“ボーカリスト”佐藤流司から目を離せないーーバンドプロジェクトThe Brow Beat野音ライブを見て

佐藤流司は目を離せないボーカリストだ

 ミュージカル『刀剣乱舞』や舞台&TVドラマ『御茶ノ水ロック』(テレビ東京系)など俳優として人気上昇中の佐藤流司。彼がアーティスト、Ryujiとして結成したバンドプロジェクト、The Brow Beatが5月3日に日比谷野外大音楽堂でワンマンライブ『Extra“Ragnarök”~Welcome to after party at 野音~』を開催した。2018年1月1日にリリースした1stアルバム『ラグナロク』を携えた初のツアーに続き、野音のチケットもソールドアウト。立ち見のファンも大勢詰めかけた。

 グッズのショッキングピンクのタオルが目立つ会場の中、ステージにスモークがたかれ、サポートメンバーのかどしゅんことかどしゅんたろう(Dr)、CHIROLYN(Ba)、鳴風(Gt)が登場、最後にRyujiが姿を現すと熱狂的な大歓声。のっけから爆音で投下されたのはRyujiがトータルプロデューサーであるPENICILLINのHAKUEIと出会うきっかけとなった曲「日本」(流司が出演していた學蘭歌劇「帝一の國」シリーズの主題歌。HAKUEIが書き下ろした)だ。スピード感たっぷりの和風パンクなナンバー「ジセイノク」では上手、下手へと動きまわりながら熱いボーカルを叩きつけた。

 2月に開催されたROPPONGI EX THEATERでのツアーファイナルでも感じたことだが、Ryujiの魅力は自身の想いを躊躇なく吐き出す熱量の高さと楽曲のメッセージを伝えようとする意識が明確なことだ。数々の舞台経験がそうさせるのかもしれないが、言葉が音に埋もれずに届いてくる。

 「The Brow Beatです! 元気してました? マジメな話、今日は一生忘れられない思い出の日になると思うので、みなさんも今日が忘れられなくなるように盛り上がってほしいし、俺に忘れられない日にしてほしいと思います」

 そう宣言した後、野音の空気を解きほぐすように面白クイズを出して沸かせ、Ryujiが作詞を手がけた「アイリス」では出だしの<オレンジの空を見上げて>という歌詞で空を指差してみせた。赤の照明に染まったステージで「声出して行こうぜ!」と叫び、客席のみんなの叫ぶ声が響きわたったのは<暴れる鼓動 解き放て>と歌う「scarlet syndrome」。眠れない夜なんて数え切れないと歌うバラード「unlost」では棘が刺さってくるような生々しい歌を届けた。

 あたりを見渡し「やっと暗くなってきましたね」という言葉の後にCHIROLYNが晴れ男だと話し、「雨降れっつーの!」(数日前の天気予報では5月3日は大荒れだった)と悔しがるRyujiに“さては嵐の野音を期待していたな”とばかりに場内からは笑いが起きた。

 ライブの中盤はカバーセクション。数日前にhide没後20年メモリアルライブイベントに行き、少年の頃から好きだったhide with Spread Beaver(ベースはCHIROLYN)のライブを見て涙が出そうなぐらい感動したことに触れ、ピンクのタオルが振られる光景の中、CHIROLYNのシャウトで始まる「ピンクスパイダー」を披露。続いてトータルプロデューサーのHAKUEIを呼んでのライチ☆光クラブのカバー「凶星エクスタシー」では、不埒なロックスター然としたHAKUEIに野音の空気がいきなり妖しげに変わり、Ryujiと背中合わせで歌って絡む場面では狂喜の歓声が飛んだ。そのテンションを途切らせることなく、Ryujiが「サーカスへようこそ!」とシャウトし、配信されたばかりのムーディなシャッフルナンバー「CLOWN」をHAKUEIとデュエット。場内は興奮に包まれた。

 メンバー紹介をはさみ、HAKUEIと共作、世代を超えて共鳴しあう「Black&Black」を披露し、終盤はファスト&ヘヴィなナンバー「パラノイド・スター」でヘドバンしまくって暴れ倒し、ラストナンバーは野音の空にゴールドのテープが舞った開放感たっぷりの「Browbeat」。

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