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『愛をあるだけ、すべて』インタビュー

KIRINJI堀込高樹が語る“サウンドを刷新し続けることの重要性”「最近の音楽は未知で驚かされる」

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「新しい音楽に刺激を受けても、絶対にそうはならない」

ーーメンバーのみなさんにも「できれば曲を書いてほしい」みたいな話をしてるんですか?

堀込:一応「何か書けたら持ってきてください」とは言っています。千ヶ崎くんはわりと積極的に書いてきてくれますね。目指しているアルバムのカラーだったり、KIRINJIの立ち位置みたいなものを把握して、バランスを取りながら作ってくれるんですよね、彼は。今回もそう。比較的ポップな曲が多かったから「こういうのもあったほうがいいんじゃない?」という感じで持ってきてくれたのが「悪夢を見るチーズ」だったので。

ーーメンバーそれぞれのセンスも活かされているし、アイデアの引き出しが増えているのでは?

堀込:開けなくてもいい引き出しもあるんですけどね(笑)。このメンバーで始めたばかりの頃は、とにかく全部の引き出しを開けていました。カントリーもあればニューウェーブっぽいものもあれば、クラシカルなものもあって。ライブも制作もそんな感じだったんだけど、メンバーの個性がわかってくるにつれて「この引き出しは必要ないな」ということがわかってきたというか。

ーーなるほど。個人的には「新緑の巨人」にもっともグッときました。

堀込:ありがとうございます。ダジャレみたいなタイトルで損するかもしれませんが(笑)。

ーー(笑)。特にサビの〈消え去れ/俺のメランコリー〉という歌詞は素晴らしいなと。

堀込:それも年齢がらみの話なんですよね。3月、4月、5月くらいの気候が良くなる時期って、うつ病が発生しやすいらしいんです。気温の変動が激しいことと新しい環境に適応しなくちゃいけない状況が重なって、メンタルをやられる人が増えるというか。特に危ないのが僕くらいの年齢の人らしいんですよね。それは自分にも思いあたるフシがあって、春はどうも調子が悪い。“木々は芽吹いているんだけど、気持ちはすぐれない”という感情がこの曲のモチーフですね。

ーーアルバムの最後に収録されている「silver girl」は唯一のストレートなラブソング。

堀込:“男女の歌がいいかな”くらいで、そんなに大したことは歌ってないんですけどね(笑)。“silver girl”はポール・サイモンの「明日に架ける橋」の歌詞にある言葉なんです。ガールフレンドの頭に白髪があるのを見つけて、「君は“silver girl”だね」とポール・サイモンが言ったという話もあって。そこからヒントを得て、その年代の男女の歌を書いてみようと。〈黒髪の中に ひとすじ/銀色の細いリボンが光る〉はまさにそういう表現なんだけど、まあ、そこに気付かなくても「キラキラした歌だな」と思ってもらえれば(笑)。

ーー『愛をあるだけ、すべて』というアルバムタイトルについても聞かせてください。これは「時間がない」の最後のフレーズですね。

堀込:いままでのアルバムは(『11』『ネオ』など)ひと言だけのタイトルだったから、そろそろ目新しいタイトルにしたいなと思って。この歌詞はすごく印象的だったし、掴みになるフレーズだったんですよね。深い意味は別にない……と言うとヒドイですけど(笑)。このタイトルをもとにしたコンセプトアルバムだと思う人もいるんですけど、そういうつもりもないんですよ。

ーーKIRINJIは今年でメジャーデビュー20周年。この20年で音楽シーンの状況は様変わりして、ポップミュージックのトレンドも動き続けていますが、それは堀込さんのポップス観にも影響を与えているんでしょうか?

堀込:世間のことはよくわからないですが、自分がやっていることに関して言えば、メロディとハーモニーが特徴だと思っていて。いろいろスタイルは変わっているし、音のコーティングの仕方も時期によって違いますが、基本になるところはずっと押さえているつもりなんですよね。いきなりダンスミュージックやヒップホップ、ラップをやったりはしないし、やっぱりメロディと和声が自分の特徴じゃないかなと。

ーーもちろん流行との距離も測りながら?

