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小野島大の新譜キュレーション 第12回

クライン、マイサ、バルトラ……小野島大が選ぶ、今夏必聴のエレクトロニック・ミュージック

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 2カ月のご無沙汰でした。今回もエレクトロニックな新作の中から目立ったものをピックアップしていきます。夏枯れというのか、この時期はあまり大きな話題になるような新作が少ない印象もありますが、それなりに面白い作品が揃いました。また昨今の顕著な傾向ですが、サブスクリプション配信で幅広く音源を公開するアーティストが多い中、サブスクには見向きもせず限定プレスのヴァイナルやカセット等で先行リリース、そのあとでBandcampでダウンロード配信するというアーティストも増えてきました。特に海外の場合CDリリースの点数はどんどん減っている印象です。

 なお私がこの夏入手した作品で、ある意味最大の話題作はエイフェックス・ツインのフジロック会場限定45曲入りカセット『APHEX Mt. Fuji 2017』ですが、再生機器の関係で未だに聞けないままです(苦笑)。次回までには内容をチェックしてご報告したいと思ってます。

クライン『Only』

 LA在住のナイジェリア系シンガー・ソングライターのクライン(Klein)のセカンド・アルバムが『Only』 (Howling Owl Records/P-VINE)です。昨年USB、ついでヴァイナルでリリースされたものの即完売し入手困難だった作品が、日本でボーナス・トラック2曲を加え世界初CD化。エクスペリメンタルR&Bというか、アルカとソランジュとFKAツイッグスとジェイムス・ブレイクを足して、さらに濃厚なブラックネスを強化注入したような特異なサウンドは一度耳にしたら忘れられないインパクトです。ダークで先鋭的でありながら、プリミティヴで煌めくような生命感も同居したサウンドには、ゴスペルやブルース、果てはアフリカ音楽から、ベース・ミュージックやエレクトロニックR&Bに至るブラック・ミュージックの伝統という背骨が一本通っています。現在もっとも注目すべき才能の1人でしょう。

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Klein – Hello ft jacob samuel
Klein – Marks Of Worship
マイサ『Fantasii』

 近い将来、そのクラインとライバルになりそうなのが、ウエスト・フィラデルフィア出身のマイサ(Mhysa)。彼女のファースト・アルバム『Fantasii』は、ピットシフトした浮遊するヴォーカルと、チルウェイヴと教会音楽とソフィスティケイトされた都会的R&Bが出会って溶解していくようなレイヤード・サウンドがゆらゆらと蠢く印象的なもの。最後の曲「For Doris Payne」の後半に出てくるプリンス「When Doves Cry」の悪夢にうなされたような異様なカヴァーは強烈です。

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MHYSA ~ STROBE (Official Video)

 ニューヨークのプロデューサー/トラックメーカー、バルトラ(Baltra)のファースト・アルバム『No Regrets』(96 And Forever Records)。これまた、去年カセットのみでリリースされていた作品が、最近になってヴァイナルと配信(Bandcampなど)でリリースされました。初期シカゴ・ハウスに通じる荒々しく生々しい、いわゆるローファイ・ハウス(Lo-Fi House)の代表的なアーティストで、こもったようなざらついたダーティな音質と、叙情的で美しい上モノが融合した独特な世界観を展開しています。Bandcampではハイレゾ(24/44.1)も買えますが、クリアでレンジが広く分離のいい昨今のダンス・ミュージックとは対極にある、アンダーグラウンドの香りがたっぷりと漂うローファイ・サウンドは、一旦ハマると抜け出せなくなりそうなディープな魅力があります。


Baltra – No Regrets
Baltra – U ME EVERYTH1NG [Of Paradise]
アンソニー・ネイプルズ『The Trilogy Naples』

 もう1枚ローファイ・ハウス系を。ニューヨーク在住のDJ/プロデューサー、アンソニー・ネイプルズ(ANTHONY NAPLES)のアルバム『The Trilogy Naples』(The Trilogy Tapes / P-VINE)。彼がUKのレーベル<The Trilogy Tapes>に2013年から2016年の間に残した3枚のEPをコンパイルした日本独自編集盤です。初期エイフェックス・ツインのアンビエント・トラックを四つ打ちにしたようなダンス・トラック、耽美なディープ・ハウス、ムーディでメロディアスなビートダウン・ハウス、ノイジーでエクスペリメンタルなテクノなど、魅力的なトラックが収められています。前記のバルトラほどアングラな感じはなく、ポップさもあるので、取っつきやすいのではないでしょうか。

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Anthony Naples – Lekker
Anthony Naples – More Problem

      

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