ゲーマー注目の異色作『ザンキゼロ』 死ぬことが生存に繋がる、新たなサバイバルに挑め

 7月5日、話題のPS4/PS Vita専用ゲーム『ザンキゼロ』が発売された。本作はスパイク・チュンソフトが手がける新規オリジナルタイトルで、サバイバルがテーマ、そしてゲーム内ガイドキャラクターのキャストに『ドラゴンボール』でお馴染み野沢雅子(孫悟空役)と中尾隆聖(フリーザ役)が起用されたことでも注目を集めた。

中尾隆聖が演じるガイド役”テラシマショウ”

 サバイバルゲーム作品と言えば、何が何でも「生存すること」を主軸にユーザーへアプローチする作品が多いなか、『ザンキゼロ』はまったく別の切り口のゲーム性に挑んでいる。そこで本稿では「ノンストップ残機サバイバルRPG」と公式が表する『ザンキゼロ』が持つ魅力について、ゲームの根幹を為す舞台設定や各種システム面から紐解いていきたい。

クローンとして生きる元人間のサバイバル

 『ザンキゼロ』の舞台は、「ガレキ島」と呼ばれる人間が住んでいない廃墟の無人島だ。人間がいないことには理由があり、簡潔に述べると文明が崩壊してしまったからである。そして、本作に登場する8人のメインキャラクターたちは既に人間ではない。外見上は普通の人間と変わらず知能も同等なので、他者と何ら変わりないコミュニケーションも取れるし、運動をすればスタミナも消費する。しかし普通の人間(生物)と決定的に違うのが、13日間で完全な寿命を迎える点だ。

 子供から大人になり、やがて老いて生命を終えるも、フィールド拠点内の「エクステンドマシン」と呼ばれる装置を使えば、また幼い子供の姿で“誕生”する。このサイクルは、元人間でゲーム開始時にはクローンとなったキャラクターたちに必要不可欠なものであり、同時に本作のジャンル名「ノンストップ残機サバイバルRPG」の象徴とも言えるだろう。

 加えて、文明崩壊後の世界を生き抜くためのサバイバル生活も、本作の大部分を占めるメインテーマだ。プレイヤーは文明の再興というゲーム目的を与えられ、性格も容姿もさまざま、過去にそれぞれ謎を秘めているキャラクターを操作してゲームを進める。そうすることで次第にベース拠点以外の施設が使えるようになり、文明再興の兆しが少しずつ見えてくる。プレイヤーはストーリー面やビジュアルから受けるインパクトとともに、各パラメーターの充実や新機能のアンロックといったシステム面でも、潜在的に生きる実感を得ることができるわけだ。

死亡が活路を開く「シガバネ」システム

 『ザンキゼロ』には、「シガバネ」と呼ばれる独自のシステムが実装されている。通常のコマンドRPGであれば、戦闘中に敵の攻撃で倒されると行動不能となってしまい、回復するまでお荷物となるケースが多い。また硬派なローグライクRPG、例えば『風来のシレン』ではゲームオーバー時に成長したレベルがリセットされ、ゲーム開始時の初期段階に戻る手厳しいペナルティが存在する(このペナルティが醍醐味でもあるのだが)。このように総じてRPGでは、一部の例外作品を除き「死」の概念が重く、回復作業や高性能な防具の装備によって避けることが多い。一方『ザンキゼロ』のシガバネシステムは、死を肯定するユニークな魅力を秘めている。

 具体的には、敵による何らかの攻撃(状態異常も含む)で死亡した場合、エクステンドマシンで復活した次のクローンはその攻撃への耐性を獲得する。これを「シガバネボーナス」と言い、様々な死亡要因を経験することで、クローンは成長するのだ。それと同時に、何度もピンチに遭遇すれば、現実のプレイヤーもおのずとテクニックが磨かれていくだろう。なお敵に倒されることなく老衰で死亡すれば、天寿を全うしたことによる特別なボーナスも入る 。自身の生存をかけたサバイバルゲームでは異色と捉えられるかもしれないが、生と死の境界線上で浮かび上がる葛藤が成長につながるという、擬似生命であるクローンという設定を最大限に生かしたシステムは、『ザンキゼロ』の大きな魅力になっている。

 本作はゲーム全編に散らばる不明瞭な情報、「なぜ自分はクローンになったのか」「なぜ文明は崩壊し自分たちだけが取り残されたのか」といった謎が謎を呼ぶ展開が終始続く。また本作の対象年齢が17歳以上である理由として、コミカルなキャラクターデザインやガイド役を務めるサポートキャラクタの言動とは裏腹に、ゲーム中においてグロテスク描写が頻出することも挙げられる。

 プレイヤーを選ぶ作品かもしれないが、高難易度な3DダンジョンRPGと奥深いサバイバルアドベンチャーの融合に嗅覚が刺激されるゲームファンは多いだろう。スパイク・チュンソフトが新たに送る、尖ったゲームに関心を持った人は、手に取って損はないはずだ。

【PS4】ザンキゼロ

■ザンキゼロ
プラットフォーム:PlayStation®4/PlayStation®Vita
発売日: 2018年7月5日
価格: PlayStation®4 パッケージ版・ダウンロード版/7,200円+税
PlayStation®Vita パッケージ版・ダウンロード版/6,800円+税 ジャンル: ノンストップ残機サバイバルRPG
プレイ人数: 1人
CERO: D(17才以上対象)
開発: スパイク・チュンソフト/ランカース
(c) Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.
<公式サイト>
http://www.spike-chunsoft.co.jp/zaz/

※「PlayStation」は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標です。
※その他、記載されている会社名および製品名は、各社の商標または登録商標です。
※記載されている内容は、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。

PS4/PS Vita『ザンキゼロ』ゲーム紹介映像

■龍田優貴
ゲームの尻を追いかけまわすフリーライター。時代やテクノロジーと共に移り変わるゲームカルチャーに目が無い好事家。『アプリゲット』『財経新聞』などで執筆。
個人的なオールタイムベストゲームは「ファミコン探偵倶楽部」シリーズ。
Twitter:@yuki_365bit

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる