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『agehasprings Open Lab.』レポート

agehaspringsが『Open Lab.』で伝えた“音楽の奥行きと楽しさ”

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 agehaspringsが12月9日、東京・3331 Arts Chiyodaでイベント『agehasprings Open Lab.』を開催した。

 同社は、音楽プロデューサーの玉井健二(a.k.a. 元気ロケッツ)が代表を務め、蔦谷好位置、田中ユウスケ(a.k.a. Q;indivi)、田中隼人、百田留衣、飛内将大、釣俊輔など、今や日本を代表するヒットメーカーが多数在籍するクリエイティブカンパニー&音楽制作プロダクション。6月に京都の文化エリア岡崎で開催された音楽祭『OKAZAKI LOOPS』で同企画の第一弾を行い好評を博し、クリエイターズイベントとしては2回目となった。本イベントも解禁初日に応募定員に達し、各部抽選で選ばれた約120人が参加した。

 無料のワークショップということもあり、ライトな内容からじっくり教えていくのかと思っていたのだが、玉井健二と百田留衣による第一部『公開レコーディングワークショップ(前半)』が始まった途端、その情報量の深さと多さに驚かされた。玉井はまず、ボーカルレコーディングについて「メロディとコードと基本的なグルーヴを決めて、素材を揃えるのがアレンジ。ドラムやベース、ギターといったオケを録って、最後にボーカルを録るのが通常。そしてこのボーカルレコーディングとダビングが、レコーディングで一番重要なこと」と熱弁。

玉井健二

 さらに、ボーカルダイレクションという役割について、「ボーカリストは、ブースに入ると閉じ込められる感じがして怖いんですよ。そんな歌い手とモニターとマイクを通してやり取りして、歌いやすいようにしてあげることも大事。」と、イレギュラーな空間でボーカリストのポテンシャルを引き出すことの大切さを説いた。

百田留衣

 そんななか、多数の応募者から選ばれた22歳のシンガーソングライター・Moaが登場すると、玉井は「普段はレコーディングをやる前に打ち合わせして、後日レコーディングする。今日はそれを1時間でやる。ごめんね? 初対面なのに(笑)」と、軽く心を解きほぐし「音楽を始めたのは?」「何を聴くんですか?」など次々と質問。ときに「どういう人にとって大事な音楽になって欲しい?」「Moaというアーティストを先に知ってもらいたいか、曲を先に知ってもらいたいか、どっち?」と核心を突いた質問をし、Moaが「曲を先に知ってもらいたい」と答えると、「じゃあ色んな人に作用するようにしましょう」と方向性を決め、レコーディングがスタートした。

Moa(左)と玉井健二(右)。打ち合わせ〜ボーカルダイレクションの様子。

 今回録音したのは、彼女のオリジナル楽曲「つむぐ。」。まずはワンコーラスを歌いながらモニターを調整し、サビ前までをレコーディング。マイクとの距離感や口の形を意識させたり、言葉の頭を強調するように指示。「強調したいときは、声を出すだけじゃなくて切って。突然止められると人はドキっとしちゃうから」や、「強くと言うよりは、遠くに飛ばす意識で歌ってみて。急に空撮になるMVみたいな感じ」と、イメージを共有しながら14度録音した。ここから玉井と百田が録音したボーカルをイベント中にリアルタイムでエディットし、ワンコーラスの音源として仕上げる作業をするということで2人は一旦ステージをあとに。少し休憩を挟み、田中隼人による第2部『公開アレンジワークショップ』がスタートした。

ボーカルレコーディングの様子

 田中は、米津玄師が作詞/作曲を手掛け、自身がアレンジを米津と共同で手掛けたDAOKO×米津玄師の「打上花火」の制作データをDAWごと画面に映し出すという大サービスで会場を沸かせると、自身のアレンジについて、最初にリズムから取り組むことを明かした。この曲については、打ち合わせで「『サビだけ生ドラムにしても面白いんじゃないか』という意見があって、ドラムパターンを考えて実際にそうしてみた」と、意外なサビの展開について解説すると、楽曲の肝について、「サビで出てくるストリングスの刻み」を挙げた。

田中隼人

 田中によると、この曲のストリングスレコーディングでは、6・4・2・2(1stバイオリン・2ndバイオリン・ビオラ・チェロ)の編成だったそうだが、奇しくも同じテーマのケイティ・ペリーの「Firework」に着想を得て、四つ打ちのリズム×刻むストリングスというアイデアを採用。レコーディングに参加した奏者たちには驚かれたそうだが、それによってこの曲の核となるサウンドが完成した。

 また、生楽器としてはギターも採用しているが、ただ弾くだけではなく「2017年感を出す」ことをテーマに、Bメロでは8分の開放弦で弾いたテレキャスターの音にリバーブを掛け、波形を反転させることで、DJがフィルターを掛けたときのようなサウンドを演出。サビ前にもアルペジオを反転させて転調のきっかけを作るなど、数々の技巧で楽曲の下支えをしていることを明かし、観客は驚きや感心、納得といった様々な表情を浮かべていた。

 ほかにも、エレピやオケの音数について語った田中。最後の質疑応答では「売れる音楽の要素は?」と訊かれ、「歌手になりたい、歌がうまくなりたい人たちの歌をたくさん聴いてるけど、個性のない、ただ音程を取るのが上手な人が多い。でも、売れている人は聴いて誰だかわかるオリジナリティの固まり。この人はなぜ売れてるいるのかを研究できて、自分の長所と合う部分を伸ばせる人が売れる。自分を俯瞰で観て、自分の長所がどれだけわかるかが大事」と答えたり、「楽曲制作をしている人に向けて」というテーマについて「いま何をやるとカッコいいかを俯瞰で考えてほしい。主観じゃなくて俯瞰的な耳を持って欲しい」と金言を送り、第二部が終了した。

 そして、第三部の『公開ボーカルレコーディングワークショップ(後半)』には、再び玉井と百田が登場。玉井によると、普段のレコーディングと同じく、第一部で録ったボーカルを素材として最終的なトラックダウンに向けてエディット。一番多いパターンは「良いところを繋いでいく」か「一番いいテイクにほかの良い物を繋いでいく」ということで、今回は後者を選んだという。さらに、「この曲を色んな人に届けたいという思いがあったので、そうなる要素を強調するエディットになった」と、アーティストの意思も尊重した音になっていると解説した。

      

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