堀込:そうですね。今回のアルバムもそうなので。ただ「トレンドだから」というよりも、そういう音楽を自分が好きになったことが大きい気がします。たとえばボズ・スキャッグスが好きだったとしても、10代頃からずっと聴いてたら飽きるじゃないですか(笑)。もちろんいま聴いても“いいな”と思うんだけど、それは耳に慣れているというだけの話だし、そこから刺激を受けることはもうないので。最近の音楽は未知のものだし「なんだこれ?」と驚かされることも多い。そこからヒントを得られることもあるし、新しい音楽を作るための発奮材料になるんですよ。

ーーなるほど。

堀込:でも、新しい音楽に刺激を受けて曲を作っても、絶対にそうはならないんですよね。「俺もカシミア・キャットみたいな音楽をやりたい!」と思ったところで、これまで積み上げてきたクセみたいなものあるし、同じような感じにはらないので。それが自分の限界なのかもしれないけど、「ちょっとおもしろい曲ができたな」というのが楽しいというか。そう言えば、今回のアルバムの制作中にエンジニアと去年出たカルヴィン・ハリスのアルバム(『Funk Wav Bounces VOL.1』)の話をしていたんですよ。ダンスミュージックだけどポップスでもあり、ラップも入っていて。リスニングとしてちょうどいいというか、聴いていてすごく心地いいし、いろんな要件をバランスよく満たしているんですよね。ああいう音楽をやるということではなく、「あのアルバムの在り方はいいよね」ということなんですけど。

ーー去年のサマーソニックでカルヴィン・ハリスが『Funk Wav Bounces VOL.1』の曲をほとんどプレイせず、EDMパーティモードで押し切ったことも話題になりました。おそらくスタジアムのオーディエンスを盛り上げることに集中したのだと思いますが、リスナーから求められるものと音楽家としてやりたいことのバランスについてはどう考えていますが?

堀込:KIRINJIのお客さんが好きなものはザックリわかっているつもりです。1stアルバム(『ペイパードライヴァーズミュージック』/1998年)みたいなサウンドをやれば「わー嬉しい」となると思いますけど、ただ、こっちの情熱はそこにはないですからね。テクニックで作ることはできるだろうけど、情熱がないから、そんなにいいものにはならいないだろうなと。体裁を整えるだけではなく、自分がグッと入り込めればと熱量のあるもの、芯を食った音楽はできる気がしますね。そういうことはプロとしてある程度のキャリアがある人は思案していると思いますけど、リスナーから求められることだけをやっているとクリエイティビティは下がっていくので。やっぱり情熱を傾けながら作品を作らなくちゃいけないなと。

ーーアルバム『愛をあるだけ、すべて』も軸にあるのは堀込さんの「こういう音を作りたい」という欲求ですからね。しかも行間からKIRINJIらしさが滲み出ていて。

堀込:さっき言ったようにメロディとハーモニーはそんなに変わってないと思うので。「AIの逃避行 feat.Charisma.com」みたいにシンセが効いたダンストラックであっても、メロディ、ハーモニーは自分というか。そういうところで受け入れてもらえているんだろうなと思いますね。

(取材・文=森朋之/アーティスト写真撮影=Yosuke Suzuki)

■リリース情報
『愛をあるだけ、すべて』
発売:2018年6月13日(水)
価格:初回限定盤(SHM-CD+DVD)¥3,996(tax in)
通常盤(SHM-CD)¥3,240(tax in)

<CD収録内容>
1. 明日こそは/It’s not over yet
2. AIの逃避行 feat. Charisma.com
3. 非ゼロ和ゲーム
4. 時間がない
5. After the Party
6. 悪夢を見るチーズ
7. 新緑の巨人
8. ペーパープレーン
9. silver girl

<初回限定盤DVD収録内容>
AIの逃避行 feat. Charisma.com 〈Music Video〉
時間がない 〈Music Video〉

■イベント情報
KIRINJI ニュー・アルバム『愛をあるだけ、すべて』リリースイベント
場所:タワーレコード新宿7Fイベントスペース
開催日時:2018年6月17日(日) 18:00 START
場所:タワーレコード新宿 7Fイベントスペース
内容:トーク&サイン会
当日の参加メンバー:堀込高樹、田村玄一、千ヶ崎学 (予定)
※参加メンバーは変更になる可能性もございます。ご了承ください。

■ツアー情報
『KIRINJI TOUR 2018』
7月14日(土) 福岡・スカラエスパッシオ
7月19日(木) 大阪・梅田クラブクアトロ
7月20日(金) 名古屋・クラブクアトロ
7月25日(水)、26日(木) 東京・渋谷クラブクアトロ (SOLD OUT)
詳しくはこちら

■関連リンク
KIRINJI公式サイト
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ユニバーサルミュージック KIRINJIサイト

      

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