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ポール・ウェラーが支持され続ける理由 男気溢れるパフォーマンスを見た

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 UKロックシーンの重鎮であり“モッド・ファーザー”として59才になった現在でも精力的な活動を続けているポール・ウェラーの約3年ぶりの来日ツアーが実現した。筆者が観た初日は約2時間のステージで30曲近くを披露。ほとんどインターバルを取ることなく矢継ぎ早に楽曲を繰り出す、男気溢れるパフォーマンスを見せてくれた。今回の日本公演は最新作『A Kind Revolution』を引っ提げたツアーの一環なのだが、ソロ、The Style Council、The Jamのナンバーも満遍なく演奏。約40年に及ぶキャリアを総括すると同時に、最新型のポール・ウェラーを生々しく見せつける圧巻の内容となった。

 数年ぶりの大雪に見舞われたこの日(1月22日)の東京。会場に入ると、まずは客層チェック。モッズコート、細身のスーツなど、気合いの入った(元)モッズもちらほら見受けられる。“ポール・ウェラーみたいになりたいオジサン”を自認している筆者はPretty Green(リアム・ギャラガーのブランド。「Pretty Green」はThe Jamの楽曲のタイトル)の水玉シャツと細身のブラックジーンズ。ライブのために服をチョイスする楽しさを久々に味わいながら、開演を待つ。

 19時ちょうどにThe Beatlesの「Tomorrow Never Knows」が大音量でかかり、バンドメンバーとポール・ウェラーが早足で登場。サッとギターを抱えて、すぐに演奏が始まる。オープニングナンバーはアルバム『Heavy Soul』の「Peacock Suit」。さらに「White Sky」「Long time」とR&B、ソウルミュージック濃度高めのグル—ヴィーなナンバーを叩き込む。まず印象的だったのが、アンサンブルの素晴らしさと音の良さ。ウェラーの右腕的存在のアンディー・クロフツ、スティーヴ・クレイドック(Ocean Colour Scene)を中心にしたバンド(ギター、ベース、ドラム、鍵盤、パーカッション)、ブラックミュージックを色濃く反映した英国的ロックサウンドを生々しく体現していたのだ。日本にもポール・ウェラーに影響されたアーティストは数多く存在しているが(佐野元春、加藤ひさし、山中さわおなど)、彼が築き上げた音楽が下の世代のミュージシャンに受け継がれている様子を目の当たりにすると「羨ましい。日本ではなぜ、こういう伝統が生まれないのだろうか?」という思いを禁じえない。

 ひと際大きな歓声が上がったのは、The Style Councilの代表曲「My Ever Changing Moods」だった。The Jam解散後のウェラーがミック・タルボットとともに結成したThe Style Councilはジャズ、ボサノバなどの要素を取り入れた音楽性を志向。The Jamが熱狂的に支持されていたイギリスではそれほど人気が出なかったが、その洗練されたポップネスはむしろ日本で幅広く受け入れられた(フリッパーズ・ギターをはじめとする80年代後半の日本のネオアコ系バンドにも直接的な影響を与えた)。この日演奏されたスタカン・ナンバーは「My Ever〜」と「Shout To The Top」だが、骨太なバンドグルーヴ、力強いシャウトを交えたボーカルを含め、いぶし銀としか言いようのないサウンドにリアレンジされていたのも印象的だった。The Jamのナンバー(「Man in the Corner Shop」「start!」)にも共通していることだが、完璧に“現在のポール・ウェラー”として表現しているところが素晴らしい。The Jamの再結成を固辞し続けていることからもわかる通り、ポール・ウェラーという人は絶対にノスタルジーに浸らない。その潔さ、律義さもまた、ウェラーが強く支持され続けている理由だ。

 個人的にもっともグッと来たのは「Into Tomorrow」だった。91年にソロアーティストとして最初にリリースされた楽曲だが、当時のウェラーは決して恵まれた環境ではなかった。The Style Councilの解散に伴い、メジャーレーベルとの契約を失ったウェラーは“Paul Weller Movement”名義で再出発、The Jam〜The Style Councilの時代ではありえなかった小規模のクラブでライブをはじめたのだ。“明日に向かって突き進むんだ”という意志を込めた「Into Tomorrow」は、当時のウェラーの感情がリアルに刻まれているわけだが、25年以上経った現在でも、この楽曲に込められた情熱と気合いはまったく色褪せていなかった。演奏前のMCで日本のオーディエンスに対するお礼(“みんなに救われたよ”みたいなことを言ってたと思う)を表明したことにも強く揺さぶられた。

 「She Moves with the Fayre」「Woo Se Mama」など新作『A Kind Revolution』の楽曲にも心を動かされた。ソウルミュージック、R&Bなどのルーツミュージックを深く取り込んだ楽曲(アルバムを聴いたときは「もちろん良いんだけど、ちょっと地味かな」と思っていました……)は、ライブでも濃密なグルーヴを発揮していた。過去の楽曲と並べて演奏してもまったく違和感がない、つまり、キャリアを通して一貫した音楽性を持ち続けていることも改めて確認できた。

 アンコールはアコースティックセッションからスタート。椅子に座った状態でアコギをかき鳴らしながらエモーショナルに歌い上げる姿は、“ほっこり”とか“ゆったり”みたいな雰囲気はまったくない。そしてダブルアンコールでは、キャリアを象徴する楽曲のひとつ「The Changingman」が演奏された。1995年のアルバム『Stanley Road』に収録されていたこの曲の“変わり続けるんだ、人生を自分のものにするんだ”というメッセージは、2018年の日本でもリアルかつシリアスなパワーを放ちながら、オーディエンスを鼓舞していた。

 翌日のライブ(1月23日/日本最終公演)では「That’s Entertainment」「Town Called Malice」などThe Jamのナンバーをなんと7曲も披露。「なんだよ、雪のなか行ったのに、俺が観たときはぜんぜんサービスしてくれなかったのかよ!」なんてことは口が裂けても言わない。ポール・ウェラーの音楽、生き様から筆者がもっとも感銘を受けたのは、愚痴や泣き言は絶対に言わない、その凛とした姿勢だからだーーただ「That’s Entertainment」は聴きたかった、やっぱり。

(写真=Kazumichi Kokei)

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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