GRAPEVINEが語る、“成熟”と”斬新さ”を共存させた制作スタイル「僕らの曲は“3年殺し”でいい」

GRAPEVINE、現在の制作スタイル

 デビュー20周年を迎えるGRAPEVINEがニューアルバム『ROADSIDE PROPHET』をリリースする。初めてホーンセクションを取り入れた先行シングル「Arma」を含む本作は、3人のメンバー(田中和将/Vo&Gt 西川弘剛/Gu 亀井亨/Dr)とサポートミュージシャンの金戸覚(Ba)、高野勲(Key)による有機的なバンドサウンドをさらに突き詰めた充実作。亀井の手による奥深いメロディライン、田中が紡ぎ出す生々しい歌詞が前面に押し出されているのも本作の魅力だ。デビュー作『覚醒』(1997年)から20年。根本的なスタイルを変えることなく、成熟と斬新さを共存させながら充実した活動を続けることで、若いオーディエンスからも支持されている3人に新作『ROADSIDE PROPHET』について語ってもらった。(森朋之)

「何かしらの変化は常に欲しい」(亀井)

ーー先日のフジロックでライブを観させてもらいまして。すごく盛り上がってましたよね。

田中:たまたま雨が降ったので、雨宿りのお客さんも集まってくれて。

亀井:確かにお客さんは熱かったですね。それはライブをやってるときも感じました。

ーー若いオーディエンスが多かった印象もありましたが「新しいリスナーが増えている」という実感はありますか?

田中:フジのときはそうだったかもしれないけど、普段から実感してるかと言われたら、よくわからないです(笑)。ツアーをやっていても、我々の目が届く範囲は、いつもと同じ方々が多いので。

亀井:常連さんがね(笑)。

田中:そうそう。もしかしたら後ろのほうには若い世代のお客さんがいるもかもしれないけど。

西川:若いバンドの人から「よく聴いてました」と言われることは増えてますけどね。Wilcoのライブに行くとミュージシャンっぽい感じの人が多いんですけど、(GRAPEVINEのライブにも)そういう人たちがいてくれたら嬉しいですね。

ーーGRAPEVINEをフェイバリットに挙げているバンドマンは確かに多いですよね。フォロワーというか、「影響を受けてるな」と感じるバンドは少ないですけど。やっぱりマネしづらいんですかね?

田中:マネはしづらいと思いますよ。この前もそんな話をしてたんですけど、「リスペクトしてます」と言ってくれるバンドのライブを観ても、自分たちとの共通点をなかなか見つけられなくて。それが良いとか悪いってことではないんですけど。

亀井:「どの部分を汲み取ってくれてるのか?」ということもあるだろうし。

田中和将

ーーみなさん自身はどうですか? いまの常に新しい音楽に触れていると思いますが、そこから影響を受けることもある?

田中:バンバン取り入れたりはしないですけど、何らかの刺激は受けていると思いますよ。どういう影響かは具体的に言えないけど、要素としてアレンジに取り入れることもあるので。

亀井:レコーディングのプリプロで、アレンジを考えているときに参考にしたり。そういうネタはいつも探してますね。制作の方法はあまり変わってないんですけど、自分たちにとって新鮮なものだったり、何かしらの変化は常に欲しいので。

西川:その時期に聴いてる音楽がエッセンスとして入ってきますから。

田中:意図的に真似することもありますけどね(笑)。そういうときもあまり研究しないで、うろ覚えの印象にあわせることが多いんです。それが勘違いでも構わないというか。

ーーでは、新作『ROADSIDE PROPHET』について。前作『BABEL, BABEL』には共同プロデューサーとして高野寛さんが参加していましたが、今回はセルフプロデュースですね。

田中:はい。アルバムの内容について突き詰めて話したわけではないんですけど、「20周年だし、セルフプロデュースでどう?」という話をして。いつも通り「どんなアルバムにするか」ということはまったく話してないですけどね。どんな曲が出て来るかわからないし、ずっと出たとこ勝負でやってきたので。結局は曲次第ですからね。

ーー20周年の年にリリースするアルバムだからと言って、特に気負い過ぎることもなく。

亀井:気負いはないですね(笑)。

田中:確かに(笑)。こういうタイミングっていろいろやりがちなんでしょうけど、自分らはそういうのが苦手みたいで。10周年のときも15周年のときも、大それたことは何もやってないですから。

西川:サービスというか、ファンの人たちは(20周年に関するイベント、作品などを)求めていると思うんですけど、いかんせん苦手なので、やっぱり通常通りに活動になるっていう。「何でやらないんですか?」と直接言われることもありますけど、「さあ……」としか答えようがなくて(笑)。(1977年の)9月にデビューしたから、隠してると思われてるみたいなんですよね。「9月に何かあるはずだ」って。

田中:ホントに何もやらないです(笑)。

西川:トリビュート盤とかリテイクアルバムを出してほしいって言われることもあるけど、それは20年目じゃなくてもいいですからね。

田中:そういうことにお金と時間を使うよりも、新しいアルバムを出すことに力を使ったほうがいいと思っちゃうんですよね。

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