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4thアルバム『Opportunity』インタビュー

花澤香菜 × 北川勝利 × 山内真治が語る、4thシーズンの集大成 「UKを今のチームで切り取った」

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 花澤香菜が、ニューアルバム『Opportunity』をリリースした。

 音楽活動の“4thシーズン”を通して、アーティストとして着実な成長を果たしてきた彼女。新作は“UKサウンド”をテーマにした一枚だ。ブリティッシュ・ロックやブルー・アイド・ソウル、ネオアコやソフトポップなど、かなり幅広いジャンルのサウンドが集っている。前作に続いてトータルサウンドプロデューサーは北川勝利(ROUND TABLE)が担当。岩里祐穂、ミト(クラムボン)、沖井礼二(TWEEDEES)、宮川弾、矢野博康ら馴染みのクリエイター陣に加え、kz、片寄明人、Spangle call Lilli lineが初参加。さらにはSimply Redのミック・ハックネルの楽曲提供も実現した。

 今回は、花澤香菜と北川勝利、そしてデビュー前から活動を支えてきたアニプレックスのプロデューサー山内真治氏に、新作についてじっくりと語ってもらったインタビューが実現。「なぜ花澤香菜はこれだけ多くのミュージシャンを夢中にするのか?」という疑問に応えるテキストにもなっているのではないかと思う。(柴那典)

「自分のなかで身近にあった音楽なんだなって」(花澤香菜)

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花澤香菜

ーー新作『Opportunity』はUKサウンドがコンセプトですが、これはどういう発端から始まったんでしょうか?

山内真治(以下、山内):実際に決まったのは『Blue Avenue』を出してすぐの頃でしたね。

北川勝利(以下、北川):前回の『Blue Avenue』は「ニューヨーク」というコンセプトがあって。その制作途中ですでに「次はUKかな」という話が出ていたんです。だからだいぶ前から決まってました。

花澤香菜(以下、花澤):「ニューヨークの次はロンドンに行くぞ」という感じですね。旅の予定みたい(笑)。UKサウンドとかUKロックってどういうものなのか、そのときはまだ私はよくわかってなかったんです。

ーー山内さんは花澤香菜プロジェクトにいつ頃から関わっていらっしゃったんですか?

山内:デビュー前からですね。そこから綿密かつ入念に打ち合わせてコンセプトを決めていきました。もちろんそれは北川さんや香菜ちゃん本人も含めてですけれど。

ーーリアルサウンドではミトさんとマネージャーの松岡超さんの対談も掲載されています。これまでの取材などを経て、「花澤香菜の音楽活動」というものが、様々な角度から明らかになっていると思うんですが。

北川:そうですね。たしかに。

ーーそのデビューからの流れの中で、「UK」というキーワードは一つの必然的なものだった。

北川:もともと2枚目のアルバム『25』のときも、収録曲が25曲あったんで、いろんなタイプの音楽を入れたい中にそういうテイストの曲もあったんです。で、今回はそのキーワードに特化したアルバムを1枚作りましょうということだったんですね。

ーーとは言っても、UKにもいろんな時代、いろんなジャンルがありますよね? そこからどういうテイストを選んでいったんでしょうか。

山内:僕としては、最初に「第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン(デュラン・デュラン、カルチャー・クラブなど)の感じとかどうですかね?」って北川さんと話したんですけど。「それはないかなー……」って言われて(笑)。

北川:まあ、最初にトータルの感じは決めてなかったんですけどね。自分としては、イギリスの80年代後半のマンチェスターみたいなところの感じをやりたいなくらいの気持ちはあったりしたんですけど。

山内:そこから、一つの時代を切り取るんじゃなくて、70年代から90年代まで見渡したなかで、いろんなUKのテイストとかエッセンスみたいなものを、掘り下げたテーマとして表現していこうということになったんです。それを花澤香菜というボーカリストの声で表現をする方が深みが出るし、伝えられることも増えるという。

北川:あとは、他のクリエイターのみなさんと相談していくときに、「どういうのやりたい?」「こういうのどう?」みたいな話をする中でなんとなく枠が決まっていって。そうして最終的に曲調が出揃ってきたんですね。

ーー花澤さんは最初にUKと言われて、どういうイメージがありましたか?

花澤:なんかピンときてなかったですね。ロンドンのイメージもあんまりなくて。自分のなかではハリー・ポッターとか、食べ物があんまり評判良くないとか(笑)。UKロックといっても、私の声であんまりゴリゴリのロックはやらないだろうな、とか。それくらいでした。

ーーそこから実際にアルバムを1枚作って、撮影もロンドンで行なってきて、イメージはどう変わっていきました?

