乃木坂46、東京ドーム公演で示した“個性と自信” 新たなステージへの「きっかけ」を見た

乃木坂46ドームで示した“個性と自信”

「6年前、まだまだ蕾だった私たちが、同じところに向かって歩きはじめました。涙と汗を沢山流して少しずつ成長して、こうしてステージの上で花を咲かせることができました。今度はその花から生まれた種を、日本中、世界中、もっと広いところに運んでいきたい」(桜井玲香・2日目アンコールのMCより)

 乃木坂46が11月7日と8日に行なった『乃木坂46 真夏の全国ツアー2017 FINAL! 東京ドーム公演』は、6年間の集大成やファンへの感謝とともに、彼女たちがこの場所を終着点としない、という決意表明を示す場でもあった。

 乃木坂46のライブは、これまで複数日開催の場合、各日で構成を変えてくるのが常だった。しかし今回は、一部を除きほとんどが2日間共通。つまり練りに練った選曲とステージングで、東京ドームという念願の舞台へ臨んだということだろう。

 1日目は、「Overture」のサウンドとともに、女子高生が東京ドームへ駆け出す映像から、次々とステージへ走り込んでくるという幕開け。しばらくその流れは止まず、一体何人でてくるのかと思えばその数なんと460人。各ダンススクールから集められたダンサーだという彼女たちが一斉に踊り出すと、キャッチーなシンセメロとうねりのあるベースが鳴り出し「制服のマネキン」が始まった。乃木坂46が東京ドーム公演をやる、と聞いた時、1曲目で真ん中に立つのは、生駒里奈であるべきだと思ったファンは多いだろう。センターとしてグループを初期から牽引し、二列目・三列目になってからも乃木坂46の顔として活躍する生駒が、記念すべきコンサートの幕開けを飾る。そんなファンの願いを叶えるように、生駒はセンターポジションで躍動した。

「東京ドームをやるって聞いたときは、私たち3期生が一緒に立っていいのかなと不安になったけど、もっとこのグループのために人生賭けて頑張りたいなと思った」(梅澤美波・1日目MCより)

 2曲目以降は「世界で一番 孤独なLover」、「夏のFree&Easy」、「裸足でSummer」、「太陽ノック」とセンターを変えながら夏曲が続き、デビュー時を振り返るVTRのあとは彼女たちのデビュー曲「ぐるぐるカーテン」へ。そこから「バレッタ」「三番目の風」と、1期生→2期生→3期生をセンターにした曲が並び、グループの歴史を端的に表現してみせる。3期生も単独ライブで鍛えた経験をもとに、かつてのような緊張はどこへやら、堂々としたパフォーマンスで、自分たちが乃木坂46の一員であることを誇らしげに提示した。

 ライブもそろそろ中盤に差し掛かろうとしたところで始まったのは、「他の星から」「でこぴん」「あらかじめ語られるロマンス」というユニット曲ゾーン。2日目の「他の星から」は若月佑美が舞台公演のため不在だったが、ほかのメンバーを補充することなく、西野・伊藤万理華・井上小百合・斉藤優里・桜井玲香・中田花奈の6人でパフォーマンスが行なわれた。かつて1stアルバム『透明な色』の収録曲を決めるカップリング人気投票でも1位になった「他の星から」は、グループのファンにとっても特別な意味を持つ。いまやグループの大きな柱となった西野七瀬が初めてセンターを務めた楽曲でもあり、PV・楽曲・衣装の完成度と、どれをとってもグループのなかで随一といえるユニット曲だからだ。

 

 3期生を中心としたMCを終え、VTRではアンダーメンバーの軌跡を辿る映像が流された。乃木坂46を語る上で、アンダーの歴史を切り離すことはできない。彼女たちは、固定劇場を持たない坂道シリーズの特性から、グループ初期は露出の少なさに思い悩んだが、8thシングル以降生まれた『アンダーライブ』は、そんな彼女たちにとって転機をもたらした。東京を中心にライブ公演を地道に積み重ね、会場をどんどん大きくし、今年前半には東京体育館3Daysを埋めるまでに至り、現在は全国へ乃木坂46の魅力を伝える役割を果たしている。選抜常連になるメンバーも現れるようになったが、辛酸を舐め続けるものもいる。乃木坂46にとって、アンダーは成長と苦悩の証だ。

 映像が終わると、彼女たちの名前が一人ずつ呼ばれていき、19thアンダーメンバーがステージへ上がったあと、ここまで姿を表さなかった中元日芽香と北野日奈子が登場。中元は体調不良を理由にグループからの卒業を発表しており、北野も少し前まで行われていた『真夏の全国ツアー2017』、『アンダーライブ九州シリーズ』より、体調不良による欠席が増えていた。すべての楽曲に参加するのは難しかったようだが、こうして結果的に46人全員がステージに立ったというのは、グループにとって意義のあることだ。

 さらに、ここから齋藤飛鳥、星野みなみ、堀未央奈、新内眞衣、衛藤美彩、井上小百合、最後に伊藤万理華と、アンダーから選抜常連になったメンバーも姿を表し、伊藤万理華のセンター曲「ここにいる理由」と、井上のセンター曲「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」、中元のセンター曲「君は僕と会わない方がよかったのかな」をパフォーマンスした。伊藤万理華と中元という、アンダーライブの一番苦しい時期を中心で支えた彼女たちがそれぞれ卒業を迎えるなか、このタイミングでアンダーの歴史を総括したことは、非常に意義のあることに思えた。

 そんなアンダーのパフォーマンスに呼応するように、選抜メンバーも眩いばかりの光を放つ。西野が床一面に設置されたビジョンの上に立ち、美しい映像とリンクするようにソロダンスを踊ったあとに披露された「命は美しい」では、無数のレーザーが飛び交う演出がなされた。流石ドーム公演といえる、これまでの乃木坂46には無かった技術とのコラボレーションを見せたあとは、センターステージで大園桃子と与田祐希が華麗に舞い、2人のセンター曲「逃げ水」へ。西野と対になるように、白石がエモーショナルなソロパフォーマンスを見せたあとの「インフルエンサー」は、これまでよりも熱を帯びているように見えた。現在はグループにとって一つの定形となった西野と白石のWセンターも、こうして様々な角度から切り込む演出によって、それぞれの個性が浮き彫りになる。

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