うとまる×TeddyLoid、気鋭のイラストレーターとトラックメイカーが考える“音楽とアートの関係”

うとまる×TeddyLoidが考える「音楽とアートの関係」

 沖縄発の3人組ガールズダンスクルー・DEVIL NO IDが4月5日、2ndシングル『Sweet Escape』をリリースした。同作の表題曲は、春にぴったりな“前向きな別れ”を歌うもので、1stシングル『EVE -革命前夜-』で提示したハードなイメージとは一転したDEVIL NO ID像をみせている。マンガ、アニメーション、音楽、MV、デザインなど、様々な面でカッティングエッジな独自性を追求するDEVIL NO IDプロジェクトにおいて、現在大きな役割を担っているのが、ももいろクローバーZやKOHH、DAOKOの楽曲も手掛ける気鋭のトラックメイカー&プロデューサーのTeddyLoidと、イラストレーターとして彼女たちのアートワークを手掛けるうとまるだ。リアルサウンドでは今回2人へのインタビューを行ない、プロジェクトに携わった経緯や互いに影響されている創作のポイント、さらには「音楽とアートの関係」まで、たっぷり語ってもらった。(編集部)

「普段から絵を描くときに、音楽ってすごく大事なもの」(うとまる)

ーーDEVIL NO IDはマンガとの連動や個性的なアートワークにMV、楽曲と、様々な面で高いクオリティのクリエイティブを世に送り出しています。2人はどのような形でこのプロジェクトに携わったのでしょうか。

TeddyLoid:僕の場合は、プロジェクトがスタートする前に資料を拝見しました。今まで色んなアーティストの楽曲をプロデュースしてきましたが、今までにない年齢の低さに驚きましたし、「面白そう!」と興味が湧きました。どんなビジュアルになるのかもわからなかったので、ただただワクワクしたことを覚えています。

うとまる:私もデビュー前に紹介されたのですが、まずは地元のスクールで踊っているときのダンス映像を拝見させていただいたんです。その段階でパフォーマンス能力の高さに驚きました。かわいくて小さな子たちがバリバリ踊るというところに魅力がありました。かわいらしいけどかっこいいという二面性は、私としても出していきたいなと思いましたね。色はかわいくてとっつきやすいけど世界観はハードとか。

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TeddyLoid

ーー1stシングル『EVE -革命前夜-』と2ndシングル『Sweet Escape』では、アートワークやビジュアルも大きく異なるのですが、うとまるさんがこれらを手がける上で意識したポイントはなんでしょう。

うとまる:最初からこの2枚には「1枚目が黒っぽくて激しい、2枚目が白っぽくて優しい」という対照的なイメージがあって、そのイメージがはっきり現れていると思います。同じ場所の世界観なんですけど、色味やライティングでハードでダークな面と、ポップで明るい面を見せるようにしました。

TeddyLoid:コンセプトはサウンドでも同じように共有されていて、「EVE -革命前夜-」はベースの音を鋭くしたりしてダンサブルに作ったのですが、「Sweet Escape」はアコギやピアノの音を使ってその二面性を表現しました。イラストが音ともシンクロしていて、すごく良いなと思いました。

うとまる:描く前に音は聴かせていただいたので、すごく参考になりました。

TeddyLoid:普段のうとまるさんのイラストと違って、今回はすごくスチームパンクっぽさを感じます。僕も自分のプロジェクトではスチームパンクに影響を受けているので、うとまるさんが今回手がけたDEVIL NO IDのアートワークは大好きですね。背景のネオンや、新しいアーティスト写真のグリッチな感じの背景がマンガの『AKIRA』みたいですが、マンガといえば、DEVIL NO IDの作品に入っているマンガも面白いんですよ。

うとまる:まさに『ブレードランナー』など自分の好きな映画をヒントに、看板の文字などを考えています(笑)。もちろんそれだけではなく、可愛らしいけどかっこいい3人組というアーティスト像を盛り込みたくて、ストリート感やポップ感のある色味をプラスしていきました。

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うとまる

ーーまさにいまお話が出たので、マンガプロジェクト「DEAD NIPPON ISLAND」についての話も伺わせてください。日本を舞台にした放題な物語になっていますが、どのように制作が進んだのでしょうか。