花澤:kzさんの「スウィンギング・ガール」とか、Simply Redの「FRIENDS FOREVER」とか、ああいう曲を聴いて、UKロックというのは気付かなかったけど結構自分のなかで身近にあった音楽なんだなって思いました。ピンときてなかっただけで、経験はしてきているんだなって。しかも、やっぱり自分の好みの感じなんです。『Blue Avenue』の「ニューヨーク&ジャズ」というサウンドコンセプトのときも、それまでジャズは知らなかったけど、出会ってみて「あ、素敵!」って思って。今度はUKを通してそういう発見ができました。

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ーーここからはアルバムの収録曲についてじっくりと聞いていきたいと思います。まずは1曲目の「スウィンギング・ガール」。これはkzさんが作曲ですが、彼得意のエレクトロではなく、UKロックのテイストで仕上がってますね。

北川: kzくんは香菜ちゃんともラジオで一緒だったりもしたし、本人も香菜ちゃんの曲を書きたいってずっと言ってくれてて。で、おっしゃるとおり、普通だったら彼には4つ打ちの曲をオーダーすることが多いと思うんです。でも、彼は元々UKロックがルーツにあるもので、そこでトライしてもらいたい気持ちがあって。

ーー花澤さんの第一印象はどんな感じでしたか?

花澤:とっても歌いやすそうだなと思いました。kzさんとはラジオでお話したこともありますし、お仕事もご一緒したことがあるんですけども、確かにこういう曲を書かれているイメージがなくて。でも、さっき言ったような、私が知らずに聴いていたUKロックのテイストがわかりやすく入っている印象でした。

――この曲にはThe Beatlesのイメージも大きいです。

北川:他のみんなも、やっぱりストレートなThe Beatlesのテイストは好きなんですよ。でも、だからこそトライするのは難しくて。そんな中、彼はそれを力強く打ち返してきたなと思います。

山内:実は別にkzさんにはThe Beatlesうんぬんっていう発注は特にはしてないんですよね。「今回のテーマはUKなんです」と言ったら、「わかりました。じゃあ僕のルーツから作ります」という案を出していただいて。そこから話していく中で北川さんとThe Beatlesっていう会話が出てきて。だから自然と出てきた流れではあったんです。

北川:で、これは予定になかったことなんですけど。これこの曲の録音を進めていた段階で、同じスタジオの別の部屋でミト君が自分の曲のレコーディングをやってたんですよ。で、ミト君の作業が終わった後に聴いてもらったら「これ、ベース弾くよ!」って言って(笑)。「ポール・マッカートニーと同じヘフナーのヴァイオリンベースで弾くから!」って。

山内:そうそう。しかもそれを言い出したのが飲みの場でしたからね。朝6時くらいまで飲んでて、ノーギャラでOK! くらいの勢いでヘフナー弾いたという。

ーー前のアルバムの話もそうですけれど、ミトさんの花澤香菜プロジェクトにおける前のめりっぷりは、毎回印象的ですね。

北川:そうですね。全体的にだいぶおかしなプロジェクトなんですけど、あの人はさらにどうかしてる!

ーーあはは(笑)。ミトさんの名前が出たので、ラスト「Blue Water」の話を聞ければと思うんですけど。これは相当コーラスが重なっている曲ですね。どういうところから、このサウンドメイキングになっていったんですか?

北川:もともと彼がコーラスを沢山入れたいという話をしていたんです。「10cc(70年代イギリスのポップ・バンド)の『I’m not in love』はこうやって声を沢山重ねて録ってたから、この曲もそうするんだ」って説明されて。「いや僕ら10ccじゃないですから」って言ったんですけど(笑)。

山内:結局125声くらい重ねたと思います。

北川:「どうかしてるよ?」っていう(笑)。結局、香菜ちゃんもそんなにスケジュールのない中、あの人ひとりで3日間も歌録り用にスタジオを押さえてたんですよ。

ーー花澤さんはこの曲のレコーディングはどうでした?

花澤:最初からみんなに謝られました(笑)。「本当に申し訳ない! 苦痛かもしれないけど、一緒に頑張ってほしい」みたいな。でも、私は別にコーラスも好きだし、録っていくうちにちょっと音程をフラットにしたり、ちょっとシャープしたりした方がいい重なり方になることがわかって。そこを狙っていったら楽しくなっちゃって、そうこうしているうちに終わった感じです。

北川:ほんと、巻き込まれタイプですよね(笑)。

山内:『Blue Avenue』の時も香菜ちゃんを予定時間オーバーして拘束して、20数本のコーラスを重ねてて。その後「じゃあこの作業終わったらご飯食べましょう」って言ってたんですけど、そのゴハンの場で唐揚げ食べてホッピー飲みながら「僕、夢があって――」ってミトさんが突然言い始めて。そこが「Blue Water」の出発点です。

ーー異常ですね(笑)。

北川:異常です。完全にどうかしてる曲ですね。

山内:狂気を感じますよ(笑)。

花澤:でも、あれだけ声が重なると、神秘的な感じというか、怖い感じが出るのかなって思ってたんです。でも、実際に聴いてみたら、大きいスピーカーも、小さいスピーカーも、ヘッドホンも全部違って、どれもすごくよくて。私の声の成分みたいなのが蒸気のように出てきて、ミストサウナにいる感じになるんです。それがすごく心地よくて。「あっ、こういうことをしたかったんだ。ミトさんって変態だな」と(笑)。どの聴き方しても面白いし、心地いいので、ぜひ試してもらいたいと思います。

山内:ハイレゾ配信もするので、ハイレゾ環境で聴いてもらえれば、ミストシャワーっぷりがよくわかると思います。

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