亀と山P、テゴマス…...作詞家zoppが考える“続編”曲の面白さ「深読みは歌詞だからこそできる」

亀と山Pら手がけるzoppの“続編”論

 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家や小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。これまではヒット曲を生み出した名作詞家が紡いだ歌詞や、“比喩表現”、英詞と日本詞、歌詞の“物語性”、“ワードアドバイザー”などについて、同氏の作品や著名アーティストの代表曲をピックアップし、存分に語ってもらった。第10回目となる今回は「青春アミーゴ」に続いて作詞を手がけた亀と山P「逆転レボルシオン」の話題から、「続編」をテーマにzoppの作詞術についてじっくりと話を聞いた。

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「<鳴り響いた携帯>で一気に『青春アミーゴ』の世界に飛んでいける」

ーー今回の連載テーマは「続編」です。直近ですと、修二と彰(亀梨和也と山下智久による期間限定ユニット)「青春アミーゴ」(2005年)の続編として書かれた亀と山P(同じく亀梨、山下によるユニット)「逆転レボルシオン」(シングル『背中越しのチャンス』通常盤収録・2017年)がありますね。

zopp:これまでにも山下さんのソロ曲「抱いてセニョリータ」(2006年)、「口づけでアディオス」(シングル『One in a million』収録・2011年)を「青春アミーゴ」の続編、スペイン歌謡三部作として書いていましたが、今回の「逆転レボルシオン」は12年ぶりに2人が揃うということでまさしく“「青春アミーゴ」のアンサーソング”となっています。僕はもともとシリーズ物、続編物を書くのが好きで、いつも歌詞を作るときは大きな枠組みでひとつの物語を考えるんです。その中から、今回の曲はここをクローズアップしよう、と決めて。だから実を言うと、「青春アミーゴ」を書いた時点で主人公の2人が一度離れてまた出会う、というシナリオの要素は考えていたので、今回の話を受けたときも改めて何を書こうか悩んだりはほとんどしなくて、自分の中で温めていたものを掘り出した感じですね。

ーー“一度離れる”という設定は、修二と彰が期間限定ユニットだったからですか?

zopp:もちろん期間限定ユニットであるという、現実的なことも影響があります。あとは一般的な“2人組”の物語として、喧嘩をしたりとか、色々な理由で別れることがあっても、再び交わるときにより絆が強くなる、というイメージがあったからです。設定としてはドジなキャラクターと真面目なキャラクターだったので、これだけタイプの違う2人だったら、物語の上で絶対一度は離れ離れになるだろうな、と。<大事な人のため/扉開けた>というフレーズは、一人に好きな女性ができてその人のために一度離れるけど、また2人が再会して新しい物語が始まる、というイメージです。

ーーなるほど。「青春アミーゴ」の後に山下さんのソロ曲があったので、“一度離れる”というのは楽曲の物語と現実がリンクしていますね。

zopp:そうなんです。今回の「逆転レボルシオン」は再会して思い出話に花を咲かせて終わるので、「青春アミーゴ」ほどアクションはありません。しかし、2人とも大人になったということで、フィジカルよりはメンタル面に焦点を当てて作ったつもりです。「この後2人はどうなるんだろう?」という意味深なところで終えられるのも歌の良さですよね。時代設定としては現実と同じく、「青春アミーゴ」の12年後くらいをイメージしています。

ーー歌詞の中には「青春アミーゴ」など過去の作品と共通するキーワードが多く出て来るように感じました。それがこの曲は続編である、と感じさせるポイントなのでしょうか。

zopp:そうですね。「青春アミーゴ」にも続編の「抱いてセニョリータ」と「口づけでアディオス」にも必ず<あいつ>という言葉が出てくるんですけど、それは亀梨くんのことを話しているというイメージで。今回もその言葉を使おうと思いました。以前にもお話ししたように、同じアイテムを使うというのも大事だと思いますね。今回の場合<鳴り響いた携帯>というフレーズで一気に「青春アミーゴ」の世界に飛んでいけるので。2番の最初も<たどり着いた>という歌詞は「青春アミーゴ」と一緒ですし。

ーーzoppさんが以前作詞されたテゴマス(NEWS 手越祐也と増田貴久によるユニット)の「ミソスープ」(2006年)とその続編「ただいま、おかえり」(アルバム『テゴマスのまほう』通常盤収録・2011年)と比べると、今回は「青春アミーゴ」の世界観が歌詞に色濃く反映されていて、楽曲同士の関係性がより密接である印象を受けます。

zopp:アンサーソングと言いながらも、少し匂わせるぐらいにするか、グッと近づけるかはとても悩みました。でもはっきりやった方がファンのみなさんに喜んでいただけるでしょうし、楽曲を知っている方であれば「おっ」と思うんじゃないかなというのがあったので。「青春アミーゴ」と全く同じギターのフレーズから始まるのも、歌詞があそこまで寄っているからなんですよ。これは制作チームと作詞家の「続編を作ろう」という思いが合致した時にできることなんでしょうね。ジャニーズWESTの三部作(「Criminal」/アルバム『go WEST よーいドン!』収録・2014年8月、「Can’t stop」/シングル『ジパング・おおきに大作戦/夢を抱きしめて』初回限定盤C収録・2014年10月、「Eternal」/ アルバム『 ラッキィィィィィィィ7』収録・2015年)も制作チームと続編にしようと合意した話だったので、「愛は止められない」というキーワードを3作繋いでいって。続編とはいえ曲と曲の間に空いている期間があるので、この間に何があったんだろうと妄想してファン同士で盛り上がれる。特に日本人は行間を読んだり、一見意味のないものに意味を持たせたりすることが好きなので、深読みさせる、というのは歌詞だからこそできることだろうなと思っています。

ーー“続編曲”を書かれる際の楽曲同士のちょうど良い距離感はありますか?。

zopp:続編なので登場するキャラクターは一緒なんですけど、本当に一言二言くらいしか被るワードを入れない、あまり目立ち過ぎるアイテムを出さない、というのが距離をいい具合に保つ方法かなと思っていて。一緒に作っている制作担当者は続編だって知らなくて、ただ僕が楽しんでいるだけということも多いんですよ。それが作家の特権で、時間が経ってから「実はあの曲とこの曲って繋がっているんですよ」と言う瞬間がとても楽しい。時間が経つと忘れられてしまったり、あまり聴かれなくなる作品もあると思うので、そういった作品にもう1回新鮮さを持たせられる、というのも続編を書く理由ですね。

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