年末企画:成馬零一の「2016年 年間ベストドラマTOP5」

成馬零一の「2016年 年間ベストドラマTOP5」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2016年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマの三つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は地上波および配信で発表された作品から5タイトルを選出。第四回の選者は、リアルサウンド映画部で「成馬零一の直球ドラマ評論」を連載中のドラマ評論家・成馬零一。(編集部)

1. 逃げるは恥だが役に立つ
2. 真田丸
3. いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう
4. 火花
5. HiGH&LOW ~THE STORY OF S.W.O.R.D.~(シーズン2)

 面白いラブコメこそが、もっとも射程の広い連ドラになると証明した『逃げ恥』。ガッキーと星野源がひたすらかわいく、いっしょに「恋ダンス」を踊っても、仕事と恋愛の思考実験として見ても楽しい。同枠で放送された『重版出来!』(TBS系)も素晴らしく、今年は脚本家・野木亜紀子の年だったと言っても過言ではないだろう。

 『真田丸』は、史実を細部まで読み込んだ三谷幸喜の脚本の完成度が高く、大河ドラマ復活を印象付けた。森下佳子、中園ミホ、宮藤官九郎といった人気脚本家の当番が続くことを考えると、今後は朝ドラと同じような盛り上がりが、大河にも期待できる。

 『いつ恋』は、東日本大震災を間に挟んで描かれた恋愛群像劇。坂元裕二の総決算とでも言うべき恋愛ドラマの傑作だが、月9の恋愛ドラマにこだわったことで古さも出てしまった。その結果、後半になって脚本が迷走したのが残念だったが、意欲作として評価する。

 芥川賞を受賞したお笑い芸人・ピースの又吉直樹の小説を映像化した『火花』は、ドラマというよりは「500分の映画」とでも言うような作品。Netflixで全話一挙配信だったことやCMがなかったことも含めて、テレビからは出てこない硬派な作品。配信ドラマの可能性を一気に広げた。

 『ハイロー』は、ドラマ単体ではなく、映画やLIVEといったプロジェクト全てに対する評価。ダンスで鍛えられたEXILE TRIBEの肉体を活かしたギャングチーム同士の激しいアクションは見応えあり。MV的な作りで、とにかく映像がド派手。

 今年のドラマは、古い流れ(『真田丸』、『いつ恋』)と新しい流れ(『火花』、『ハイロー』)が衝突した年で、最終的に新旧の良いトコ取りに成功した『逃げ恥』が全てを持っていった。

 連続ドラマはナマモノなので、放送期間中にいかに盛り上げるかというライブ感が作品の完成度と同じくらい重要になる。そんな中、今年もっともライブ感を感じたのは『逃げ恥』だった。「恋ダンス」の盛り上がりも含めた動画サイトやSNSを宣伝にうまく取り込めたことも大きいだろう。今後はこういったネット対策は当たり前のものとなっていくのだろう。

 民放のゴールデンだけを見ていればよかった時代は終わりNHKドラマや深夜ドラマはもちろんこと、CSやBS、Netflixのようなサブスクリプションサービスも注目しないといけない時代となってきた。連続ドラマの放送形態は多様化しており、どこから傑作が飛び出すのかわからない状態が極まったのが2016年だった。

【TOP5で取り上げた作品に関連するレビュー】
人気絶頂の星野源、魅力は“こじらせ男のかわいさ”にアリ? 『逃げ恥』津崎役から考察
『いつ恋』最終話はなぜ“ファミレスでの会話劇”で幕を閉じた? 脚本家・坂元裕二の意図を読む
『HiGH&LOW THE MOVIE』混沌とした物語の高揚ーー“主役不在の超群像劇”はなぜ求められた?

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
『逃げるは恥だが役に立つ』
毎週火曜日よる10時~
製作著作:TBS
原作:海野つなみ「逃げるは恥だが役に立つ」(講談社“Kiss”にて連載中)
脚本:野木亜紀子
出演:新垣結衣、星野源、石田ゆり子、藤井隆、真野恵里菜、葉山奨之、古田新太、宇梶剛士、富田靖子ほか
プロデューサー:那須田淳、峠田浩、宮﨑真佐子
演出:金子文紀、土井裕泰、石井康晴
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/NIGEHAJI_tbs/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる