FODプロデューサーが語る、配信ドラマ作りの仕掛け 「“胸キュンもの”が溢れるプラットフォーム」

FODがオリジナルドラマを作る理由

 フジテレビが運営する動画配信サービスFODが業績を伸ばしている。その要因のひとつに挙げられるのが、FODが独自に制作し、現在31本が配信されているオリジナルドラマ。フジテレビの地上波で『のだめカンタービレ』や『最高の離婚』といった大ヒットドラマを手がけ、2016年6月にFODを運営する総合事業局コンテンツ事業センター企画担当部長となり、オリジナルドラマ『花にけだもの』や『彼氏をローンで買いました』などを企画・プロデュースする清水一幸氏に、FODがオリジナルドラマを作る理由についてインタビューを行った。(須永貴子)

10〜20代の女性に受け入れられることを意識したドラマ作り

ーーFODにおけるオリジナルドラマの位置づけを教えてください。

清水一幸(以下、清水):FODはもともと地上波の見逃し配信がメインのプラットフォームでしたが、ここ1〜2年は、戦略としてオリジナルドラマを増やしています。「プレミアム会員ドラマ視聴数ランキング」でもオリジナルドラマが占める比重が大きく、これからもユーザーに響くオリジナルドラマを増やしていきたいと考えています。

ーージャンルでいうと、圧倒的に少女マンガ原作のラブコメディが多いですね。

清水:はい。FOD全体のブランディングにもつながっていくことですが、FODは他サービスに比べて、10代〜20代の若い女性ユーザーが圧倒的に多いプラットフォームになっているので、頑張ってそこを狙っていきたい。デパートのようになんでもあるプラットフォームも魅力的ですが、現在のFODは、他サービスと差別化するために、強いところをより強くする時期。昨年度は14本ものオリジナルドラマを制作しました。1本あたりの予算は地上波ドラマよりも圧倒的に少ないですが(笑)。どれも、10〜20代の女性に受け入れられることを意識しています。

『グッドモーニング・コール our campus days』(c)高須賀由枝/集英社・フジテレビ

ーーそのユーザー層は、まさにテレビ離れをしていると言われる層に重なります。

清水:もともとフジテレビがその層に強いと言われていたこともあり、そこはメディアが違えど、その層に頑張ってボールを投げていきたいです。特に未成年のユーザーはお小遣いも限られているでしょうから、彼女たちが求める、ここでしか見られないオリジナル作品をちゃんと届けたいと思っています。

一度実写化された原作に、もう一度チャレンジした『きみはペット』

ーー清水さんが、フジテレビのドラマ班からFODに企画担当部長として異動されてきた時に、お題のようなものは与えられましたか?

清水:「オリジナル作品を作ってくれ」とは言われましたが、異動直後は正直、「何をやればいいのかな」という戸惑いもありました。僕が来る前から、FODは地上波のドラマとは違うドラマづくりの実績はありました。ただ、バジェットも小さいですし、役者さんも未知のメディアに尻込みをしますから、そこを徐々に開拓することから始めました。パイは小さいですが、まだ社内の目が届いていないので、自分の「やりたい」「良い」が通るありがたい状況でした。

『花にけだもの』(c)フジテレビジョン/エイベックス通信放送

ーー作品の多くは少女漫画原作のラブコメディです。膨大なリソースからどうやってドラマ化する作品を選んでいますか?

清水:人からのおすすめや、出版社からの売り込みにももちろん呼応しますが、単行本と雑誌をひたすら読みまくり、結局は勘で決めてます。なぜなら、僕みたいな40代のオジサンが少女漫画に対して「これ面白い!」「キュンキュンする!」「実写化しよう!」というスタンスでは気持ち悪いですから(笑)。配信ドラマのいいところの1つに、過去に一度実写化された原作に、敢えてもう一度チャレンジできることがあると思うんです。FODで言えば『いたずらなKiss』『きみはペット』『南くんの恋人』など。たとえばTBSが過去に作った『きみはペット』を、フジテレビが作るのはおかしいだろうという理由で、地上波は手を出さないと思います。でも、僕らがターゲットにしている若い女性ユーザーのほとんどは、TBSが制作した『きみはペット』をおそらく見たことがない層だと思うので、僕らが作った『きみはペット』が彼女たちにとっては初見になる。ということは、実写化済みの作品も、恥ずかしがらず、遠慮せずに作っていくことは、FODが立てるべき1つのアンテナだと考えています。

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