嵐・櫻井翔が見据える“次のステージ” 役者・歌手としてどう進化してきたか
嵐・櫻井翔と宮崎あおいの主演作で、2011年8月27日に全国321スクリーンで公開された大ヒット作『神様のカルテ』。初日2日間で興収3億285万3600円、動員23万9522人になり映画観客動員ランキングで初登場第1位を獲得した同作がおよそ2年半ぶりに帰ってきた。主演はもちろん、他のキャストやスタッフも前作とほとんど同じメンバーで制作された『神様のカルテ2』は、3月21日より 全国東宝系で上映が始まっている。
『神様のカルテ』は現役の医者でもある夏川草介が第10回小学館文庫小説賞を受賞したデビュー作で、2009年8月に小学館から単行本が発売された。2010年9月には第2作となる『神様のカルテ2』、2012年8月には第3作『神様のカルテ3』が発売され、シリーズ累計で300万部を記録。中高生を中心に根強いファンを抱える人気作品である。物語は夏目漱石を敬愛し妻・ハル(宮崎あおい)を愛する栗原一止(櫻井翔)が常に生と死に直面しながらも最良の医療を模索する、個性豊かな人々が織りなすヒューマンドラマ。本作『神様のカルテ2』では現代医療が抱える問題を誠実に描きながら「仕事とは?」「家族とは?」「友情とは?」といった普遍的な問いにも真正面に向き合う内容に仕上がっている。
櫻井が「アニキのような存在」と語る監督の深作栄洋は、2年半ぶりに一緒に仕事をしてみて櫻井の役者としての成長を感じ取ったという。「ピクトアップ」のインタビューで深作は次のように語っている。「もう栗原一止ではなくて櫻井一止という人格のように、それくらい一止くんは櫻井くんのものになっていた。撮影初日に櫻井くんの演じる姿をみて『2年間で変わったね、スゴイね』とプロデューサーと裏で手を握り合いました」。また櫻井自身も「前作はちょうど30歳になるタイミングで撮った作品。監督からいろいろなことを教えて頂いて、そこで20代を終えることができた。あの映画が次のステージへ向けて走りださせてくれたのかもしれない」と回想している。
「成長」という意味でいうと、役者業以外でも櫻井の進化は見てとれる。以前リアルサウンドではミュージカルで大役を務めたことが契機となり彼の歌声に力強さが加わったこと、それが嵐の楽曲における歌割りに変化をもたらしたことを取り上げた(参照記事:嵐の「歌割り」を劇的に変えたキーマン 櫻井翔の歌唱法の変化をたどる)。それ以外の部分、例えば自身で全てを手掛けている「サクラップ」においてもライムの踏み方や抑揚のつけ方、歌詞の深みなど10年前と比べ明らかに高等化しているのが聴いていてわかる。前出の深川が「(逢わない間に)色んなことがあったんだな、新しいことにチャレンジしたり、自分で経験して獲得した部分があると思った」と語る通り、櫻井翔という男は常に変化を厭わず進化し続けるパーソナリティをもった人間であるに違いない。
公開に先駆けて3月18日に「TOHOシネマズ 日本橋」で行われたプレミア試写会に和装に身を包み登場した櫻井は「今日みたいな春の温かさと香りと一緒に、映画を楽しんでもらえれば」とアピール。また配給の東宝からは台湾での配給決定が発表されたという嬉しい知らせも。早くも第3弾に向けての期待も高まっている「神様のカルテ2」、ぜひ劇場へ足を運び進化し続ける櫻井翔の姿を目にしてもらいたい。
(文=北濱信哉)