ユーミン45周年記念ベストは“CD文化”の重要なサンプルに 付属ブックレットのコンテンツ力に注目

参考:2018年5月7日付週間アルバムランキング(2018年4月23日~2018年4月29日・ORICON NEWS)

 1位・Kis-My-Ft2、2位・和楽器バンド、3位・MONSTA X、4位・『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のサウンドトラック、と初登場作が並んだ今週のチャート。ジャニーズ事務所のグループ、もともとボカロ文化と親和性のあるグループ、韓国発のボーイズグループ、ゲームのサントラ(しかも211曲収録の5枚組)と、いわゆる「音楽好き」の観測範囲からは外れがちな顔ぶれが並んでいるが、今の日本の「CD文化」を考える際にはこういった「音楽+αの文脈を持った存在のCDこそ売れる」ということを理解しておかなければならない、そんなことを教えてくれているかのようなラインナップである。

松任谷由実『ユーミンからの、恋のうた。』(通常盤)(3CD)

 「CD文化」、すなわち「音楽をパッケージで売る/買う文化」について思いを馳せるうえでの重要なサンプルとなりそうなのが、4月11日にリリースされて今週は前述の面々に続いて5位にランクインしている松任谷由実の『ユーミンからの、恋のうた。』である。 彼女の45周年記念ベストアルバムでもある今作は、2012年11月にリリースされた『日本の恋と、ユーミンと。 The Best Of Yumi Matsutoya 40th Anniversary』に収録されていない楽曲(ユーミン自身が今聴いてほしい楽曲を選んだとのこと)が全45曲収録されている。

 アルバムの出自として「裏ベスト」とでも言うべき作品なので、いわゆる超有名曲は今作には収録されていない。そういった縛りで45曲という大量の楽曲を集めても作品としての品質が担保されているところに、大ベテランアーティストとしての凄みを感じる。彼女が1970年代から日本のポップミュージックにおいて新しい価値を提示してきた存在であることはよく知られているが、今改めて「September Blue Moon」「雪だより」「ふってあげる」あたりの収録曲を聴くと、ここ数年盛り上がっていた「シティポップ」と呼ばれる流れとのつながりを感じることができる(言うまでもないことだが、彼女自身が往時のシティポップと呼ばれた動きの中の登場人物の一人である)。

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