でんぱ組.incの物語はもう一度始まるーー柴那典が大阪城ホール公演からグループの今後を考察

でんぱ組.incの物語はもう一度始まる

 アンコールはフロアがオレンジ色に染まった「ORANGE RIUM」、そして星型の紙吹雪が舞った新曲の「ギラメタスでんぱスターズ」を披露。

 何よりドラマティックだったのは、1曲目に歌った「Future Diver」を、もう一度7人で最後に歌ったということ。楽曲の途中でバックダンサーたちは再び白衣をまとい、モニターに向かい合う。冒頭と同じように発射カウントダウンの映像が映し出され、スペースシャトルは白煙を吐き、そして7人が「Future Diver」を歌い終えると、今度は7人が乗り込んだスペースシャトルが無事発射される。その映像からライブのエンドロールにそのまま繋がっていった。

 ライブのタイトルにしても、演出にしても、でんぱ組.incを「もう一度始める」という意志を強く込めたものだった。それがスペースオペラとしてのストーリー性を持ったステージに結実していた。

 楽曲プロデュースを務めていた福嶋麻衣子(もふくちゃん)がP-FUNKに傾倒していることはよく知られている。まさに今回のステージは、ParliamentなどP-FUNK一派やEarth, Wind & Fireらがたびたび用いてきた「宇宙」というモチーフを、久々に全面的に用いたもの。彼らが体現してきた「アフロフューチャリズム」の思想を「秋葉原フューチャリズム」として読み替え継承するグループの方向性や精神性を改めて示したものだった。

 でんぱ組.incは、2018年4月4日にニューシングルをリリースし、4月14日からは全国ツアーをスタートさせる。もともと引きこもりで、でんぱ組.incに憧れてアイドル活動を続けてきたという根本凪と鹿目凛が加わったことで、グループの描く物語は新たな側面を迎えるはずだ。

 何より、でんぱ組.incの曲にしかない唯一無二の高揚感を、どう更新していくか。筆者はそのことが何より楽しみだ。

(文=柴那典)

オフィシャルサイト

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