Theピーズの日本武道館はハイライトの連続だったーー“生きのばし”てきた30年とこれから

Theピーズの日本武道館はハイライトの連続だった

 「いやあ……とてもよい! どうしてどうして、もう、ごめんね、30年かかっちゃったよ、ここ来るの。こんないいとこだったらもっと早目に来ればよかったよ」と、最初のMCではるは言った。

 「これ、夢じゃないよね? こんなに気持ちいいと思わなかったよ、1曲目からさあ。すっげえよ。ここに今さ、五体満足で立てたってことだけで大成功だよ!」と、さらに興奮気味のアビさんがそれに続く。

 「あのー、俺だけ武道館二度目です。松田聖子さんが武道館で106回公演してるそうなので、あと104回がんばります」と、ひとりだけ感激を表さなかったシンちゃんは、最後、二度目のアンコールを終えたはるとアビさんが、いつまでも立ち去り難そうにステージをウロウロしているのを待つように見守っていたりして、なんというか、実に「らしい」佇まいで、それもとてもよかった。

Theピーズ日本武道館は、なんのために行われたのか、そしてなにゆえに大成功したのかを考えるの画像5
安孫子義一

 そのたびにビジョンに大映しになったので、あの場にいた方はご記憶だろうが、アビさんは途中で何度も、客席を見渡しながら子供のように喜び露わな表情を見せた。挙句、20曲目「喰えそーもねー」後のMCでは、「こんな思いしたのってさ、ほんとにないよ。五十何年も生きてるけどさ」なんて言う。そこまでストレートに歓喜を表すのは照れくさいタチであろうはるも、押し寄せてくる感情に抗えず、たびたび笑顔になる。

 「脱線」でアビさん、ダックウォーク。「でいーね」では、2Fスタンド上部に4発仕込まれたミラーボールが回る。「死にたい奴は死ね」の前には、はる、「こんなことやったことないけどやっちゃお」と、客席を東・南・西・アリーナに分けて「死にたい奴は死ね」「死にたい時に死ね」と歌わせ、「なんなんだこれ!」と喜んでから曲に入る。

 「Theピーズといえば、ずっと酒呑みバンドっぽい感じでやってきたんですけど、自分だけ勝手に5年ぐらい酒やめてるんですわ」「次の曲は、酒の歌です。お酒やめたおかげでここまで来てるのか、ずっと酒呑んでたおかげでここまで来てるのか、よくわかんないんですけど、とりあえず、お酒、悪くなかったんだなって。これからは脳みそで自分でお酒作れたらいいんじゃないの?って思って作った曲です」というMCから、はるはアコギ、アビさんはセミアコに持ち替えて「温霧島」、そして「異国の扉」を歌う。

 「3度目のキネマ」の前には「今日は最初で最後の武道館だけど、あの、とっても気持ちいいですよ!」と喜びを伝える。そして「絵描き」の前には、音響のSPC西片明人が用意した、武道館の日本国旗の下に吊るされている特製スピーカー(ステージの左右にスピーカーを置くのではなく、この1本で全方位に音が出るという新兵器)を紹介する。

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佐藤シンイチロウ

 23曲目「バカになったのに」の後半では、曲がいきなり「短い夏は終わっただよ」になってまた「バカになったのに」に戻る、という最近よくやるやつも披露。

 「日が暮れても彼女と歩いてた」「サイナラ」「ドロ舟」「真空管」と、ピーズ鉄板中の鉄板曲が並んだ後半は、アビさんの乾杯をはさんで、はるの「みなさん、生きのびてくれてありがとう!それだけだ!」という雄叫びからの「生きのばし」で締められた。

 一度目のアンコールは「ちょっとのんびりしゃべりすぎた。9時が近づいてるみたいだ」とあせりながら、「俺たち3人で初めてレコーディングした大事な曲」(※当時シンイチロウがヘルプでレコーディングで叩いた)という紹介からの「底なし」でスタート。

 最近のライブ定番曲「ゴーラン」、いつの間にかアビさんが歌うのが定番化した「デブ・ジャージ」(シンガロングが起こりました)、「もう一回ミラーボール回してもらおうかな」というはるのリクエストで再び4つのミラーボールが輝いた「君は僕を好きかい」を経て、「脳ミソ」でシメる。

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 なお「脳ミソ」、「ハマんのはゴメンだ 脳ミソがジャマだ」を、ここ数年、いやもっと前からかな、「ハマんのはゴメンだ ハメんのはコーマンだ」と変えて歌っていたが、この日は元のとおりだった。武道館だから下ネタは遠慮したのかな、それとも最近いつもこうだったのかな、1月9日にリキッドでやった時はどうだったけ……と、ちょっと考える。

 そして二度目のアンコール、「じゃますんなボケ(何様ランド)」に続き、「じゃあまたどこかでえ!」というはるの絶叫から始まったラストは「グライダー」。2003年リリースの活動再開後の最初のアルバム、『Theピーズ』収録のこの曲を全35曲の最後に持ってきたはるは、歌詞の「10年前も10年先も 同じ真青な空を行くよ」を、「30年前も30年先も」と変えて歌った。

 この曲だけ、客電が点いてホール内が明るくなる。というのはよくある演出だが、それも相まって、大きな、ほんとに手で触れるんじゃないかってくらいの感動が、武道館を包んだ。

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