>  > 『スクール・ウォーズ』がいま蘇る意義

『スクール・ウォーズ』は今こそ再評価されるべきだ 大映の“熱い”作風と、長尺ドラマの豊かさ

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『スクール・ウォーズ』に溢れる作り手の気迫

 1984年から85年にかけて放送された伝説のドラマ『泣き虫先生の7年戦争 スクール・ウォーズ』(TBS系)がBlu-ray BOXで蘇る。

 主人公は、京都市立伏見工業高等学校ラグビー部の監督であり、元日本代表の山口良治をモデルにした滝沢賢治(山下真司)。本作は山口について書かれた馬場信浩によるノンフイクション『落ちこぼれ軍団の奇跡』(光文社文庫)を原作としているのだが、あらすじに関しては、オープニングが始まる前に流れる第3話以降のナレーションにまとまっているので引用する。

この物語は、ある学園の荒廃に闘いを挑んだ熱血教師たちの記録である。高校ラグビー界において全く無名の弱体チームが、荒廃の中から健全な精神を培い、わずか数年で全国優勝を成し遂げた軌跡を通じて、その原動力となった信頼と愛を、余すところなくドラマ化したものである。

 『スクール・ウォーズ』というと真っ先に思い出すのは芥川隆行のしゃがれた声で語られる、このナレーションである。これだけ簡潔かつエモーショナブルにドラマの内容を説明しきっているナレーションは他にないだろう。特に「余すところなく」という部分に作り手の気迫がうかがえる。

 麻倉未稀がパワフルに歌う映画『フットルース』の挿入歌として有名な「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO」の日本語バージョンにのって、当時の世相を反映する校内暴力のカットが次々と挟み込まれていくのだが、この映像を見ているだけでテンションがあがる。特に何度見ても驚くのが、高校の廊下を不良が運転するバイクで走る場面だ。

 そんな、校内暴力が吹き荒れる高校に、ラグビーの全日本代表選手を務めたことがある滝沢が、教師として赴任するところから物語がはじまるのだが、改めて見返して驚いたのは、覚えている名場面やキャラクターがたくさんある一方で、思っていたストーリーとは微妙に記憶と違っていたことだ。

20160520-ScoolWars-sub2.png第2回「泥まみれのニュースーツ」より

 サブタイトルにあるように、本作は滝沢が川浜高校に赴任してから野球で言うところの甲子園にあたる花園でラグビー部が優勝するまでを描いている。物語は全26話と2クール(6ヶ月)にわたって放送されたのだが、大きく分けると三部構成となっており、第一部(1~6話)は滝沢が赴任して一年目の出来事を描いている。描かれるのは荒れ果てた川浜高校で傍若無人にふるまう不良たちと向き合う姿だ。これは放送当時、社会問題になっていた「校内暴力」を背景としている。

80年代の「校内暴力」を描くそれぞれの視点

 テレビドラマに限らず、80年代の漫画や映画をみていると、いわゆる不良文化が当時の若者に大きな影響を与えていたことがよくわかる。それらの作品の多くは、不良の側から物語を描いており、学校は生徒たちを管理し、自由を奪おうとする悪役として描かれている。このあたり、60年代末に盛り上がり70年代に収束していった全共闘世代の学生運動の影響もあるのだろう。当事者たちには、そんな意識はなかったのだろうが、学生運動の挫折が、不良少年たちをヒーローに祭り上げたのだ。

20160520-ScoolWars-sub4.png第4回「開かれた戦端」より

 それに対して今の視点で振り返ったときに『スクール・ウォーズ』が、とてもユニークなアプローチに見えるのは、主人公が不良ではなく、彼らと必死に向き合おうとする教師ということだろう。

 物語冒頭、滝沢が赴任した川浜高校の校内は荒んでおり、トイレのドアは壊されたままで、窓ガラスは割れている。授業中に生徒たちが麻雀をしていても、報復を恐れて教師は叱ることもできない。まるでスラム街のようである。

 尾崎豊の「卒業」という曲に「夜の校舎 窓ガラス壊してまわった」という歌詞があるが、「割られる方はたまったものじゃない」と不良の暴力行為を英雄視する目線に対して批判的な意見を、ネット上で見かけることが多くなってきている。『スクール・ウォーズ』が描いているのは窓ガラスを割られる学校と教師、そして、窓ガラスを割る方の不良たちの成長である。

 面白いのは尾崎豊の『卒業』が発売されたのは1985年の1月21日と、『スクール・ウォーズ』が本放送されていた時期と重なっていることだ。同じ時期に窓ガラスを割る側と割られる側の視点の表現が出ていたことは、今考えると興味深いものがある。

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