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けやき坂46は“無謀な挑戦”に打ち勝った 西廣智一が武道館3Daysを分析

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 「100年待てば」が終わると、佐々木久美の「まだステージに出ていない9人がいますよね?」と2期生をステージに呼び込む。すると、2期生はダンストラックに乗せて一人ひとりソロダンスを披露しながらステージに現れ、全員揃ったところで乃木坂46の「おいでシャンプー」をパフォーマンス。この選曲には多くのファンが驚いたようで、会場には驚きと喜びが入り混じった歓声が響き渡る。特にこの曲は9人という人数が絶妙にあっており、メンバーは3人ずつに分かれて歌い踊る。なお、2期生の歌唱楽曲も日替わりとなっており、31日公演では「君の名は希望」、1日公演では「制服のマネキン」という同じく乃木坂46の代表曲が歌われ、「君の名は希望」では小坂菜緒、「制服のマネキン」では渡邉美穂がそれぞれセンターを務め、会場を沸かせた。

 そのあとは、1期生と2期生の総勢20人による「NO WAR in the future」へ。すでに昨年の幕張公演でも披露済みの1曲だが、今回ようやく20人全員が揃ったこともあってか、前回以上の迫力が感じられた。人数が倍近くに増えたことで一人ひとりの見せ場が減るかと思いきや、この曲ではそれぞれの個が立っているように感じられるから不思議だ。そして、1期生の中に入っても2期生がまったく見劣りしないのも興味深い。先の乃木坂46カバーの時点で昨年12月からの短い期間でルックスにもスキルにもさらに磨きがかかっていることは実感できたが、1期生の中に混じるとまた違った見え方もするから、本当に面白い。もちろんダンスなどの技術面ではさらなる練習が必要かもしれないが、現時点でここまでのものが見せられるという点ではこの先が楽しみでならない。

 2期生のみによる微笑ましいMCを経て、ライブは後半戦に。フォーキーな「それでも歩いてる」、フレッシュな「永遠の白線」とけやき坂46楽曲が連発されていく。「永遠の白線」では歌詞に沿って野球部員の格好をしたダンサーもフィーチャー。さらに、曲中ではメンバーがカラーボールをバットで打って客席に飛ばすなど、アイドルのライブらしい演出も用意された。

 齊藤京子と高本彩花のやりとりが見どころの「手を繋いで帰ろうか」は、もはやけやき坂46のオリジナル曲と錯覚するぐらいに自分たちのものにしてしまった感が強く、この曲が始まると観客の熱気も一段と高くなるのも今や恒例となりつつある。31日公演および1日公演では開場時間を使ってスクリーンに、齊藤京子&高本彩花によるこの曲の振り付け講座映像が上映されたこともあって、特に同2公演では観客との一体感は30日公演よりも高まっていたように感じられた。

 そこからキラーチューン「誰よりも高く跳べ!」へとなだれ込むのだが、ライブを重ねるごとに盛り上がりの最高値を更新し続けるこの曲では、今回の3日間でもさらなる奇跡を目撃することとなった。曲中、メンバー1名(30日は柿崎芽実、31日は佐々木美玲、1日は佐々木久美)がワイヤーを使って宙高く跳び「ここまで跳べーっ!」と叫ぶのだが、この演出が盛り上がりにさらに拍車をかけ、最終日には会場が過去最大の歓声と最高の熱気に包まれた。そこから本編ラスト曲「太陽は見上げる人を選ばない」へと続く構成は、もはや鉄板というべきセットリストで、観客との大合唱とともに最高のエンディングを迎えることができた。曲が終わると、大道芸人やダンサーたち一同がステージに再登場し、ショーのエンディングを告げるように全員で挨拶。最後にけやき坂46 1期生がステージ上段に移動し、幕が降りるなか客席に手を振り続けた。

 まるでストーリー仕立てのエンタテインメントショーを観るかのような今回のけやき坂46のステージは、欅坂46が昨年夏の全国アリーナツアー『真っ白なものは汚したくなる』で提示したスタイルとは表現方法こそ異なるものの、その軸にある「観るものをショーの世界に引き込み、楽曲の世界観にひたらせる」という方法論には共通するものがあるように感じる。それを表現する人間、楽曲が異なることにより、その見せ方、見え方がここまで大きく変わるのかと思うと、改めて欅坂46とけやき坂46という2組のグループがそれぞれ独自の道を歩み始めているのだということに気づかされた。そういった意味でも、今回のけやき坂46の新たな挑戦は大成功だったのではないかと、個人的には感じている。

 さて、ここからアンコールではどんなステージを見せてくれるのかと待っていると、突如スクリーンには「2016年5月8日 1人から12人へ」の文字が。長濱ねる加入から始まった、けやき坂46の今日までの軌跡がまとめられた映像が上映されていく。決して順風満帆ではなかったその道のりが紹介され、「漢字のアンダーなんて言わせない イマニミテイロ」と文字が浮かび上がると、会場からはどよめきの声が沸き起こる。この声に続いてステージに現れたけやき坂46 1期生は、神妙な面持ちで本邦初披露の新曲「イマニミテイロ」を歌唱。急遽決まった武道館3DAYS公演に向かう彼女たちとリンクするかのような歌詞と、<イマニミテイロ どういう色だ?>という独特の表現が耳に残るこの曲は、彼女たちの新たな境地を伝える重要な1曲になるのではないだろうか。

