい感じはしていたんです。でもそんな中で、これだけ時間がたっぷりできて、「一回何も考えんとこかな」って時期になったんです。「自分が音楽でどういうことをやりたいんやろうな」って考えたりもしましたね。あとはヒロキに「こんな曲出来てるから、歌詞書きや」って持って行ったりとか。音楽からは離れないようにはしてましたね。

――バンドを少し客観的に見た期間があった。

カナタ:そうですね。そのおかげで「アレコレせなあかん」っていう考え方から解放されて。まあ、これをヒロキのお蔭という話ではないですけど、神様がこうやって、僕らのために時間を作ってくれたって思える部分はあります。

――そうやって息抜きをした先に見えてきた音楽的な方向性とは?

カナタ:今までよりも「もっとのびのび音楽をやりたいな」と、シンプルさを欲するようになりました。今までのLEGO BIG MORLは「息付く暇もない、誰一人として欠けてはいけないようなサウンドメイク」をすることに長けてたと思うんですけど、何か「そこだけじゃないよな」って思って。そんな中で、“4人で一緒にスタジオに入れない”っていうのがプラスに転んだんです。

――“4人で作る”という一旦出来上がってた流れを壊す中で、これまでのLEGO BIG MORLサウンドの複雑さを、どのようにシンプルにしていったのでしょうか。

カナタ:シンタロウがPro Toolsを使えるっていうのが大きくて。音を1本1本重ねて作るしかなかったので、「あ、これいらんかったんや」とか「これで充分なんや」っていうものが見えてきたりしたんです。

アサカワヒロ(Dr):音に空間が出来たからね。必要な部分が見えやすくなって。

ヤマモトシンタロウ(Ba):Pro Toolsはデモを作る際に、客観的にメンバーとかスタッフにそれなりのクオリティで聴かせることが出来るので元々使ってたんです。けど、曲作りの段階で本格的に使うのは初めてで。どこでも曲作りが出来るので、使い方次第で便利になるものだなと思いました。

――アサカワさんはドラマーとして今までアンサンブルを牽引するような演奏をされてましたが、「RAINBOW」ではまた違う「曲を活かす」リズムアプローチになっていますよね。

アサカワ:そうですね。今までは8ビートと16ビートに加えて、変拍子でキメが多くて……と盛りだくさんな感じだったんですけど、「RAINBOW」の打ち込みデモを聴いた時に、四つ打ちの打ち込み音にギターリフやベースがずっとループしていて。すごく新鮮に聴こえて全然飽きなかったんですよ。レコーディングでもスネアの鳴りを調整したり、ハイハットのじゃりじゃりした上音を排除してミュートしたりとか、新しいことを積極的に取り入れました。最終的にメロディや歌が入った時、以前よりも「自分の叩いているビートの中で、歌や歌詞が活きているな」という印象を受けるほど、聴きやすくてわかりやすかった。そういう意味で去年は自分の中で得るものが多かった1年やと思います。

――タナカさんはバンドが次のステップに行ったことに対し、何を感じました?

タナカ:精神的に落ちまくっていたので、その中でデモが届くというだけでも一つのトピックスやったし、曲を持ってくるピッチの速さにも驚いたんです。しかも早いだけじゃなくて、Pro Toolsを使ったことでデモのクオリティが上がってて。僕はそれを聴いて「うわ、すごいもん出来てるやん」っていう、いちリスナーとしての感想しか上げられへんかったんですけど。それが別に打ち込みであろうが、Pro Toolsを使ったものであろうが、LEGO BIG MORLの色がちゃんと出てるし、Pro Toolsだから出来るような大胆なアレンジをデモの段階でしてて。だから僕もすんなり乗せる言葉をイメージしやすかったんやと思います。

――そういう意味では「RAINBOW」の歌詞はスムーズにできた?

タナカ:はい。僕は去年1年間で闇を経験させてもらったので、その間に浮かんだ言葉に関しては説得力もあるだろうと勝手に思ってて。実際そこで出てきて、メモ帳に書いた言葉をなるべく使ったりとか。しかも「RAINBOW」に関してはデモの段階からピカイチで光っていたので、僕もピカイチなメモ帳のページを選んだりして。なるべく光が見えるようにというか、「暗いところに一筋の光」というのはいままであったんですけど、「晴れ渡る感じ」、「晴れ渡るであろう」心情を描きたいなと思って。自ずとそこに僕らしさは出るやろうと。

――実際の体験もそこに重なって?

タナカ:そうですね。そこは絶対やと思ったんで。

――「RAINBOW」は音の隙間をうまく活かしたアレンジで、それがメロディの印象も変えていますよね。

カナタ:そうですね、やっぱり隙間が生まれたぶん、ゆったりとした感じをLEGO BIG MORLに注入したかったんですよね。それで僕が空間系のエフェクターを使ったりするという、バンドとしてはやったことのない領域に挑戦した。結果として、こんなにも曲って変わるんやって思ったんですよね。「RAINBOW」は全部ファーストインプレッションで作った曲なんですよ。3コードやし、そこで一発目に歌メロが入って、何の迷いもないんですよね。その中で自分が段々とトランスしていってハイになっていくという構成がデモの段階であったんで。多幸感だったり、広い世界感がすごく詰まった曲が出来たんで、これは今までの僕らには無いなと思いましたね。同時に、「これだけシンプルな曲が俺らでも出来るんや」という達成感も感じました。

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