うとまる:マンガに関しては、結城紫雄さんが原作を手がけてくださっているんですが、彼と私で相談しながら世界観を決めていったり、本人たちがもともと持っているキャラクターを誇張した感じにしました。あくまで本人たちの性格とほぼ一致したように描いているので、まずはそこで何が起これば面白いか、どうリアクションするのかを考えていきました。そのアイデアを紫雄さんにスクリプトをまとめていただいて、私が実際に描いています。一話完結というよりは続いたものになるといいよね、ということで、繋がったストーリーになっています。

TeddyLoid:描かれている3人のかわいらしい感じと、マンガの世紀末のような世界観のギャップがすごいですよね(笑)。

うとまる:そうですよね(笑)。ジャケットやポスターは本人たちの写真を使っているのですが、マンガは本人たちの会った時のイメージをもとにしています。世界観に関しては、私も紫雄さんもベースにある好きな漫画や映画が、少し古い世紀末っぽいものや近未来のSF系なので、その感じがかなり出ていると思いますね。私の好きなものを盛り込めるだけ盛り込みました。マンガというコンテンツを通して別の魅力を表現できるというのは、他にもなかなかないやり方ですし、ファンの方からしても一つお得な感じもあるかなと。

TeddyLoid:看板に書いてあるロゴのフォントやディテールに、昔のホラー映画等の要素も元ネタとしてかなり散りばめられていて。そういう面で見ても面白いですね。

ーーうとまるさんはクリエイティブプロダクション・THINKRのポップカルチャーを専門に活動するチーム・POPCONEに所属されており、音楽関係の仕事も多いですよね。音楽がアートにもたらす作用について、どのように考えますか?

うとまる:普段から絵を描くときに、音楽ってすごく大事なもので。無音で描くことってあまりなくて、イメージを膨らませる元にもなっている大事な要素なんです。ミュージシャンの方とご一緒させていただくときはその方の楽曲を聴きながら手がけることが多いですし、そうじゃなくても、世界観がフィットする音楽を探して、それをもとに描くこともあります。ラジオを付けることもありますね。学生時代、イラストの仕事をお手伝いさせていただいてたミュージシャンについても、同じようなやり方でした。あと歌詞にあるモチーフを登場させることも多いです。

ーーちなみにTeddyさんはご自身のジャケットやMVについて、どこまで関与していますか? すごくスペーシーなものが多いというイメージですが。

TeddyLoid:すべて基本は自分でイメージしながら、その都度いろんなクリエイターに相談しています。最近リリースした『SILENT PLANET 2 EP』に収録されている、アイナ・ジ・エンドさんを客演に迎えた「TO THE END feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH)」のMVは2パターンあって。自分が作って編集も手がけたバージョンもあるんです。あらゆることって音楽を聴きながらできると思うんですけど、音楽を作るときは音楽を聴けないじゃないですか(笑)。なのでうとまるさんが手がけたアートワークのようなものがあると、それをサブモニターに映しながら作ったりすることが多いです。そうすることで自分自身も刺激を受けながらやれるので。

ーーDEVIL NO IDをサウンド面でサポートするうえで、コンセプトのようなものはあるのでしょうか。

TeddyLoid:ダンスもすごいし3人ともかわいらしいのにキレがある。なので、かわいい音と激しい音を融合させたようなサウンドを意識しました。あと、3人ともいい意味で完成されていない。アー写だって、初期と今を比べれば進化があるのと同様、音もよい意味で完成しきらない感じ、成長していく過程が描ければと意識しました。

ーー「完成しきらない音」とは?

TeddyLoid:いつも楽曲制作をするときは、頭の中で100%イメージを固めてから再現していく感じなんですが、その割合を敢えて70%程度に留めておいて作り始めるんです。もう少し詰め込むことができる箇所もあるけど、あえてそこに音を入れなかったりして、いい意味で隙間を作るというか。「Sweet Escape」は特にそうで、最初のデモよりリリースされたバージョンのほうが圧倒的に音数が少なく、削ぎ落としたものになっているんですよ。

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