成海璃子、池松壮亮、斎藤工が共演 『無伴奏』は“学生運動の時代”をどう描くのか?

 

 成海璃子、池松壮亮、斎藤工が共演する映画『無伴奏』の「特報」映像が公開された。

 「嵐の中に自分を駆り立てていかなければ発狂しそうだ」――成海璃子のモノローグも鮮烈な今回の「特報」映像。直木賞作家・小池真理子の半自叙伝的小説を、矢崎仁司が映画化することでも注目を集めている本作の舞台となるのは、学生運動華やかなりし頃の日本の地方都市――1969年の仙台だ。

 自らも学園紛争に関わるなど、多感な時期を過ごしていた女子高生・響子(成海璃子)は、怪しげな人物が集まるという名曲喫茶「無伴奏」で、大学生・渉(池松壮亮)と偶然出会い、恋に落ちる。時代の喧噪から距離を置き、同居人である親友・祐之介(斎藤工)とともに、のらりくらりと生きている渉。そんな彼と過ごすことによって、響子は初めて“恋”を知る。しかし、渉には“ある秘密”があり、それがやがて響子たちを思いもよらない悲劇へと――それから20年経った“現在”も、彼女の心を捉えて離さない、ある事件へと導いてゆくのだった。

 同時代の若者を描いた映画としては、山下敦弘監督の『マイ・バック・ページ』(2011年)や、若松孝二監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008年)などが記憶に新しいが、それらの映画が“学生運動”そのものを描いていたのに対し、今回の『無伴奏』は、そこから距離を置きながらも、確実に時代的な“熱”の影響下にあった若者たちの“生と性”を描いた作品になるようだ。そこで真っ先に思い起こされるのは、村上春樹の『ノルウェイの森』であり、それをトラン・アン・ユン監督が映画化した『ノルウェイの森』(2010年)だった。

 映画『ノルウェイの森』が、松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子という3人が演じていた人物を主軸に描かれていたように、『無伴奏』の主軸を担うのは、成海璃子、池松壮亮、斎藤工が演じる3人の登場人物と、その複雑な関係性である。これまで清楚で爽やかなイメージが強かった成海璃子が、それを覆すがごとく体当たりで演じているという「響子」。『海を感じる時』(2014年)、『紙の月』(2014年)といった作品で、当代随一の“ファムファタル”ならぬ“オムファタル”ぶりを披露している池松壮亮が演じる「渉」。そして、ドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』に出演して以降、“今、最も色気のある俳優”として、女性たちから高い支持を集めている斎藤工が演じる、物語の鍵となる人物、「祐之介」。彼女たちは本作で、どんな芝居を見せてくれるのだろうか。

 そんな3人の役者たちのアンサンブルもさることながら、本作の監督が矢崎仁司であることも忘れてはならない。女性同士の恋を描いたデビュー作『風たちの午後』(1980年)や、兄妹の恋を描いた『三月のライオン』(1992年)で、さまざまな“愛の形”を描いてきた矢崎。近年では、『ストロベリーショートケイクス』(2006年/原作・魚喃キリコ)、『スイートリトルライズ』(2010年/原作・江國香織)、『太陽の坐る場所』(2014年/原作・辻村深月)など、女性作家による物語を原作とした映画でも定評の高い彼は、自身とほぼ同性代である小池真理子の半自叙伝的小説から、果たしてどのようなエッセンスを抽出し、それをどう映像化してゆくのだろうか。大いに気になるところである。

 映画『無伴奏』は、2016年春、全国ロードショー公開。

(文=麦倉正樹)

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(C)2015「無伴奏」製作委員会

■公開情報
『無伴奏』
2016年春、新宿シネマカリテ他全国ロードショー

出演:成海璃子/池松壮亮/斎藤工
監督:矢崎仁司
原作:小池真理子『無伴奏』(新潮文庫刊、集英社刊)
脚本:武田知愛 / 朝西真砂
配給:アークエンタテインメント
製作:「無伴奏」製作委員会
公式HP:http://mubanso.com
仕様:2015年/日本/カラー/16:9/5.1ch/132分/R15+
(C)2015「無伴奏」製作委員会
製作国:日本 / 製作年:2015
上映時間:132分 / 映倫区分:R15+

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