シドはまた新しいストーリーを始めるーー武道館公演に感じたバンドの“意思”

シド、武道館公演レポート

 シドがついに本格的に動き出した。

 マオ(Vo)が2016年にソロデビュー、明希(Ba)もAKiとして積極的に活動を行ったりと昨年はバンドとしては小休止状態。『VISUAL JAPAN SUMMIT 2016』にシドとして久々に出演したことが話題になったぐらいだったにも関わらず、2017年5月12、13日と2日間にわたって日本武道館で開催された1年7カ月ぶりのワンマンライブは両日ともソールドアウトとなった。

 1年7カ月ぶりというインターバルは移り変わりの激しい音楽シーンにおいては決して短くはない。「このまま活動が減っていって止まってしまうのかも」と思う人もいるだろうし、動員がガタッと落ちてもおかしくない。そんな状況の中のソールドアウトは彼らのライブを待ち望んでいた人たちがそれだけ多いということの証明でもあった。

マオ(Vo)

 武道館2デイズには「夜更けと雨と」、「夜明けと君と」というタイトルがそれぞれ付けられ、重なる楽曲は3曲のみ。セットリストも演出も異なるコンセプチュアルなライブとなった。マオもMCで触れていたが、初日は「紫陽花」や「アリバイ」、「レイニーデイ」など“雨”という言葉が盛り込まれた曲が中心、2日目は“君”という言葉が入った曲を軸に据え、夜更けから夜明けへと向かっていくイメージを曲と演出で表現した2日間だった。

 外は雨模様だった2日目「夜明けと君と」にはメンバー全員が真っ白な衣装で登場。まばゆい光が降り注ぐ中、ライブは意表を突いてのっけから客席にテープが放たれた「ANNIVERSARY」で幕を開けた。続く「laser」もレーザービームが飛び交うゴージャスな演出の中で鳴らされ、「Re:Dreamer」では大合唱が巻き起こるなど、前半から開放感たっぷりのムード。

 2階席のてっぺんまで埋まった客席をマオが嬉しそうに見上げ、「今回は1日目が“夜更けと雨と”で今日が“夜明けと君と”というコンセプトなんですけど、天気的には真逆ですね」と沸かせ、Shinji(Gt)のギターのカッティングが心地いい「cosmetic」に突入すると怒涛の大歓声。その空気から“待ってた!”感がダイレクトに伝わってくる。

Shinji(Gt)

 これまでも凝った映像やセットで楽しませてきたシドだが、今回も巨大なビジョンを活かしたCG映像と共に曲が披露されていく展開が視覚と聴覚を同時に刺激してくれる。「星の都」、「マスカラ」、「ミルク」など懐かしい楽曲を盛り込んだセットリストもスペシャルだった。

 この日、シドのワンマンライブを久々に見てあらためて感じたことは、普遍性のあるクオリティの楽曲が素晴らしいということでもあった。ヴィジュアル系といってもシドの曲はJ-ROCKやJ−POPに分類されるタイプのものが多く、ファンクやボサノヴァのリズムを実に洗練されたアプローチで取り入れていたりする。それでいて、演奏は主役の歌メロを決して邪魔することはない。

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