lynch.が再び”完全体”となるーー幕張メッセ公演前に、逆境乗り越えてきた13年の軌跡を振り返る

強く結ばれた絆とその始まり

 昨年12月31日に行われたカウントダウンライブのアンコールで大麻取締法違反による逮捕のため2016年12月に脱退したベーシスト・明徳の復帰を発表したlynch.。明徳がいない間も新たなメンバーを加入させることなく、人時(黒夢)をはじめとする豪華なサポート陣を招き、葉月(Vo)曰く「穴の開いた状態で進む」(Twitterより)と、その席を空けて活動を止めることなく進んできたlynch.が再び完全体となる。

lynch.『BLØOD THIRSTY CREATURE』(通常盤)

 明徳の正式な復帰は3月11日の幕張メッセ公演からとなるが、この13周年公演を目前にした今、彼らのこれまでの軌跡を振り返りたいと思う。

 lynch.の13年間は決して順風満帆なものではなかった。もちろんメンバーが“このバンドを終わらない/誰も辞めさせないバンドにする”という意志のもと始めたというのもあるが、彼らと、ファンクラブ「SHADOWS」のメンバーをはじめとするファンが手を取り合ってその紆余曲折の13年間を乗り越えてきたからこそ今回の一件でもバンドの活動を止めることなく、いつでも明徳が帰ってこられるよう場所を用意して待つことができたのだと私は考える。lynch.というバンドは爆発的にセールスが伸びたり、動員が増えたわけではない。周りのバンドが凄まじい速度で遠い存在になるのを横目に、泥水をすすりながら、地に足をつけ、着実に自分たちにできることと向き合ってきたバンドだ。lynch.は2004年に結成され、当初から“ヘヴィでメロディが立っている音楽”を標榜し、活動を続けてきた。そんな中2007年にリリースしたアルバム『THE AVOIDED SUN』はlynch.というバンドの音楽性をより確固たるものにし、彼らが目指すべき指標を示した音源となっている。このアルバムに収録されている「I’m sick, b’cuz luv u.」や「liberation chord」を制作したことで、メンバーの中でも激しいものの中にメロディアスな部分があるというベースをもとに、キャッチーとコアの融合というlynch.の音楽の核となるものが確立されたと話している。そして『THE AVOIDED SUN』リリースの翌年に彼らの一つ目の転機が訪れる。2008年にリリースされた「Adore」(=愛)は、文字通りlynch.が彼らのファンとの絆を歌ったものである。

心に揺れて離れないまま輝きの中へ
強くほら手を伸ばして
ねぇここから今が始まり
死ぬまで止まらないだろう
共に叫び謡う声のもとで

 共に手をとりどこまでも行こうという、lynch.とファンの物語はここから始まったと言っても過言ではない。この曲でlynch.の知名度は急上昇し、彼らの代表曲となった。『THE AVOIDED SUN』でバンドとして音楽の核が明確になり、それが結実した「Adore」でリスナーに広く知れ渡ることとなったこの一連の経緯が一つ目の転機であったといえるだろう。

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