新作『YANKEE』インタビュー(後編)
「最近はネットコミュニティを俯瞰で見ている」米津玄師が振り返る、ネットと作り手の関わり方
「ボーカロイドも一つのアイドルかもしれない」
――そのような考えに至った契機は?
米津:おそらく、一人で音楽が作れなくなっちゃったことが大きいと思います。『diorama』を作り終わった時に、何もやる気が起きなくなって。半分廃人みたいな生活を送ってたんです。で、なんか「このままじゃいかん!」と(笑)。前を向かざるを得ないっていうか。ホントになぜか、今もなお自分の中ではそういう大きい感覚があって。人間暗いところに一人でいちゃだめなんだと(笑)。人と一緒にコミュニケーションを取って、あーでもないこーでもないって言いながらものを作るのが正しい姿なんじゃないかなと思って。
――家にこもっている期間があったからこそ、そうした発想になったのかもしれませんね。先ほど言っていたようなコンビニで気軽にチョイスできるような音楽、誰でも楽しめるポップスって、ご自身がリスナーとして聴いている時はどうでしたか。ディープに音楽を追求する面とのバランスは?
米津:両方ありましたね。みんなが知っているような、当時流行っていた音楽も好きだったし、その地域の中で自分しか知らないような音楽が好きな自分もいて。
――それは主にネットを通して知った?
米津:そうですね。だから、割と何でも好きでしたね。
――今、多くのリスナーに聴かれている音楽ジャンル、アイドルについてはどう思いますか。
米津:たとえば、ボーカロイドも一つのアイドルかもしれないですよね。で、僕はまあそういうことをやっていた人間ではあるんですけど、生身の人間のアイドルに興味を持ったことがなくて。……個人的にはジブリがすごく好きなんですよね。小さいころからずっと好きで。国民的アニメーションじゃないですか。だからそういうものを目指したいなとは思いますね。大衆的であって、ニッチであるというものを作りたいなとは思いますね。
――今回の作品は一つの手ごたえになった?
米津:蓋を開けると3人ぐらいしか聴いてないみたいなこともあるかもしれないですけど(笑)。でもまあ、満足して作り終わることが出来ました。