SNH48による“文化の創造的破壊”は終焉へ? 田中秀臣が読み解く“アイドルと中国カルチャー”

 だが、それをまるで見透かすように、SNH48は中国当局とのコラボを推進することを選んでもいる。冒頭での愛国ビジネスへの傾斜だ。今年の国慶節(中国の建国記念日)に合わせて発表された「歌唱祖国」(中国の準国歌)のMVは、まるで中国共産党の宣伝媒体のようである。

SNH48「歌唱祖国」MV

 評論家の安田峰俊はこの「歌唱祖国」を歌うことができる時点で、「政治的に少なからぬプッシュがあったと判断していい」と論評している。

 つまりSNH48は文化的自由を、政治的自由の前で大きく減縮することを選んだのであろう。それはSNH48がひょっとしたら持っていたかもしれない、総選挙システムで自由に投票できるといった国民の快楽をも将来的に犠牲にする道かもしれない。そして愛国ビジネスへの傾斜は、コーエン的な創造的破壊とはいえない閉じた世界を意味する。この点は今後注目していく必要があるだろう。

■田中秀臣
1961年生まれ。現在、上武大学ビジネス情報学部教授。専門は経済思想史、日本経済論。「リフレ派」経済学者の代表的論客として、各メディアで発言を続けている。サブカルチャー、アイドルにも造詣が深い。著作に、『AKB48の経済学』、『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』『デフレ不況』(いずれも朝日新聞出版社)、『ご当地アイドルの経済学』(イースト新書)など多数。『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社)で第47回日経・経済図書文化賞受賞。好きなアイドルは北原里英、欅坂46、WHY@DOLL、あヴぁんだんど、西恵利香、鈴木花純、26時のマスカレイド、TWICEら。Twitterアイドル・時事専用ブログ

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