チャットモンチー、LoVendoЯ、tricot……独自のプレイが光る女性ギタリスト6選
美轟重音の咆哮 Wata(Boris)
黒のレスポール・カスタムに極太ゲージ、積み上げられたオレンジアンプ。無表情にも見えるうつむき加減の静かな姿に反して、放たれる歪んだ重低音ギターは、その辺の轟音と呼ばれるサウンドですら霞んでしまうくらい、聴覚の奥にまで訴えかける音の洪水である。
Borisはヘヴィロック、メタルからノイズ、インプロヴァイゼーションなど実験要素を含めたジャンルを自由に行き来し、世界を席巻するバンドだ。近年では映画『告白』サントラやDEAD ENDトリビュートへの参加など、その音楽性は多岐に渡るが、根底としてあるのはキャッチーでストレートなロックだったりもする。その機軸の一つとなるのが、サイケデリックなギター。往年のクラシックロックを彷彿とさせる骨太なリフであり、ダイナミックなフレーズの数々だ。
身体はもちろん、空気とともに緊張感までも容赦なく震えさせる歪んだギターに、別世界を体感するだろう。
虚無と写実が交錯するゴシック noah(101A)
「鋭利な轟音とセイレーンの歌声」は言い得て妙、ヨーロッパを始めとし、海外でも評価の高い、101A(ワンゼロワンエー)。無機質な冷たさを感じながらも心の隙間にすっと入り込み、サウンドから絵や情景が浮かぶ、そんな稀有な存在のバンドである。
シューゲイザーといえば、モジュレーションや空間系エフェクトを多用し、音の壁を作るバンドが多い中、必要最低限の音数でその間(ま)さえも巻き込む渾然一体の世界。美しくも耳をつんざくようなグランジ・ギターサウンドから、今の日本の音楽シーンで忘れさられようとしている頽廃美を気付かせてくれる。
麗しのハードロックギタリスト 五十嵐sun-go美貴(SHOW-YA)
最後は80年代のバンドブームはもちろんのこと、2005年のオリジナルメンバーでの再結成以来、今なお「NAONのYAON」を始めとし、ガールズバンドシーンを牽引するバンドだ。メンバー全員50歳を過ぎてますます進化を遂げている。
中村美紀(Key)、角田美喜(Dr)に続いて3番目に加入した「3号"sun-go"」。女性ギタリストという枠で括るのが恐れ多いほどの研ぎ澄まされたテクニックの持ち主である。低音弦の刻みからライトハンド、マイナースケールを主としたギターソロ、アーミング、どれを取ってもハードロックの醍醐味が満載の絢爛たるプレイ、誰もが憧れるようなリフ、フレーズのオンパレード。特に開放弦を絡めたプリング・オフは彼女の十八番であり、リフでもソロでも、SHOW-YAサウンドに欠かせない顔にもなっている。テクニックだけにとどまらず、いかにギターを華麗にカッコよく弾くか、そのシルエットやアクション、定番の“ギター回し”、どのアメリカ人のギタリストよりも凄味のあるLAメタルっぷりを発揮している。
男性に負けないパワフルさとアグレシッブなスタイルや、女性らしい繊細さと華々しいテクニック、はたまたギターを掻き鳴らしながら歌う椎名林檎のようなスタイルに憧れる同性も多いことだろう。それぞれのスタイルに魅力がある。そう、ギターを弾く女性の姿は何よりセクシーでカッコよく、美しいのである。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/twitter