>  > 『クジラの子らは砂上に歌う』劇伴秘話

『TVアニメ「クジラの子らは砂上に歌う」 オリジナルサウンドトラック 心(きろく) ~Record~』インタビュー

鳥取砂丘でサンプリングも……堤博明が語る『クジラの子らは砂上に歌う』劇伴制作秘話

関連タグ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 アニメ『クジラの子らは砂上に歌う』のサウンドトラック『TVアニメ「クジラの子らは砂上に歌う」 オリジナルサウンドトラック 心(きろく) ~Record~』が1月24日にリリースされた。同作は音楽作家の堤博明が手がけたもので、ドイツでの60人編成によるオーケストラ録音やクワイアによる合唱、マンドリンやスパニッシュ・リュートなどの音を取り入れたサウンド、多重録音による輪唱を用いた劇中歌と、様々な仕掛けが施された作品に仕上がっている。今回は堤本人にインタビューを行い、その一つひとつの工夫や楽曲の制作秘話、あえて無国籍にしたというサウンドの意匠について、じっくりと話を聞いた。(編集部)

「ギタリストのフィーリングを生かした音楽」

ーーまずは、原作漫画を読んだ際の感想を教えてください。

堤博明(以下、堤):劇伴を依頼されてから原作を初めて読んで、すぐにファンになって全巻揃えてしまいました。今まで少年向けのバトル漫画ばかり読んできたので、すごく芸術的な美しい作画で、キャラクターの心情や世界観の作り込みも本当に細かくて、どんどん引き込まれていったんです。愛情を注がれて作られた作品だと感じましたし、だからこそファンの心理もわかる。なので、それを壊すような音楽はつけたくないと思いました。ただ、ファン目線と作曲家目線というのも、少なからず違いがあるんですよね。

ーー具体的にどう違うんでしょうか?

堤:『クジラ』のアニメ化が発表された時に、Twitterで色んな方の反応を結構見ていたんです。「民族的な音楽がつくといいな」という意見が多かったですし、その気持ちもわかるんですが、“民族的”といっても、特定の地域性が出てしまうと良くないと思いました。それならどういう音楽ジャンルにしたらいいだろうと考えつつ、もちろんファンも楽しめるようなバランスを探りました。

ーー原作からは、最初にどのような音楽をイメージしましたか?

堤:和音が豊かでハーモニーが広がるような、色鮮やかな世界を想像しました。でも、イシグロキョウヘイ監督との打ち合わせでは、“ユニゾン”、“プリミティブ”、“民族的”、“土着的”という、見事に真逆のキーワードをいただきまして(笑)。

(C)梅田阿比(月刊ミステリーボニータ)/「クジラの子らは砂上に歌う」製作委員会

ーー真逆のイメージを擦り合わせるのに苦労したのでは?

堤:いえ、監督からキーワードを聞いて、それはそれでスッと腑に落ちたんです。「情景は鮮やかだけど、それよりもキャラクターの心情を力強いユニゾンで出してほしい」と言われました。『クジラ』はファンタジー作品ではありますが、同時に登場人物の土着的な息遣いもとても伝わってくるので、“ファンタジー”と“土着感”の両立は、音楽を作る上でも大事にしようと思いました。

ーーそんなイシグロ監督とのタッグは、今回が初ではないということで。

堤:はい。最初は、イシグロさんが監督を務めるアニメ『四月は君の嘘』の音楽に、僕はギタリストとして参加していました。その後、アニメ『ランス・アンド・マスクス』で音楽を担当させていただいたので、一緒にお仕事をするのは今回で3作目となります。

(C)梅田阿比(月刊ミステリーボニータ)/「クジラの子らは砂上に歌う」製作委員会

ーーイシグロ監督は元々ミュージシャン(ドラマー)だそうですが、劇伴制作においてコミュニケーションのしやすさなどはありましたか?

堤:音楽に詳しい分、監督のこだわりや具体的なオーダーもある上で、作曲家に自由を与えてくださるので、いつもありがたいと思っています。それに、たとえば、「この部分を派手に」と言われるのではなく、「フォルテで」といったように具体的な表現をしてくださるので、やりやすかったです。

ーー堤さんご自身も“ギタリスト”としての顔をお持ちですが、周囲の作曲家と比べて、何か違いや強みなどは感じていますか?

堤:DTM中心の制作だと、鍵盤で打ち込んで作曲することがほとんどなので、ピアノをもっと弾けたらよかったなと思っています。表現の自由さやアイデアは演奏能力の高さに比例することが多いですし、自分の得意とする楽器は、曲のスタイルにもモロに出てくるんです。それでいうと、まさに今回監督からも、「鍵盤奏者的な発想ではなくて、ギタリストのフィーリングがほしい」と言われていました。

ーー確かに、音楽を聴いていてもギター……なのかはわかりませんが、弦楽器の音色が強く印象に残る楽曲が多かったです。

堤:今回は、いわゆる普通のフォークギターなどはなるべく使わないように意識したんです。12弦ギター、スパニッシュ・リュート、リゾネーターギター、マンドリン、マンドセロ、フレットバイオリンなど、かなり色々な種類の楽器を使っています。ほかにも、ギターをバイオリンの弓で演奏して不思議な音を出したり。

ーーなるほど。「これは一体なんの楽器だろう……」とモヤモヤしていたので、ようやくスッキリしました。

堤:“普通のギター”という聞こえ方はしないようにどの曲も工夫していたので、それなら作戦成功です!(笑)。『クジラ』は世界観が確立されているので、実際に存在する国が思い浮かばない方がいいだろうと思い、あえて様々な国の楽器をミックスしたんです。民族音楽の雰囲気は出したかったのですが、国籍は出したくなかったんですよね。

「鳥取砂丘でサンプリングも……堤博明が語る『クジラの子らは砂上に歌う』劇伴制作秘話」のページです。の最新ニュースで音楽シーンをもっと楽しく!「リアルサウンド」は、音楽とホンネで向き合う人たちのための、音楽・アーティスト情報、作品レビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版