 この曲を歌い終えたあと、佐々木久美は新曲についてコメントするのだが、特に最終日は歌詞の内容にちなんで「最初は(武道館3公演という)そんな大役は務められないと、ネガティブに考えてしまって。でも、ライブこそが自分たちの色を出せる場所」と、前向きな気持ちで本公演に臨めたことを吐露した。そして最終日はこのあと、メンバーへのサプライズとして武道館3日間のドキュメント映像が上映され、彼女たちへの労いの言葉とともに“次なる試練”としてけやき坂46単独アルバム発売がアナウンスされた。この驚くべき発表に、彼女たちは大号泣。メンバーの何人かは、以前からインタビューで「ひらがな単独でCDを出せるようになれたら」とコメントしていたが、「こんなにも早く夢が叶うとは思ってなかった」(佐々木久美)と涙ながらに喜びを口にした。

 ライブはこのあと、影山優佳の絶叫とともに「世界には愛しかない」へと続くのだが、特に最終日は影山によるポエトリーリーディングが非常にエモーショナルで、平手友梨奈による原曲のそれとはまったく異なるカラーを打ち出していた。このように書くと「原曲のイメージ台無し」などと嘆くファンもいるかもしれないが、筆者はどちらが正解でどちらのほうが良いとは言い切れない、それぞれに独特の色がある、ふたつの「世界には愛しかない」が存在する、それでいいのではないかと思っている。それくらいけやき坂46版「世界には愛しかない」は、すでにオリジナリティが感じられるものへと進化しているのだから。

 そして、ライブのエンディングには欠かせない「W-KEYAKIZAKAの詩」で会場の一体感をさらに高める。この曲でステージ上のメンバーのみならず、客席のファンからも笑みがこぼれる中、ライブは幕を降ろした。30日、31日はここでライブは終了するのだが、最終日はさらにアンコールを求める声が大きくなっていき、これに応えるようにメンバーがダブルアンコールで登場。ライブの盛り上がりに欠かせない「誰よりも高く跳べ!」をもう一度パフォーマンスすると、会場は3日間で一番の熱気に包まれる。同日のライブ本編で披露された「誰よりも高く跳べ!」の際にけやき坂46史上最高の盛り上がりを体感したと思ったら、ここでさらにその盛り上がりを更新してしまう。それは伝説の一夜と呼ぶにふさわしいパフォーマンスだった。

 30日の初日公演を観終えたとき、最初に書いた「11人全員揃っての全国ツアーファイナル」の仕切り直しなんてことをすっかり忘れていた。それくらい充実した内容だったし、満足度の高いライブだったのだ。筆者はこの歴史的な状況を目撃しようと3公演すべてに足を運んだが、正直2日目の31日公演が始まる直前は「セットリストも数曲のみ変わるだけで、基本構成は一緒。初日と同じような気持ちで楽しむことができるだろうか?」と不安だったが、そんな心配が無用なくらいに楽しめたし、前日とは違った力の入れ具合やパフォーマンスの微調整が至るところから感じられた。そして最終日の気迫と熱量は、過去2日以上のもの。あれだけ全身全霊のステージを連日繰り広げているのだから、最終日には疲れが見え隠れしても不思議ではないところを、彼女たちはまったくそんな素ぶりを見せない。そんなところからも、けやき坂46のプロ意識の高さと、この3公演にかける強い思いが伝わってきた。

 確かに欅坂46と比較すれば、けやき坂46の一般的知名度は低いし、そんな彼女たちが武道館を3日間満員にすることができるのか、それは無謀ではないかと思われても仕方ない。しかし、彼女たちはその「無謀だと思われた挑戦」に見事打ち勝った。いや、打ち勝つだけでなく、我々の想像をはるかに超えるくらいの成長ぶりと底力を見せてくれた。そんな彼女たちが今、このタイミングに単独でアルバムをリリースするのは必然ではないだろうか。アルバムの内容がどうなるのかは現時点では不明だが、少しでも彼女たちだけのオリジナル曲が増えることで武器もさらに増えるだろうし、それによって見せ方のバリエーションもさらに増えるだろう。そして、単独CDを発表すればけやき坂46だけでの露出の機会も増える。今はまだ低いであろう一般的知名度もこの先高まっていくはずだし、それによって彼女たちの楽曲やライブにより注目が集まる。そのときは、今回の武道館3公演をさらに上回るパフォーマンスを見せるくらいにまで成長しているのではないだろうか……そんな期待を持ちつつ、けやき坂46が今後どこまで高く跳んでいくのかを見守りたい。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

『けやき坂46 日本武道館 3Days』
2018年1月30日〜2月1日 日本武道館 セットリスト

00. OVERTURE
01. ひらがなけやき
02. 二人セゾン
03. 僕たちは付き合っている
04. 語るなら未来を…
05. 東京タワーはどこから見える?
06. 少女には戻れない(1月30日のみ)
  / バレエと少年(1月31日のみ)
  / AM1:27(2月1日のみ)
07. ここにない足跡(1月30日のみ)
  / 僕たちの戦争(1月31日のみ)
  / 青空が違う(2月1日のみ)
08. 猫の名前
09. 沈黙した恋人よ
10. 100年待てば
11. おいでシャンプー(1月30日のみ)
  / 君の名は希望(1月31日のみ)
  / 制服のマネキン(2月1日のみ)
12. NO WAR in the future
13. それでも歩いてる
14. 永遠の白線
15. 手を繋いで帰ろうか
16. 誰よりも高く跳べ!
17. 太陽は見上げる人を選ばない
<アンコール>
18. イマニミテイロ(新曲)
19. 世界には愛しかない
20. W-KEYAKIZAKAの詩
<ダブルアンコール(2月1日のみ)>
21. 誰よりも高く跳べ!

      

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