GRAPEVINEが語る、“成熟”と”斬新さ”を共存させた制作スタイル「僕らの曲は“3年殺し”でいい」

GRAPEVINE、現在の制作スタイル

「ちょっと違った部分を作って、そこを楽しんでいきたい」(田中)

ーーここ数年も毎年のように新作をリリースしていますからね。リテイクアルバムは聴いてみたいですが……。

田中:アルバムのDVDにスタジオライブ(「覚醒」「スロウ」「CORE」などを収録した『GRAPEVINE STUDIO LIVE 2017』)が収録されているんですけど、要はそういうことですよね。ライブでは常にセルフカバーをしているわけですから。「いまの演奏で昔の曲を聴きたい人はライブに来てください」と言うと「冷たいですね」って言われちゃうんですけどね(笑)。事情があってライブに来られない方はこのスタジオライブを観てもらえたらなと。

西川:アレンジを変えるのも難しいんですけどね。たまにしかライブに来られない人は「何でアレンジを変えた? 原曲通りのアレンジで聴きたかった」という人もいると思うので。

田中:それもあるな。

亀井:大御所になればなるほどアレンジを変えがちですよね。歌いまわしとか。

田中:タメがちになるからね(笑)。自分らに関して言えば、根本のアレンジを変えることはあまりないんですよ。音やフレーズを変えたり、間奏が伸びたりすることはよくありますけど。

ーーもともとセッションで制作している楽曲も多いし、ベーシックのアレンジがしっかり定まっているんでしょうね。今回のアルバムの新曲も基本はジャムセッションで作ったんですか?

田中:やり方はいままでと変わってないんですけど、GRAPEVINE名義の曲は少ないんですよ。今回は亀井くんがたくさん曲を持ってきてくれたので。

亀井:溢れ出ていたわけではないんだけど(笑)、何かしらネタがあったほうが進めやすいだろうなと。

ーーメロディがしっかりしている楽曲が多いのは、亀井さんの楽曲が多いからでしょうね。

亀井:個人で作るとどうしてもそうなりますね。プリプロやアレンジはスタジオでやってましたけど。

田中:そういう意味では全曲ジャムって作ってますね。

ーーバンドでセッションする際に何か意識していたことはありますか?

田中:手練れにならないようにするっていうのは、常に考えてますね。誰かがアレンジのアイデアを持ってくることもあるし、さっき言ってたみたいにYouTubeやSpotifyを聞いたり。モチベーションを保つのは大変ですからね。飽きずに続けるやり方を考えないと。

西川:普通にやると、どうしてもいつも通りになっちゃいますからね。そこから「どう変えようか?」と話して。

田中:曲のストーリーとか、自分たちの性分もあるんですけど、ちょっと違った部分を作りたいですよね。そこを楽しんでいきたいというか。

ーー先行シングル「Arma」にはホーンセクションが取入れられていて。GRAPEVINEの曲で、ここまでしっかりホーンが入ってる曲って……。

田中:じつは初めてなんですよね。ホーンを1本だけ入れたことはあるんですけど、「Arma」は三管なので。もともとは高野勲氏のアイデアなんですよ。アレンジしているときに「ホーンを入れてみる?」って言い出して、僕らも「それはいいかも」と思って。高野さんは「The Boo Radleysみたいな可愛い感じのホーンを入れたい」って言ってたんですけど、仕上がりはだいぶ違いますね(笑)。

亀井亨

亀井:ホーンを使ってみたいという気持ちはずっとあったんですけど、似合う曲がなかったんですよ。

西川:ホーンセクションって強力ですからね。ひっそりと佇んでいる楽器ではないので。

田中:隠し味にはならないというか。“ホーンありき”の曲が増えると、ライブでも不自由しますからね。そういうこともあって、いままで取り入れてなかったのかも。

ーー「これは水です」には四家卯大さんのチェロが入っていて。サイケデリックな雰囲気を増幅させる効果的なアレンジですね。

田中:楽曲自体がかなりサイケデリックですからね。最初はメロトロンの音を使ってたんですけど、もっと強力にしたいと思って、生のチェロを入れることになって。四家さんが3本分のチェロの譜面を書いてくれて、すごく良くなりましたね。

ーー「ソープオペラ」のノイジーな音像も印象的でした。あれ、何の音ですか?

田中:全編に流れているのはシーケンスの音ですね。亀井くんが作ったデモに最初から入っていて、それがすごく印象的で。

西川:うん。マリンバの音とかも混ざってて。

亀井:マリンバの音をアルペジエーターで処理して、それをランダムに打ち込んだんですよね。それを活かしながら、音色を新たに作り直して。自分が使っているソフトにそういう機能が付いてたから、曲作りのきっかけとして使ってみたっていう。

ーーすごく自由度が高いですよね。メンバーのアンサンブルだけに頼っているわけではないというか。

田中:何でもアリですよね、基本的には。自分たちのアイデアには限界があるし、向き・不向きもあるだろうけど、思い付いたことはとりあえずやってみるので。ライブの再現性も出来るだけ考えないようにしてるんです。もちろんライブでは“せーの”でやるので、たまに大変なことになるんですけど(笑)。

西川:「俺は何の楽器を演奏すればいいんだ?」ということもありますからね、曲によっては。いちばん難しいのはハモなんですけどね。

田中:演奏と歌のタイム感をすり合わせるのが難しいんですよ。とにかく練習するしかないんですけど。

亀井:体に入れちゃうしかないですからね。

田中:または何かを放棄するか(笑)。いつも苦労してますけど、やりがいはありますね。

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