でんぱ組.inc『W.W.DⅡ』リリース直前インタビュー(第1回)
「物語性の先に辿りつきたい」でんぱ組.incのプロデューサー・もふくちゃんが語るアイドル論
――でんぱ組.incは今、どんどんファンが増えて、サクセスストーリーの真っただ中と言える状況ですよね。でも、「W.W.DⅡ」では、その明るいストーリーの裏側の部分を浮き彫りにしています。このパターンは、今まであまりなかったんじゃないでしょうか。少なくとも、ハロはやっていません。もし今後、でんぱ組.incがドカンと知名度を上げた場合、ハロのように物語と楽曲が切り離されたスタイルにしたいですか?
もふく:でんぱ組.incについて考える際、自分の趣味や好みを入れつつも、かなり世間の動向を見て決めているんです。だから、世の中が物語を求めているのなら、物語を作らないといけないと思う。でも理想を言えば、物語性を乗り越えた先にある領域に辿りつきたい、本当の意味でエンターテインメント性の高いものや楽曲の力で勝負したい、という希望はありますね。
――物語性は、あくまでも“過程”なんですね。
もふく:そうですね。でんぱ組.incの現状も“過程”だと思いますし……例えば、Perfumeさんやももクロちゃんのレベルになると、もう“過程”はいらないじゃないですか? でんぱ組.incも、そういうレベルに達することができたらいいなと思う。そのためには“でんぱ組.incは武道館を目指していて、それが達成される”という夢のストーリーが必要なのだと思います。知名度や人気が一般層まで浸透すれば物語はいらなくなる。それまでの勝負なのかなと。
――たしかに、物語性で引っ張るのは限界があります。
もふく:ももクロちゃんたちは、紅白歌合戦に出場するまでの物語がきれいにあったでしょう。そのあとのストーリーも興味深く見ているんですけど、もう物語性うんぬんではなく、“ももクロちゃん”というキャラクターで勝負できる段階に上り詰めたんだな、と感じます。
ただ、でんぱ組.incは、このままのメンバーで10年後まで続けることはない。そういう意味で、卒業までのストーリーはできていると思うんです。だから、“物語性を越えた先”に到達することができるのかどうか……。このあたりは葛藤しています(笑)。
第2回目:「でんぱ組.incはルサンチマンに火を付けて飛んでいる」メンバーを奮起させた“屈辱”とは?
■福嶋麻衣子(ふくしままいこ/もふくちゃん)
株式会社モエ・ジャパン代表取締役社長。東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業。でんぱ組.incのプロデュースのほか、秋葉原にあるライブ&バー『ディアステージ』や、アニソンDJバー『MOGRA』の運営なども手がける。TOKYO FM『妄想科学デパートAKIBANOISE』(水25:00)にもレギュラー出演中。
(インタビュー=エドボル/構成・文=編集部)