“体験をパッケージ”する発想をーーダイノジ大谷が提言する、これからの音楽サバイバル術

――状況に対応して、ミュージシャンの間でも経済的に自立する動きが出てきたということですね。先ほどフジロックの話が出ましたが、フェスの盛り上がりが音楽シーンに与えた影響についてはどう見ていますか。

大谷:ミュージシャンにとってフェスが一つのツールになっている部分があって、フェスで盛り上がる曲を作らなきゃいけないっていう問題もあると思います。ただ、ミュージシャンのあり方に変化が生まれたのは、面白いことだと思います。たとえば『京都大作戦』では、10-FEETが進行もやっているんですよ。自分たちでミュージシャンも呼びに行ったりしていて、フェスの全体を見ている。あのフェスって最初の年はゴミがすごく多かったのに、ミュージシャンたちのMCがすごく長くなって、みんなで注意したら本当になくなったんです。今までは言いたいことは音楽で言えばよかったのに、それじゃ伝わらないってことに誰かが気づいたのかもしれません。それは決して悪いことじゃなくて、言葉も込みでミュージシャンの魅力になってきたということかと。3.11以降は、さらにその傾向は強くなったと思います。ブラフマンがステージでしゃべるようになったのもまさにそうで、言葉で伝えることによって、その人たちの生き方とか歌詞が、よりリスナーの人生観とかにクロスオーバーしていくっていう現象が起こってきている。これはすごくエモーショナルなことだと思います。

 マキシマム ザ ホルモンがあそこまで激情的な歌になって、メロディもわかりやすくなってきているのも、思いをちゃんと伝えていこうっていう意思の表れなのかなって思います。『予襲復讐』に156ページのブックレットを付けたのは、そういう意味合いがあったと思うし、CDだけではない、新しいパッケージを作るという意図もあったはずです。

——音楽だけでなく、自分たちの表現を丸ごとパッケージして伝えようとしている、と。

大谷:お笑いの現場でも面白い現象があって、多くの劇場はお客さんが少なくなってきているのに、歌舞伎座とか明治座にはいつも人がいっぱい入っていて、その多くはおばちゃんなんですね。なぜだろうと思ってよく観察してみたら、歌舞伎座のまわりには喫茶店がすごく多いことに気づいたんです。おばちゃんたちは10時に喫茶店で待ち合わせて、おしゃべりを楽しんで、12時になったら劇場に入って、公演の休憩でちょっと贅沢な1000円のお弁当食べて、見終わったら帰りに銀座で買い物して帰る。つまり、おばちゃんたちはそのエリアでパッケージされた一日を消費しているんです。

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