BLUE ENCOUNTが音楽で成し遂げた“自分たちらしさへの反抗” 楽曲の仕掛けとサウンドを分析する

ブルエンが成し遂げた“らしさへの反抗”

 オーディエンスと一体となるような、熱く激しいパフォーマンスが話題を集めている4人組ロックバンド、BLUE ENCOUNT(以下、ブルエン)。彼らの2ndフルアルバム『THE END』が、前作『≒』(ニアリーイコール)からおよそ1年半ぶりの1月11日にリリースされた。昨年、自身のワンマンツアーや夏フェスをはじめとする大型音楽フェスへの参加、さらには初の武道館公演と、精力的なライブ活動を行ないつつ、「はじまり」「Survivor」「だいじょうぶ」「LAST HERO」と立て続けにシングルをリリースしてきたブルエン。本作は、そのシングル4枚を含めた13曲入りの内容である。

 一聴して感じるのは、「スタジアムロック仕様」と言っても過言ではないほど、ライブバンドとして飛躍的に成長した彼らの演奏能力が、余すところなく詰め込まれていることだ。まるで地響きのような重低音から、天へと突き抜けるような高音まで、フルレンジで鳴らされるバンドサウンドが音の壁となって押し寄せてくる。鼓膜を突き破るような、ソリッドかつメタリックなギター、静と動を行き来するダイナミックなリズム隊が、組んず解れつ進んでいくさまは、The Smashing PumpkinsやFoo Fighters、Weezer、後期Pixies、Rage Against the Machineといった90年代グランジ〜オルタナ勢をルーツとしつつ、HoobastankやZebrahead、Slipknot、Steriogramら00年代以降のエモ〜メロコア/ラウド・ロック勢からの影響を強く感じさせる。

 アルバム全曲の作詞作曲を手掛けているのは、ボーカル&ギターの田邊駿一。尊敬しているアーティストとして、細美武士(ELLEGARDEN、the HIATUS、MONOEYES)の名を挙げる彼の書くメロディは、どれも超弩級にポップでキャッチー。Fall Out BoyやPanic! At the Discoらポップパンク・バンドのエッセンスを汲み取りながら、それを邦楽ロックやJ-POP、もっと言えば歌謡曲のフォーマットへと落とし込んでいる。

 例えば、冒頭を飾る表題曲「THE END」は、椎名林檎の「ギブス」を彷彿とさせる。ここで使われているコード進行は、どちらも椎名のプロデューサー亀田誠治が“小悪魔コード進行”と名付けたものだ。また、「ルーキー」や「GO!!」では、日本人が大好きな“カノン進行”と呼ばれるコード進行を用いており(AKB48「ヘビーローテーション」、山下達郎「クリスマス・イブ」、森山直太朗「さくら」などでお馴染み)、ダウンビートを意識した分かりやすいメロディは、前述したようにシンガロング必至だ。

 さらに、「涙」のどこかオリエンタルな旋律は、中田ヤスタカや相対性理論が有するオリエンタリズムとも共振するし、先行シングル表題曲「だいじょうぶ」のサビに至っては、いきものがかり「風が吹いている」をも連想させるほどポップ。同じく先行シングル表題曲の「LAST HERO」のメロディも、昭和歌謡的な哀愁が漂っている。そうしたメロディを、ラウドなバンド・アンサンブルに乗せて歌うところに、ほぼ同時期に活動を始めたONE OK ROCKとは一線を画す、ブルエンならではの面白さがあるのだ。

 ほかにも、ヒップホップ的なアプローチに挑んだ「city」や、学校のチャイムをモチーフとしたユニークな「スクールクラップ」など、これまでのブルエンが持っていたイメージを覆すような楽曲もある。エモやメロコア/ラウド・ロックだけでなく、RIP SLYMEが好きなメンバーもいれば、Perfumeが好きなメンバーもいるなど、もともと多面性を持っていた彼ら。本作は、彼らが成長する過程で植え付けられたイメージを壊すことがテーマだったというが、全ての引き出しを開け放ち、持てる力の全てを出し尽くしたことによって、「自分たちらしさに対する反抗」を見事に果たしたと言えるだろう。

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。

ブログ:http://d.hatena.ne.jp/oto-an/
Facebook:https://www.facebook.com/takanori.kuroda
Twitter:https://twitter.com/otoan69

■リリース情報
『THE END』
発売:2017年1月11日(水)
価格:初回生産限定盤(CD+DVD)¥3,333(税抜)
通常盤(CD)¥2600(税抜)

封入特典:2017年ワンマンツアー・チケット先行抽選受付シリアルナンバー封入(※通常盤は初回仕様のみ封入、)、シングル「LAST HERO」とのW購入者特典応募ハガキ封入

<収録曲>
01. THE END
02. HEART
03. Survivor
04. TA・WA・KE
05. ルーキー ルーキー
06. 涙
07. LOVE
08. LAST HERO
09. GO!!
10. スクールクラップ
11. city
12. だいじょうぶ
13. はじまり

<DVD内容>※初回限定版のみ
ワンマンライブ「LIVER’S 武道館」2016.10.09 at 日本武道館の模様および当日のドキュメンタリー映像を収録。
01. HALO
02. Survivor
03. はじまり
04. HANDS
05. 1 day document 161009

iTunesアルバム『THE END』予約用URL 

■ライブ情報
2017年ワンマンツアー『TOUR2017 break”THE END”』
2017年3月12日 (日)香川:高松Festhalle
2017年3月20日 (月)千葉:幕張メッセ国際展示場
2017年4月2日 (日)北海道:Zepp Sapporo
2017年4月8日 (土)宮城:仙台PIT
2017年4月9日 (日)新潟:LOTS
2017年4月15日 (土)大阪:Zepp Osaka Bayside
2017年4月16日 (日)広島:BLUE LIVE
2017年4月26日 (水) & 27日(木)名古屋:Zepp Nagoya
2017年5月7日 (日)福岡:福岡国際センター

<チケット料金>
スタンディング:4300円(税込・ドリンク代別)
2F指定席:4800円(税込・ドリンク代別)
・幕張メッセ公演 スタンディング・ブロック指定 4800円(税込)
・福岡公演 アリーナ立見・スタンド指定 4800円(税込)

■関連リンク
公式HP
「THE END」特設サイト

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