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クラシックとポストクラシカルの違いは? “鍵盤王”ニルス・フラーム来日公演前におさらい

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 日本でも静かなブームになりつつあるポストクラシカル。このジャンルを代表するドイツのピアニスト、ニルス・フラームが5月に来日、東京と大阪でライブを行う。

 近年、日本においては、映画の音楽でポストクラシカルの作曲家の多くが知られるようになった。 例えば、この旗手的存在で先日亡くなったヨハン・ヨハンソンは映画『ボーダーライン』(2015年)、『メッセージ』(2016年)などの音楽を作曲。ヨハンソンと並ぶ存在のマックス・リヒターは映画『めぐり逢わせのお弁当』(2013年)を、イタリアの大御所、ルドヴィコ・エイナウディは『最強のふたり』(2011年)のほか、昨年は是枝裕和監督の『三度目の殺人』のメインテーマを作曲している。

 このように、映画館で耳にする音楽として知られ始めたポストクラシカルだが、残念ながら日本では彼らのライブに触れる機会は非常に少ない。5月のニルス・フラームの公演は、本場ヨーロッパのポストクラシカルの「生」に触れられる貴重な機会だ。

Nils Frahm – Montreux Jazz Festival 2015

そもそも「ポストクラシカル」とは?

 さて、ポストクラシカルとはどのような音楽ジャンルなのだろうか?  「ポストクラシカル」という言葉は、マックス・リヒターが自身の音楽について述べたことがその由来だ。彼は雑誌『CDジャーナル』(2015年11月号)の中で以下のように語っている。

「もともと「ポスト・クラシカル」は、マスコミ向けの一種のジョークとして使ったのが最初なんです。当時、マスコミは我々の音楽のことを「ネオ・クラシカル」と呼んでいた。でも、私なんかが“ネオ・クラシカル”と聞くと、プロコフィエフやストラヴィンスキーなど、20世紀前半の新古典主義を連想してしまうんですよ。だから「我々の音楽は新古典主義ではない」という意味で、冗談半分に思いついたのが「ポスト・クラシカル」だったんです」(ユニバーサルミュージック オフィシャルサイトより)

 リヒターが、クラシック音楽の嫡流である「近現代音楽」との区別を図ってこの言葉が生まれ、次第に広がっていったようだ。では、クラシックと、ポストクラシカルは、どこが違うのだろうか?

 一つ目は「聴きやすさ」である。クラシック音楽が20世紀に入り、調性をなくしたり、複雑なリズムが採用したりと実験的・前衛的に進化していく中、ポピュラーミュージックに慣れ親しんだ一般人にとって、非常に難解な存在になってしまった。クラシック音楽ファンであっても、多くは19世紀のロマン派以前に作曲された音楽(モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン等)を好む傾向がある。20世紀の現代音楽は、クラシック音楽ファンであっても聴かれる機会が極めて少ない。

 一方、ポストクラシカルは、クラシック音楽ファンでなくても楽しめる間口の広さを持っている。19世紀以前のクラシック音楽が本来持っていた聴きやすさ、心地よさを復権している。例えば、ドイツ人の現代音楽の大作曲家であるカールハインツ・シュトックハウゼンが1950年代に作曲した管弦楽曲「グルッペン」と、同じくドイツ人のマックス・リヒターの2002年の作品「November」を聴き比べてほしい。歴然とした違いが聴き分けられるはずだ。

Karlheinz Stockhausen, Gruppen – Ensemble intercontemporain
November – Memoryhouse (2002)

 二つ目は「音響」への姿勢だ。クラシック音楽が一般的にアコースティックの響きにこだわるのに対して、ポストクラシカルはアコースティックの響きを大切にしつつも、積極的に電子音や「打ち込み」(コンピュータ・プログラミング)を活用している点が挙げられる。クラシック音楽の演奏会は、アコースティックの響きを重要視するため、たとえ大編成のオーケストラであってもキャパシティに限界がある。一方、ポストクラシカルのライブは、積極的に音響機材を活用するため、スケールの大きなフェスにも対応することが可能である。

 三つ目は「他ジャンルとの融合と多様性」である。1960年代末、ロックの新しいムーブメントとして、クラシック音楽の思考性やジャズの即興性を取り入れた「プログレッシブ・ロック(通称:プログレ)」が生まれた。中でも、Emerson, Lake & Palmerはバルトークのピアノ曲「アレグロ・バルバロ」や、ムソルグスキーの「展覧会の絵」などをアレンジ。キーボーディストのキース・エマーソンの超絶技巧の演奏により、壮大かつ重厚なコンセプトアルバムを作り上げた。

 その点において、ポストクラシカルは、プログレのクラシック音楽版といえるかもしれない。ヨハン・ヨハンソンは90年代はパンクロック、ゼロ年代前半はハウスミュージックのミュージシャンだった。クラシックの若手ピアニスト、アリス=紗良・オットとの共作『ショパンプロジェクト』のリリースで知られるオーラヴル・アルナルズも、もともとはハードコア、メタルバンドのドラマーであった。彼らの音楽は、クラシック音楽の素養を活かしつつ、アンビエントやハウスミュージックのエッセンスを取り入れた「プログレッシブ・クラシック」とも言えるだろう。

 以上が、ポストクラシックシーンの特徴だ。

      

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